決意
ハーベイさんの工房をまた来ますと言って出て、すぐにロバスのトリプルセブンに戻る。よく考えたら、普通は「777」ってスリーセブンって言うよね? ん、どうでもいっか。
宿に戻って、父さんにフレームの勉強してきたと言ったら、驚いてた。父さんにとってロボットは乗るものであって、造るもんじゃないらしい。乗れたらそれで良いそうだ。でも、僕がフレームのパワーアップをできるようになったら、便利だと思うので僕は僕で突き進もうと思う。
それで、今後の事を打ち合わせした。僕は父さんの子供というのが知れ渡ると狙われやすくなりそうなので、王国を取り戻すまでは伏せておこうという事だ。母さんも同じ理由で、伏せておく。今後の方針としてはロバスの力を借りて首都を攻め落とす事。方法としては他の都市への根回しなどを行い隣国の動きをけん制しつつ、大義名分を掲げ軍勢を集めて首都を攻撃しようという感じだ。ただ、隣国のハイローディスはすでにグレイトエースにて駐留している可能性もあるので、すばやく軍勢を集めて首都を鎮圧しなければならない。
「にしても、やっぱり兵士の数が足りないわなぁ」
「戦争・・・するんだね」
「まぁな。こんな父ちゃんでもこの世界じゃ覚悟を決めてやってきた。お前達には隠したくないから正直に言うが、人も殺した事がある。そいつが悪人でも関係ない。ただ、人を殺した」
「っ!」
こんな時は深呼吸。
すーはー
そんな事は無いと思っていたんだけど、どこかでやっぱりと思う自分がいる。それでも、父ちゃんは嫌いになれないし生きていてくれて嬉しい。他の人の命を奪ったとしても。ただ、僕は父ちゃんがそういった事をしてきたという事実を知っておけばいいと思う。
「今回もそういった事は正直避けられないと思う。光司、だから無理に手伝ってくれなくて良いんだぞ?」
「んー、僕は手伝うよ」
「光司・・・」
「そして誰も殺さない。きっと殺せないしね。だから、甘いと言われるかもしれないけど敵はみんな無力化する方向で戦う!」
「下手すりゃ、仲間を危険にさらす事になるぞ?」
「そうならない為に僕の力はあると思う。みんな一緒に考えて考えて考え抜けば、なんとかなるよきっと。今まで、結構なんとかなってきたし」
「能天気でいいなぁ光司は。おっと馬鹿にしたわけじゃないぞ。俺もそういった所を見習わないとなと思っただけだ。そうだな、一緒に考えればなんとかなる、か」
「そうそう。せっかくの異世界なんだから、最初から諦めちゃ駄目だよ、きっと。僕たちには元の世界の知識があるから、そこからなんとかなるって! たぶん」
「ま、そうだな。よろしく頼むぜ光司。で、今回のクーデターの敵さんについて教えておくとしよう。敵を知り己を知れば百戦危うからずってな」
今回のクーデターの首謀者はラディアス=デル=ファウンデルス。この国の宰相であり何代も続く大貴族だ。この貴族は、国の主導者は貴族でなければ愚民を導く事はできないという思想の持ち主らしい。
ただ、父ちゃんには王の印があったせいで渋々従っていたらしいのだ。表では従っていたんだけど、父ちゃんに自分の娘と結婚させて貴族にして対面を保つと同時に、王国に対する支配力を高めようとしていた。だけど、父ちゃんは母さん一筋だったので、既成事実を作ろうとして色々画策するも悉く失敗に終わり焦っていたようだ。
そのまま、誰も娶ることなく終わるなら何も無かったかもしれないんだけど、今回家族を召還するという話を聞きつけ、このままだと平民の血がのさばってしまうと考えたらしいファウンデルス卿は、クーデターを決行。計画自体はすでにいくつかあったらしく、その内の1つらしい。抜け目の無い事だ。
貴族のほとんどの人間が父ちゃんに敵対しているらしく、かなり厳しいらしい。なんでも貴族には血の力と言われる特殊な能力があるので、ほとんどの貴族が気位が高く戦争となると凄い力を発揮するそうだ。ただその力は、当主もしくはその代理の人間にしか発揮できないのが唯一の救いだそうだ。
ロバスは父ちゃんに対して友好的で、今回も父ちゃんが牢に捕まってると聞いてファラスさん達に探らせに行ってたようだ。なんでも、ロバスに魔石獣の百年に一度と言われる大群が押し寄せた時たった一人で撃退しちゃったのが縁らしい。なのでロバスの評議会は信頼できるそうだ。
と言う事でロバス以外は全て敵って言っても過言ではない状況のようだ。一騎当千と言える武将がいればだいぶ楽なんだろうけど、ロバスは生憎と傭兵は居てもそこまで武力で鳴らした将軍は居ないらしい。
ガイアフレームに関して言うならばエースパイロット級がごろごろ居る。こっちに関しては、フレームの数が劣っていても簡単に負けることは無いだろう。だけど、ロバスから出撃させてしまうと、ロバスの防衛が危うくなる。なまじ四つのブロックに別れているので防御するにも、数が必要になるのだ。
うん、僕だけで全部やっつけるぐらいのつもりで考えてみよう。
とりあえず飛行ユニットは攻めるのにだいぶ有利になる。空からの攻撃は避けにくいし、攻撃を当てようにも狙いをつけにくいだろう。ただ、攻撃手段は対人兵器として、麻痺弾とかトリモチ弾とかを用意する必要がある。ガイアフレームもトリモチ弾で動きを封じてしまえば、無力化できるかも。
ただ、攻撃部隊って色々な方向から攻めて来るだろうから、その時をどうするか? フレームごとテレポートするのは魔力がごっそり減りそうだし、かといって僕だけテレポートしてフレームを乗り換えるのも、僕が降りたフレームが墜落して人が死んじゃうかもしれないし。うーん、乗り換えるのは駄目かぁ。だったら乗り換えない方向か。
あ~最初から無人で遠隔操作しちゃえばいいのか。
コントローラーとモニターをたっぷり用意して、遠隔操作しちゃえば僕にとってはある意味なれた環境でロボットゲームするのと変わりがないよね。複雑なマクロも組めるから、回避マクロと反撃マクロを組めば、ほっといても簡単に撃墜されないと思うし。あーでも人が乗ってないとフレームの稼働時間に制限があるのか。まぁそこは仕方ないと割り切るしかないか。
あと前に作っておいたフィールド反転君も役に立つかもしれない。騎馬隊が突撃してきた所に違う方向へ誘導してあげたら、きっと混乱するだろうなぁ。ついでに落とし穴があれば効果的。そして、あとはとにもかくにも眠らせる。麻痺させたりするのもいいなぁ。とにかく死ななくて、怪我もしなくて、動けなくする! をモットーに考えていこう!
よーし、のってきたぞぉーーー!
いきなり異世界にすっとばされた父ちゃんは、生きる為に色々してきたのです。
隠し通せばいいんだろうけど正直に言っちゃうのは、ある意味家族だから大丈夫という甘えから来てるのかもしれないですね。
さてこの後どうなるでしょー?