姉? 妹? 妹だね
「で、ユージン陛下はロバスへ逃げおおせたという訳か。いやはや、どうやってあの牢から逃げ出したのやら」
グレイトエースの王宮の一室。宰相であるラディアスは部下より報告を受けていた。
「どうも、手引きした者が居たようですが、それも足取りが掴めていない状況です」
「ふむふむ、結局まんまとしてやられ、陛下の引き立て役になったのだな」
「・・・申し訳ありません」
「役に立たぬ奴らめ。エリスめも戻ってこない所を見ると捕まったか、あるいは・・・」
青ざめた表情で返事をする部下を、興味なさそうに一瞥し思案するラディアス。
「ロバス近郊で消息を絶ったと報告を受けています」
「期待はせずに、次の手を打つべきだな。衛兵。使者との面会の準備をすすめろ」
「はっ、かしこまりました」
これ以上ここに居て機嫌を損ねてはまずいという風情で、急いで部屋を出て行く。
「貴族達へ招集をかけねばなるまいな。あとはあいつらが役に立つほど動いていれば少しは役に立つんだがな、まぁ所詮気休め程度だな」
最初から最後まで皮肉げな嘲笑をくずさなかったラディアス。その嘲笑は果たして誰に向けられていたものだったのだろうか・・・
「ミミちゃんは、わたしと一緒に居るのよ」
「はうあう」
朝起きてご飯を食べてると、わがまま女王がそうのたまった。
「そんな我侭ばっかり言ってると、みんなに嫌われちゃうぞー」
「光司はいっつもそう。もっと自分を出しなさいよっ! 本当はセリナちゃんやヒロコちゃんやミミちゃんやお母さんに、あんな事やこんな事したいんでしょっ!? なんで迸らないのよっ!」
「あーもう! なんでもかんでも自分を基準に考えて、押し付けるなっ! しかもドサクサに紛れて何て事言うかなっ? みんな、違うからね顔を赤くしないでっ?! 全部母さんの妄言なんだから!」
「光司ってこんなに常識ある子だったのか。父ちゃんの子だったらてっきり・・・」
「父さん、そんな所で言葉を止めないでっ?! 最後まで言ってよ、凄く気になるよ?」
「あ? エロエロざんま・・・いなんてしないで、節度あるお付き合いしてるって信じてるよっ!」
本音がポロリと漏れる直前で、母さんの視線を感じて軌道変更しやがった。でも、ごまかしきれてないと思うよ?
「やっぱり! あなたはお部屋でわたしとじっくりイチャイチャしましょうねぇ~」
「この雰囲気はイチャイチャじゃない! いやだっ! お部屋はいやだっ!」
いらん事言うからドナドナな目に会うんだよ、父ちゃん。ふふんと、得意気になってテーブルを振り返ると・・・
「・・・ちらっ」
「えへっ」
「うふふ」
何か微妙にピンクな雰囲気になってる気がする・・・どうしよう・・・
「てな訳で、ミミちゃんはわたしの娘って事になったからね。よろしく~」
「うわっ? 父さんは?」
「良いの良いの、必殺天チューしてきたし。あのね、母さん冗談じゃなくって、ほんとにミミちゃんとね、うちの娘として一緒に暮らしたいの」
ただの我侭かと思ったんだけど、母さんは本当に何か事情があって言ってるようだ。
「でも、ミミはそれで良いって言ってるの?」
「それはこれから。ミミちゃん、ちょっとこっち来て?」
「うー・・・」
低く唸り声を上げながらも、母さんに近づくミミ。そして母さんは、なにやらミミに耳打ちし、それを聞いたミミは、セリナとミミを交互に見比べ何事か納得したかのように、頷いた。
「よっし、商談成立! ミミちゃん、今日からお母さんって呼んでねっ♪」
「う・・・ぅ、お、おかあ・・・さん?」
「ぬふーかぁわいい~♪ 一緒にがんばりましょうねぇ~」
「う、うん。ミミがんばるぅ」
「良い子良い子」
なにやら、納得したらしい。まぁ、こんな事が無くてもミミは年上だけど妹みたいなもんだし、ただ母さんのおもちゃになる事が増えただけ・・・かな?
「俺にも可愛い娘ができたんだな。あ、でも光司次第でもっと増える可能性があるのか」
「うわっ、父さん!? 復活早いね」
母さんから天チューとかいうのを喰らったらしいけど、大丈夫なのかな?
「大丈夫だけど、部屋はいやだ、イ、イヤダ・・・」
「う、うん、分かった。だから、正気に戻って父ちゃん」
「お、おう。大丈夫だ、大丈夫。うん。で、話はついたみたいだし、ちょっと出てくる」
ロバスの評議会と打ち合わせに行くそうだ。僕も着いていった方が良くないのかな?
「いや、おまえは残っててくれ。結果は知らせるから心配するな」
「うん、分かった」
とりあえず、セリナ達にも相談してみよう。僕が考えた大軍を少数で無力化する案に穴がないか一緒に考えて貰おう。良い案があれば教えて欲しいしね。
「ていう案なんだけど、どうかなぁ?」
・・・あれ? なんか皆すっごい白い目でこっち見てる。なんで?
「コージ?」
「はいっ、なにかな?」
「王様と一緒に、国を取り戻すというのは分かりました」
「そ、そ、そうなんだ。だけど、やっぱり向こうの方が数が多くてね。どうしようかなと」
セリナが無表情で尋ねてきたので、ちょっと怖くてどもってしまう。
「わたしとコージは一心同体、いわば二人で一人といっても過言ではない関係です」
「ミミとだよ」
「ボクとだよ」
「おほん。わたしたちとコージはとにかく一心同体なのです、わかりますか?」
「う、うん。そうだね」
なんか言い直すセリナ。うん、仲間だよね。
「いいえ、分かってない! コージは分かってません! ミミ!」
「うん、駄目だよぉコージ。ミミと一緒にぃ、戦えるように考えてくれなきゃ。めっ」
「ミミ“と”だめ! ミミ“も”です! みんな一緒です!」
「だけど危ないんだよ? それに僕が一人で出る方が楽かなーって思うし、案が浮かばないんだよね」
「なら、みんな一緒に安全にできる事を考えましょう! コージが一人だけでしようって考えるのが間違いなのです」
ねぇーーーって、なんか一致団結している女の子達。うーん、人手が要れば確かに少しは楽になるかもしれない・・・かな? 皆が一緒に戦ってくれるなら危なくないようにだけしなきゃね。過保護かもしれないけども。
うーん、皆で立ち向かうとすると、どうすればいいかなぁ・・・?