ヒューイックの町
ヒロコに縛り上げられた盗賊のおっちゃん達の顔に、落書きを一杯書き込んで街道に蓑虫のように吊るしてきた。お約束のような盗賊の遭遇の後は、何事も無くヒューイックの町に着いた。
盗賊のおっちゃん達の件は、町の門番の人に伝えておいた。
門番の人によると、最近現れた盗賊団らしく結構な被害件数だったらしいのでお礼を言われた。小物っぽい人に見えたけど、そうでもなかったみたい。
「さて、それじゃあ素材を換金しに行こっか、セリナ」
「そうですね。じゃあこっちです」
セリナがいつも換金して貰っているお店に案内してくれた。
「こんにちは~、エリカさん居ますか?」
「ん、あいよぉ! お、セリナちゃんお久しぶり! 今日はどんだけ持ってきてくれたんだい?」
日にやけて結構筋肉質なお姉さんが見た目どおり元気良く答える。顔馴染みのようで、店員さんはセリナに気軽に受け答えしている。なので僕は、素材をひょいひょいと指輪から取り出した。勿論、こそこそと見えないようにだ。
「あのこれなんですけど、どうです?」
「ひのふのみの・・・うん、今日は結構な量があるねぇ。しかもかなり綺麗に処理してある。全部で20ゴールドって所かな? それでどうだい?」
「あ、それで問題ないです。ありがとうございます」
「んで、セリナちゃん。そっちの子はいつもは見ない子だけどコレかい?」
と親指を立てる店員さん。あけっぴろげでおおらかな人だなぁ・・・
「はい、実はそうなんです。良いでしょう?」
と、にっこり笑顔でぐいと僕をひっぱり腕を絡ませるセリナ。
「え、あのその?」
腕に当たる柔らかい感触に、どきどきしてしまう僕・・・でかい!
「おいおい、しっかりしなよ坊主? 男ならしゃきっとしな」
しゃきっとと言われても、なにがなにやら?
「まぁまぁ。冗談ですし。それぐらいで」
と名残惜しそうに腕を離すセリナ。そんな顔を真っ赤にする程恥ずかしいならしなけりゃ良いのに。・・・嘘です、役得なんでどんどんどうぞ!!!
「まったく、言うようになったねぇセリナちゃんも。で、明日には帰るのかい?」
「いえ、実はわたしタタ村を出て来まして。こちらのコージさんと一緒に旅をする事にしたんです」
「お、そうなのかい? だったらうちで装備も見ていっておくれ」
気がむいたらで良いけどね、とエリカさん。まぁ、装備なんか自分でつくっちゃったから、買うものってあんまり無いよなぁ・・・
とりあえず、受け取ったお金で今日の宿を探すので、手早くお店を出る僕たち。ヒロコは僕たちが換金してる間中、お店の中をじろじろ見ていて、他の店員さんに色々教えて貰ってた。
「ところで、さっき20ゴールドで素材を売ったけど、ここらへんの宿は一泊いくらぐらいするの?」
貨幣価値がいまひとつ分かってないので、20ゴールドが高いのか安いのか良く分かんないんだよねぇ。
「だいたい一泊40シルバーぐらいですね、朝と晩のお食事つきで。ですので3人で1ゴールドと20シルバーになりますね」
と言うことは、そこそこ高値で買ってもらったって事になるのかな。でも、これから旅を続けるには少し足りないと思う。稼げるときにどんどん稼いでおこう。
「大丈夫ですよ。20ゴールドもあれば3人で1ヶ月ぐらいは平気ですから」
「ボクは野宿でも平気だよ、マスター」
どうも僕は不安そうな顔をしていたらしく、僕を安心させるようにそんなことを言う二人。
二人とも優しくて嬉しいなぁ。
「二人が居てくれて良かったよ。僕、頑張って稼ぐからきっとなんとかなるよ」
「でしたら、とりあえずギルドに登録に行きます?」
「あーギルドね。色々依頼があってそれをこなして行く為の組織・・・みたいな所って思っていいのかな?」
漫画とか小説だとよくある設定だよね?
「あ、はい。そんな感じです。私も一応ギルド員なんです」
ほら、と懐から一枚のプレートを取り出すセリナ。ヒロコ。おもちゃじゃないんだから回したり飛ばしたりして遊ばない。
「やっぱりギルドに入ってると便利なのかな?」
素材を売るなら、別にお店に直接売っても構わないよねぇ?ギルド経由だと取り分減るような気がするし。
「そうですねぇ。依頼が色々あるので自分に合った物を簡単に選べますし、お金を払ってくれないお客さんとかは、まず居ません。あとは情報も色々聞きやすいとかですかねぇ」
んー、と指をあごに当てて首をかしげながら答えてくれるセリナ。ぷっくりとした唇をとがらせて、目をくりくりと動かしている。やっぱりセリナは年下っぽく見えるなぁ。
「ふぅん。登録だけしといても損はしないって感じかな? まぁ、そんなに慌てる事でもないか。ここには暫く居るつもりだしね」
「じゃあ、宿を探しましょうか」
「そだね、とりあえずベッドで寝たいしね、今日は」
「ボクはおいしいご飯があればなんでも良いよ、マスター」
はじめてのかんきん。
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