ある意味お約束
「それでは、まずヒューイックの町を目指しましょう」
綺麗に晴れた日の朝、ジャンさんに別れを告げて、ロバスを目指してタタ村を出発した。
まずは、タタ村とロバスの間にあるヒューイックを目指し、そこで狩りで得た素材を換金してある程度の資金を調達する予定だ。
「どれぐらいで着きそう?」
距離が全然分からないので、どれぐらいで辿り着けるか全く読めない。
「んー、そうですねぇ。このマジックアイテムのおかげで明日の夕方あたりには辿り着けるんじゃないでしょうか?」
と、スーイスイって感じで道を進む僕たち。腰には光る浮き輪みたいな物をしています。
みたいなっていうか、浮き輪です。これをはめてるとフワフワと浮くので少しの力で、どんどん進める。
一応辺りを警戒しながら進んでいるので、これといって魔物と出会うことも無く順調に街道を進む。ゲームだとこういう時、敵とエンカウントして中々進めなくてイライラするんだけどもね。
朝から黙々と街道を進み、とりあえず、日が真上に来た辺りで休憩する事になった。
休憩に丁度よさそうな木陰を見つけたので、そこで昼食を摂ることになった。
「はい、どうぞ。昼間の分はお弁当を作ってきたんで食べてくださいね」
「あ、携帯食料とかじゃないんだ。セリナありがとう」
ちなみにヒロコは既にがっついてる。いただきますぐらい言おうよ・・・
セリナが作ってくれたのはサンドイッチ。甘辛く煮た鶏肉を野菜で包んで挟んだものや、乾燥フルーツと蜂蜜を挟んだもの。卵サンドや野菜サンドなど結構色々な種類を作ってきてくれていた。
パンくずを狙って小鳥が近くに寄ってくる。それを見て餌付けし始めるヒロコ。そんな姿を見ているとヒロコが精霊だってことをつい忘れてしまう。
セリナが作ったサンドイッチを綺麗に平らげて、少し横になる。
「母さん、どうしてるかなぁ・・・」
あのハチャメチャな母さんは大丈夫だと思うけど、ほぼ確実に色んな所に迷惑かけてると思うから心配だ。ナチュラルに笑顔で毒吐くときがあるからなぁ・・・
「お母さん見つかると良いですね」
「うん。でもきっと人に迷惑かけてるだろうから、後始末が大変なんだよねぇ」
セリナには、僕の旅の目的を話してある。他の世界から来てる事やヒロコの事は伏せてるけども。とりあえず、信じて貰えそうな事は全部教えた。
僕の能力とかを聞いたセリナは、僕が“印持ち”かもしれないと教えてくれた。
この世界には、神様からの贈り物としか言えない様な能力を持つ人がいるらしいんだけどそういった人を総じて”印持ち“というそうだ。
昔は“印狩り”なんてものもあったらしく、今では印を持つ人がその能力のせいで迫害されないように協会があるらしい。便利な能力が色々あるらしいけれど、目立つ力はどこの世界でも白い目で見られやすいって事かな。
僕も気をつけなくっちゃ。
「とりあえず、そろそろ出発しよっか」
「はーい」
「はい」
その後は順調に進み、予定よりだいぶ進んだ所で野営し一夜を明かした。
ただ、一つの寝袋にみんな入ろうとしてひと悶着あった事だけ記しておく。
次の日も朝からヒューイックの町を目指して、街道を進む。街道といっても、日本のように道路が舗装とかされているわけではなく、人が通ることによって自然とできた道だ。町に近づくにつれ馬車の轍が結構しっかり残っているので、道に迷うことはないんだけど、やっぱり凄くでこぼこしてる。
そして、人が通る事が分かりやすいと言うことは。
「お嬢ちゃん達、金目のものを出して貰おうか」
町まであと少しって所で、ぞろぞろと現れた盗賊の方ご一行。台詞にひねりがないよね。
「コージ・・・」
「マスター?」
二人ともどうしましょう? と問いかける様に僕を見る。
こんな時こそ、落ち着いて深呼吸。
すーはー。
「えっと、金目の物を出せば、通してくれます?」
と、僕が交渉の矢面に立つ。
「あん、嬢ちゃんかと思ったら兄ちゃんかい。金目の物ってのはお嬢ちゃん達の事もだ。
だから、通す訳にはいかねぇなぁ。ま、野郎は奴隷にでもなってもらうしかないな」
と、盗賊のおっちゃんはヒロコとセリナをいやらしそうな目で見て笑ってる。
エロだエロ。このおっちゃんはエロ親父で決定。
「んー、もうちょっとましな選択肢があると思ったけど、交渉決裂だね」
と、言い放つなり「ノーミス」を構え連射する。
シリンダーは「雷」を選択している。何かの間違いで人を殺しちゃったりとかしないように、シリンダーには非殺傷な魔法を込めてある。
バババババババリィィイイ!
「ギャヒィイィ」
響き渡るおっちゃん達の悲鳴。雷の魔法で盗賊のおっちゃんたちを一掃したせいだ。ビビビと痺れる程度の威力に収めてるので気軽にぶっぱなしちゃう僕。エロ親父たちにはおしおきが必要だもんね。
すぐさま、シリンダーを「眠」にあわせ痺れてるおっちゃん達を続々と眠らせる。
「いっちょあがり~。ヒロコ、このおっちゃん達しばっといて!」
「はい、マスター!」
「わたしは?」
「セリナは僕と一緒に、おっちゃん達におしおきしよう」
この時の僕はすごい笑顔だった。