特訓・・・?
バババ、バシュッバシュッ、ゴッ!
ピキュピキュ、バシュゥン!
「うみゃー!?」
「あ、あ、あ、や、っは、う」
「ほっはっほっへっほ」
ついでだから、ガイアフレームの特訓、いや猛特訓をさせている。とはいってもテレビゲームなんだけどね。僕が良くやってたロボットゲームを思い出して再現したもので、基本的な操作を覚えて貰うのに丁度良かったのだ。
これは意外にもヒロコが凄く上手かった。
画面を見ててびっくりしたのは、初心者は普通射撃武器でどんどん突き進む物なんだけど、いつの間にかカスタマイズまでこなして、軽量近接オンリー機体なんかに変更している。装甲も極限まで削ってあるので、すこしの被弾であっという間に機体が沈むような蚊トンボもびっくりな仕様だ。なのに・・・
「・・・うまいし・・・」
すげえ! ゲームとはいえ、始めて3時間ぐらいなのに被弾一発もなしでゲーム半分までクリアしちゃうとか。どんだけ適応能力高いんだヒロコは。
「なんかね、こういうの操作したような気がするのボク」
「こんなマニアックな機体はそうそう無いよ!」
ていうか、フレームに乗った事なんて無いだろうに謎だ。とにかくヒロコがフレーム操作が上手いと言う事は分かった。機体は選ぶけどね。
セリナとミミはどうなったかなぁと振り返ると、二人とも鬼気迫る顔でゲームに没頭してた。え、何があった?!
「まさかまさかここでヒロコさんですか、そうですかこれ上手くないとだめですか」
「うぅーうーうー、これ上手くならないと構ってくれないのかなぁ~う~」
よく聞こえないけどぶつぶつ言いながらゲームしてると怖いよ、二人とも? でも凄く上達してるようでなによりだ。そろそろ休憩して貰うためにも、何かオヤツでも買って来ようかな。うん。
そっと宿を出た僕は、おやつを作る為の食材を買いに出た。本当はそこら辺に売ってる屋台のお菓子でも良いかなって思ったんだけども、僕がプリンを食べたくなったのだ。材料さえあれば、冷やすのを入れても2時間かからないし。まぁプリンができるのを待って貰う間のお菓子として、チョコレートでも食べて貰おう。
こっちの世界の食材は、向こうの世界の食材と形が似てる物はほとんどが同じ味なので食材を探すときにまずは形が同じものを探せば、外れがない。たまに、まったく見当違いの味を出すものもあるので、味見はしないと駄目だけどね。
そして買ってきたのは卵、牛乳、砂糖、バター、ココナッツ風味のお酒。これだけの材料があれば、いつも作ってたプリンができる。よし、早速作るとするか。
ぽりぽり。ぽりぽり。
「チョコレートは、疲れた時に食べるとほっとしますねぇ」
「うん、おいしぃからこれ好きぃ」
ポリポリポリポリポリポリポリ・・・
「ヒロコは聞くまでもないですね、ふふっ」
「でも、あんなに凄い勢いで食べて大丈夫なのかなぁ? あれっ? そういえばぁコージはどこぉ?」
「そういえば、いらっしゃらないですね? どこに行かれたんでしょ」
「むむぅっ。こっそり居なくなったって事はぁ、また女の子を連れ帰って来るぅ・・・?」
「た、たぶんそれは大丈夫じゃないでしょうか・・・? コージって女性が苦手そうですし」
「そうかなぁ? セリナやミミがくっつくとぉ、いっつもニヨニヨしてたよぉ?」
「ニヨニヨしてるだけで、手を出してこないんですから苦手なんじゃないでしょうか。わたしがあれだけ押し付けても何もしてこないんですもの」
「なるほどぉ。普通だったら、押し倒してそうだもんねぇ。セリナが言うとぉ説得力があるねぇ」
・・・気まずい。プリンを作って冷やして美味しそうにできたので、持ってきたんだけど、セリナとミミの会話が聞こえてきて思わず立ち止まったのが運の尽き。なんだか僕が部屋に入りにくい雰囲気になってるよ、これ。でも、入らない事には始まらないし、覚悟を決めよう。
「う、うんっ! セリナ、ミミ、ヒロコ! 甘いお菓子を作ってみたんだけど、ここら辺で休憩しない? ずっと訓練してて疲れたでしょ?」
テレビゲームはあくまで訓練なのだ。うん。遊びだけども。
「あ、コージ! お菓子作ってたんですか? ありがとうございます」
「わぁい、コージの作ってくれるのっておいしいから好きぃ~」
皆の前にプリンを一個ずつ置いて、用意しておいた紅茶と一緒に食べて貰おう。
「なんか、不思議な色と形ですね」
「食べてもい~い?」
「ボクはもう貰ってるよぉ~」
相変わらずヒロコは黙って食べちゃう。もう、いただきますぐらいは言いなさい。セリナとミミは最初、おっかなびっくりな感じで、つついてたんだけど意を決して一口食べた後は凄い早さで食べ始め、あっという間にプリンが無くなった。僕も久しぶりに食べたけど、やっぱりおいしい。鍋があればできるから簡単でいいんだよねこれって。
「とりあえず、あんまり急に根をつめてやりすぎても身体に毒だから今日はこれぐらいで、ゆっくり休もうね」
「はぁい。ではお言葉に甘えてゆっくりしますね」
みんなリラックスして、それぞれのんびりしている。ゆったりとして気が抜ける時間だ。うーん、今言う事じゃないかもしれないけど、セリナとミミに僕たちの秘密をちゃんと話して置こうかな。
「セリナ、ミミ。聞いて貰いたい話があるんだけど、良いかな」
「はい、なんでしょう?」
「ん? なぁに?」
「えっと、突然なんだけど僕は、違う世界からやってきた人間なんだ。ここの世界には、父さんに呼ばれて来ただけなんだ」
二人は、僕が言ってる話が理解できない様子だったが、時間が経つにつれて理解できてきたようで、驚いた顔になっていた。
「うん、違う世界って言っても信じにくいとは思うんだけど事実なんだ。そもそも父さんは僕の世界だと行方不明で僕が10歳の時に家から居なくなったんだ」
「そう、だったんですか・・・」
「で、父さんは元いた世界に戻ろうと色々頑張ったらしいんだけど、どうやっても元の世界には帰れないと分かったんだ。だから、家族みんなで一緒に暮らしたかった父さんは、自分が元の世界に帰るんじゃなくて、僕たちをこっちの世界に呼ぶ事にしたんだんだって」
「ひょっとして、最初わたしと出会ったときはこちらの世界に来た直後だったんですか? 変わった服を着てましたけど」
「うん、セリナと出会ったのはこっちにきてすぐだったよ。僕が居た所は自然なんか滅多に無かったから、いきなり森の中に飛ばされて凄く怖かったんだよねぇ」
「それで荷物も何も無かったんですかぁ・・・」
そこでヒロコに目配せをする。するとヒロコは分かってるという風に頷いてくれた。
「で、ヒロコなんだけど、彼女は人間じゃないんだ」
「「え?」」
「ヒロコは精霊らしいんだ。僕がこっちの世界に来た事で生まれた精霊なんだって。普通、精霊って人には見えないそうなんだけど、寂しいから見えるようになって貰ってるんだ」
「そ、そんな事ができるんですか・・・わたし精霊って初めて見ました」
「ミミも・・・」
「やだなぁ、照れるなぁボク」
そんなに照れる必要があるのかヒロコ。
「なんだかごめんね、隠し事したままで居て」
「いえ、コージには何かあるだろうとは思ってましたから大丈夫です。まさか違う世界から来てたっていうのは驚きですけどね」
「ミミは怒ってるよぉ」
「ミミ・・・」
「だからミミに許して欲しかったらぁ、今日は一緒に寝てくれないといーっしょぅ許して上げないんだからねぇ?」
セリナがしまったぁ! って顔をしているのを横目に見つつ、ミミを見る。ちょっと顔が赤いのは照れてるんだろうなぁ。一緒に寝ないと許さないとか言ってるのはミミなりの優しさなんだろう。だって僕が役得なだけだもんねぇ。
「ありがとうミミ。一緒に寝るとか言わなくても分かってるよ。わざとそんな風に言って気にしてないって事を教えてくれてるんだね」
と言ってミミの頭をナデナデする。ミミもセリナも優しいなぁ。ついでにセリナの頭もナデナデする。気持ちいいなぁ、これ。
「むぅ、違うのにぃ・・・コージのどんかん」
「抜け駆けはだめですよ~、ふふ~ん」
何かこそこそと話し合ってるミミとセリナ。そうしてるのを見ると仲が良い姉妹みたいだ。
「もう元の世界には帰れないらしいんで、こっちの世界で頑張ろうと思うんで、平和に仲良く暮らすためにも一生懸命頑張って父さんを手伝いたいんだ。みんなもお願いできるかな?」
「ふふ、そんなのはいまさらですよコージ。お義父さんを手伝うのは当然です」
「ミミもぉ一緒に暮らすんだから、そんなのは当たり前だよぉ」
「うんうん、そうそう。がんばろうねマスター」
「うん、ありがとうね、みんな」
敵だらけって聞いて不安になってた僕だけど、こうして皆と一緒に居れて良かった。皆と居る限りきっと何があっても、なんとかできる気がする。きっと。
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