技術供与・・・?
「ハーベイさん、これご覧になってくださいますか」
「ん。どれどれ」
リックさんが真剣な表情でハーベイさんに指し示したのは、キラーマシンの腕の部分。銃がついていた部分だ。銃は銃身が壊れているんだけどもね。
「この武器は銃で、ロボットの武器としては珍しいものではないんですが、この弾を送り込むところにあるこの機械を見てください」
「お? これがどうしたんじゃ?」
「魔力で動く機械なんですが、これに魔力を流し込むと・・・」
と、いいながらリックさんは機械の箱の部分を持ち何かを操作する。
がちゃがちゃがちゃちゃりんちゃりんちゃりん・・・
弾丸がどんどん機械から出てくる。あぁ魔力を変換して実弾を作ってるのね。「ノーミス」や「月光」で使ってるのと同じシステムなんだ。やっぱり魔力を利用して武器を作る人ってみんな考える事は一緒なのね。ふとハーベイさんを見ると、声も出ないほど驚いてる。あれ?
「ロボット共が弾切れを起こさんのはこれのせいじゃったのか」
「みたいですね。しかも、そんなに魔力を使わずに弾を生成できるので、この機体で小型星8型なんて化け物エンジンを積んでるんで、弾切れを起こす事は無いですね」
実弾は、弾丸の大きさにもよるけど衝撃波もなかなかに厄介なのだ。数少ない何のマニアか分からない友達に話を聞いた覚えがあったので、僕も「ノーミス」で実弾を撃てるようにしたのだ。
「こんな綺麗な状態で、工房まで運ばれた事が無いからね。この残骸を詳しく解体してロボットの構造を調査すれば、ロボットの効果的な倒し方も分かるかもしれない。あとフレームの製作にも役に立つでしょうし、古代遺跡の攻略にも少しは役に立つ事でしょう」
「そうじゃな、残骸といえど馬鹿にはできんな。この魔力変換装置だけでもかなりのお宝じゃし。コージ、これ50プラチナでどうじゃ?」
「えっと、小型魔石エンジンも一緒でどれぐらいになります?」
「うぅむ・・・すまんがエンジンも一緒となるとわしじゃ買い取りできんなぁ」
残念そうに呟くハーベイさん。
「えっと、それはエンジンが高すぎるって事ですか?」
「そうじゃ、下手なルーツより値段が張るからのぉ。デストロイヤーは別としてな」
「じゃあ、デストロイヤーもといホワイトファングと交換ってことで手を打ちませんか?」
「おお? それはこっちにとって助かるが小型の8型じゃぞ? 本当にいいのか?」
物凄く驚いた顔で聞き返してくるハーベイさん。
「えっと、ちょっとばらして見せて貰えるならそれで問題ないですよ、はい」
構造さえ覚えておけば、自分で造れるもんね。
「あの時ハーベイさんに助けて貰えなかったら、今ここでこうして笑ってられなかったでしょうし、ばらして見せて貰えればたぶん自分で造れると思いますから、そのエンジンと残骸でホワイトファングの代金と言う事にして貰えませんか?」
「・・・うぅむ。こっちが一方的に得をしてるんじゃが、それは理解しておるか?」
「いえいえ、僕もじゅうぶん得してるんで、問題ないです!」
「あー、エンジンをばらすってことだが一箇所どうしてもばらせない所があるが、大丈夫か? さっき造れるといってたが」
そこでリックさんが、疑問をぶつけてきた。
「ばらさなくても、外側から調べてみれば大丈夫だと思います。でも駄目なら駄目でそれでも良いです」
「よし、じゃあ取引成立じゃ」
「ありがとうございます」
「いやいや、礼を言うのはこっちじゃて。これで妻に叱られんで済むわい」
あっはっはっはーと大笑いするハーベイさん。これで僕もやっと借金を返せたのでほっとできるよ~。
「早速、ここでばらしたい所じゃが、やっぱり慣れとる自分の工房でやる方が良さそうじゃ。壊してしもうては元も子も無いからの」
「じゃあ一度ヒューイックに戻ります?」
「そうじゃな、そうしよう。すまんがコージよ、ヒューイックまで付き合ってくれんか」
「お安い御用ですよ。すぐに帰ってばらしましょう」
「コージはせっかちじゃのぉ」
「ふふーん、便利なものがあるんですよ!」
訝しげな様子のハーベイさんに、僕はちょっと得意気に笑って見せた。エレメンタルフレアの出番なのだ!
ヒューイックに行くので、晩御飯要らないと宿に伝える為に戻ったらファラスさんが何故かやってきててセリナ以外に何かのカードを手渡してくれた。
「これはロバスの通行許可証だ、上と掛け合って分捕ってきた。これがあればロバスの行き来が楽になる。どうせコージの事だ。まだギルドの登録はしてないんだろ?」
「はい、まったくもってその通りでございます」
なんでばれたんだろ? まぁ、ギルドに入らなくても普段困らないしねぇ。
「この許可証があれば、見せるだけで通行できるから持っておくと良い。せめてもの礼だ」
「ありがとうございます、ファラスさん。今日はエリツォーネさんは一緒じゃないんですか?」
「あぁ、向こうは向こうで報告する事が多いみたいでな。誘ってみたが断られたよ」
「エリツォーネさんは忙しいんですねぇ。わざわざありがとうございますファラスさん」
こんな言い方をするとファラスさんが暇みたいに聞こえるかな? 大丈夫かな?
「ふふふ、まぁ次の任務まで暇と言えば暇なんだよ。書類仕事は得意なんで、すぐ終わるしね」
やっぱり僕の顔に暇って書いてたのかな。そんな風に教えてくれるファラスさん。
「これからヒューイックに行ってくるんで、この許可証は本当に助かります! もぉあの書類審査は本当にめんどくさくて・・・」
「コージはおおげさだな、審査なんて決まった事書けばいいんだから楽じゃないか」
「書類が得意な人にはわかんないんです!」
「ははは」
うぬぬ腹は立つけど許可証を持ってきてくれたから我慢我慢。なんだかんだいってファラスさんて面倒見が良いよね。ミミにも丁寧に勉強教えてたもんなぁ。
「じゃあヒューイックに行ってきまーす!」
今度こそ発進だ!
ヒューイックまでエレメンタルフレアで一時間。今回はセリナ達は留守番してもらった。ヒロコは僕の精霊ってだけあって、僕の記憶を見れるらしく母さんの顔が分かるらしい。無いとは思うけどヒューイックに行ってる間に母さんがロバスに来たときに、居場所を突き止めて貰うつもりだ。セリナとミミはその護衛として残って貰ってる。
「ひょっほぉ~~~~い」
空飛ぶエレメンタルフレアで、はじけてるのはハーベイさん。最初はガイアフレームでヒューイックまで送るというと、腰が痛くなるから馬車のほうが良いとごねていたんだけど強引に押し込み、町の外まで行って飛行体勢になり、空を飛ぶと一気に態度が変わった。
「こんな強引な方法で空を飛べるとは思わんかったわぃ~」
「確かに魔力を馬鹿食いするんで、乗り手は選びますけど強引ってほどじゃ・・・」
「ばーか言えぇ~! 普通の乗り手じゃと10分持てば良いほうじゃぞ。しかし、空を飛ぶのは快適じゃなぁ」
「最初は嫌がってたのは誰でしたっけ?」
「ふぁっふぁっ、そんな奴ぁ居ないじゃろ? しかし、空を飛ぶユニットとは良いのぉ。じゃが、ちょっと無理やりくっつけた感があるのが残念じゃなぁ。わしじゃったら、もう少し効率よく乗り手に優しくするんじゃがのぉ」
お、無理やりにくっつけたのがばれてる。ハーベイさんはプロだからやっぱりそういう事が乗っただけで分かるもんなんだねぇ。そうだ!
「良かったら設計図渡すんで、改良してくれます?」
「コージはほんに気前がええのぉ・・・騙されたらどうすんじゃ」
「僕としてはフレームの種類が色々増えた方が、対戦したときに楽しいんですよ」
やっぱり、ロボットは対戦して切磋琢磨していくのが醍醐味だよね。ハメ技は勘弁してほしいけどね。
「フレームを造るより、乗ってる方が好きと言うわけか、なるほどのぉ。まぁ、見た所あんまり頭は良さそうには見えないしの」
「ほっといてくださいよ!?」
飛行ユニットの設計図を見ながら改良案を考えてたら、ヒューイックにあっという間に着いてしまいました。ヒューイックは審査が無いから楽でいいや。よし、早速エンジンをばらしてもらおう!