フェア・アンフェア
父ちゃんとの模擬戦の結果、アバターシステムを父ちゃんに使ってもらうどころか、封印する事になってしまったので、納得させる理由を考えるのも必要だけど、意識を飛ばさずに利用できるように単純に電波で操作する方式に、切り替えられるように改造を施した。電波で操作する場合はミミの能力が使えないんだけど、実際に戦場にでるよりかはマシなのでその操作にも慣れてもらう事にする。
ただ、僕がガイアフレームに乗る場合は生身で乗るようにする事にした。
一度考え方をリセットして、普通に乗って安全性を高める方法を考える事にしたんだ。無茶な戦い方ばかりしていたら、それが癖になって普段の戦いでも無茶をするようになってしまったら、やられちゃう確立が物凄く上がってしまうから、まずいなぁと気付かされたので。
べ、べつに父ちゃんに怒られたから変えた訳じゃないよっ?!
だから、ガイアフレームに乗って戦う時に、こちらをサポートしてくれる無人フレームがあれば大分違うのではないか? と思い、まずはサポートメカのデザインと機能を細かく考えよう。せっかくだからミミとセリナにもついでに意見を聞いてみようかな。ミミとセリナはフレームに乗るのはまだ早そうなので、慣れるまでは完全リモコンタイプで戦って貰う事になるだろうし。
「ミミもフレームにぃ乗る・・・の?」
「わたしもですか?」
「いやいや、乗らないから大丈夫。乗らずにフレームを操って貰うんだ」
そういって、今回一緒に考えて貰うフレームのサポートメカの概要を伝える。二人とも最初はぴんと来なかったんだけど、用は便利な使い魔的なものって伝えるとなんとなく分かってくれたようだ。
「やっぱりおいしい料理できたら嬉しいです」
「ミミはぁ空に散歩にぃ、連れてってくれたら嬉しいなぁ」
理解した方向がなんか違うけども。そういうのじゃなくて戦闘に便利な方向で考えて欲しいなぁ。
「ということは、魔法の詠唱を守ってくれるメカは嬉しいですね。あとは、威力を増幅してくれたりですとか、複合魔法の手伝いをしてくれるとか・・・」
「ちょ、ちょっと待って、メモとるからちょっと待って!」
何かのスイッチが入ったみたいにセリナが滔々としゃべりはじめた。とりあえず、セリナの言ってくれたアイデアをメモっていく。僕は魔法使いというわけではないので、そこらへんのアイデアはほとんど出てこないから凄く助かる。
セリナのサポートメカのアイデアとして、詠唱を邪魔されないように防御する事、詠唱の増幅をする事、魔法を唱えるメカ、複合魔法を唱える事、魔法を範囲化する手助けをする事、照準を補佐してくれる事などを考えてくれた。この世界の魔法の照準は目視で行い、基本的に狙った所がずれても発動してからは誤差修正する事ができない。遠視の魔法と攻撃魔法を同時に使うのは少々難しいので、使い手が少ないのが現状だ。現にセリナは遠視の魔法を使う事ができないので、目視範囲内の敵にはめっぽう強いんだが離れた敵には、いまひとつ狙いが甘く強いとは言えない。まぁ、場所によっては範囲ごと吹っ飛ばす感じなので、大丈夫といえば大丈夫なんだけどもね。
「ミミはねぇ、何かなぁ。コンビ攻撃してくれたり、遠距離攻撃で隙を作ってくれたらいいなぁ」
ミミは一騎当千な能力を持ってるだけあってあまり要望が無い。むしろなくても困らないだろう。とはいえ、忘れてる事がある。
「ミミ、リモコンでフレーム操ったら能力が使えないんじゃない?」
「あ」
やっぱりそうだった。と言うことは単純に動いてる物を感知するようにしてサポートするのが良いな。さすがに殺気を感じるとかは無理そうだもんな。でもこの場合はフレームと同じサイズのメカじゃなくて、もっとずっと小型で数を多くする必要がある。そんな感じでいいかな? と言うとミミは頷いてくれた。
サポートメカのアイデアはひとまずこれぐらいで、置いておこう。あとは僕が乗るときの安全確保としてどうするかを考えよう。ホワイトファングに乗っていた時に思ったんだけど、サポートAIが居ればかなり楽だったんだ。接近警報や多数の敵の照準の優先指定、脅威度の設定、武装の変更や変更に伴う照準の設定。よくよく思い返せば、かなり便利だな・・・よし、どのフレームにも乗せられるようなAIを作る事にしよう。
他に作るとしたら・・・脱出用ポッドかな?
ボタン1つで脱出できるのってやっぱり必要だよね。しかもこの世界は魔法があるから脱出ポッドというか脱出魔方陣というものになるか。戻ってくる位置を指定できるようにしておけば、いざという時に迷わずに済む。
ほんというと魔法がある世界だし、漫画やゲームでも復活の魔法なんてものがゴロゴロしてるんだけど、こればっかりは試すのが怖い。今まで漫画やゲームの魔法はなんでも発動できたんだけど、こういうのに限って発動しなかったりしたら、目も当てられないしねぇ。
非常識な事をしてるんだけど、ある意味常識の範囲内で安全措置を取らないとね。あとは、どうやれば父ちゃんにアバターシステムを認められるか考えないと駄目だなぁ。ちょっと父ちゃんと話してみよう。
「父さん、ちょっと話いい?」
「ん? うん大丈夫だぞ。どした?」
「なんで父ちゃんはアバターシステムに反対なの? 無茶しなかったらあんなに便利な物は無いと思うんだけど」
「まぁ、確かに便利なのは認めるけどな。だけどあれだと俺の戦争には合わないんだ。不公平すぎるんだ」
「なんで?」
「俺は命のやり取りをしてきたからな。自分は命を賭けないくせに、簡単に命を奪える状態ってぇのはフェアじゃないだろ? それに慣れてしまったら人の命を奪うのに何も感じなくなって、何も思わずに人を殺めるようになっちまう気がしてな」
「だったら余計に父ちゃんはあのシステムを使わなきゃ」
「光ちゃん、話聞いてた?」
ちょっとぽかんとしてる父ちゃん。まぁ話を聞いてもらわないとね。
「逆なんだ」
「何がだ?」
「アバターシステムを使うとゲーム感覚で戦えるから、命なんか賭ける必要なんてないし、奪う必要もないんだ」
「・・・それで?」
「僕が元の世界でしてたゲームは所詮ゲームで、相手を倒したからって誰かが死ぬわけじゃない。そりゃあ物語の中の人物は死んだりするけど現実で人が死ぬわけじゃない。だから、僕は今度の戦争もそういう意味でゲームにしたいんだ。敵も味方も誰も死なないゲームに。だけど、そう思ってるのはこっちだけで向こうは死に物狂いで僕達を倒すためにやっきになって仕掛けてくるよね?」
「まぁ、そうだな・・・」
「その為のアバターシステムなんだ。僕達は倒されても倒されても復活する。だけど誰も殺す事はしない。そして、圧倒的な力でもって相手を無力化していく。父ちゃんならどう? めちゃくちゃ強くて、倒しても倒しても復活してきてその上、殺そうとしないで手加減するような奴を相手にするのは?」
「うんざりするなぁ。先が見えないってのは気力がしっかりしてないと折れそうになるしな。なるほどな」
「だけど、模擬戦で父ちゃんに教えて貰ったんだ。確かに僕は無茶をしてでも相手を倒せば良いって。だけどそれは父ちゃんの言うとおり、危ない事なんだって」
「あぁ、捨て身でなんでも解決しようってのは危ない。成功したとしてもだ」
「だけど、その事を分かってればアバターシステムを使うのは良いかなぁって思うんだけども、駄目・・・かなぁ?」
そこまで聞いて父ちゃんを見ると、なんとも言えない目をしてこっちを見ていた。
「そうだよなぁ、父ちゃんの子供だけどちゃんと成長してるんだよなぁ」
「まぁ背だけは伸びたよ確実に」
「それだけじゃ無いんだけどな。くっくっく」
それから吹っ切れたように僕をみてこう言った。
「まぁ、お前達が使う分には文句は言わない。そんだけ考えてるなら良しとするとしよう」
「ほんと?」
「ただし、模擬戦の時の様な無茶はすんじゃないぞ?」
「うん、ありがとう父ちゃん!」
あいあいと照れ臭そうに、鼻を掻きながら返事をする父ちゃん。説得する気はなかったんだけど、なんかアバターシステムを使う許可が出て良かった!
父ちゃんと話してて思い出したんだけど、「777」対策しないと駄目だよね。予想外に父ちゃんが凄いって分かったからもっと綿密な対処方法を考えよう。