幸運の女神?
いやはや。
勇者達に順番を奪われてから、みんなで最近できたファストフード系のお店に行って見た。こっちの世界では今まで無かった形式だったらしく、人気はそこそこ。だけど回転が速いので手っ取り早く済ませたい人には人気らしい。意外と新しいもの好きなミミが行って見たいというので、入った途端。
「おめでとうございます! 1万人目のお客様でーっす!」
「ふ、ふぁっ!?」
いきなり知らない人におめでとうって言われて、テンパるミミ。ただでさえ人見知りなのに急にそんな事されたら、挙動不審になるよね? ミミは可愛いから、店員さんやお店に居た他のお客さん達に口々に可愛いと言われ、すごく真っ赤な顔をしてた。
店員さんが愛想よく説明してくれたところ、ミミが丁度、このお店「ラッテン・セッテン」にとって記念すべき1万人目のお客様だったらしく一緒に居た僕たちにも何か記念品をくれるらしい。何時来てもドリンク無料の権利をみんなに、ミミには特別に1日10個限定のスペシャルバーガーを1日1個食べられる権利を貰えたのだ。本人確認のためか、僕も含めて手形を取られ、後日お店に手形のオブジェが飾られるそうだ。
「因果応報来たねぇ、コージ!」
「だねぇ。運が良いのか悪いのか・・・」
なんともなタイミングに苦笑するしかない僕。ミミはすっかり悪いことがあったら必ず良い事があると信じきってる様子でもある。まぁ、間違ってはないけどいつもいつもこんな感じになることは無いんだからね、ミミ。
「にへへぇ~、わかってるよぉ~っだ」
さっきまで、可愛い可愛いと周りから言われて顔を真っ赤にして縮こまっていたミミだけど、今は限定バーガーを早速おいしそうに頬張ってるおかげで、リラックスしてきたらしくいつものミミらしさが戻ってきた。
「だけど、私たちって言うかコージって何かと絡まれます・・・よね?」
「え!? そうなの? 僕からまれてる???」
「不思議そうな顔をするマスターが不思議だよ」
「うん、コージっていつもぉ何かあるよね」
「ひょっとすると、何か憑いてるかもしれませんねぇ~?」
セリナにしては珍しくいたずらっぽい笑顔で、そうからかってくる。うぅ。
「まぁ憑いてるというのは冗談にしても、ちょっと運気を上げに行くのもいいかもしれませんね」
「というと?」
ロバスには、幸運をもたらすと言われる像があるらしく、なんでもその像にある事をすると運が向いてくるといわれているらしく、観光スポットにもなっているらしい。僕って言われて見ると、肝心なところで抜けてる気がするのでそういった幸運にすがるのも良いかもしれない。気休めとはわかってるけど、気になるよね?
「でも、一体何をすればいいの?」
「それがですね・・・一人ひとり違うんです。この像が人気なのもそれが原因なのです」
なにやら、幸運をもたらすというのは伊達では無いらしく真剣に願っていると像から天啓があり、その通りに行動する事で運が拓けるらしい。ただ、聞こえる人間と聞こえない人間がいるので、そこの所も運だそうだ。像から話しかけられるって事・・・だよね? 本当にそんな事があるなら、聞いてみたいなぁ。
「なんか面白そうだね、明日行ってみよっか」
「うん、行く行くぅ~!」
「ですね、コージの運気を上げましょう」
「ボクが居れば問題ないはずなのになぁ~」
精霊であるヒロコはぶつぶつ言ってる。ヒロコが精霊なのは僕だけしか知らないんだから仕方ないんじゃない? でもそろそろ話した方がいいかもね。僕のことも含めて。
「コージ、怖い顔になってるけど、どぉしたのぉ?」
いつのまにか、僕をじっと見ていたミミがそっと心配そうに尋ねてくる。
それに、なんでもないと首を振って答えて、残っていたジュースを飲み干した。
みんなで「ラッテン・セッテン」から宿にもどると、セリナに一通の手紙が届いていた。どうやら今回の任務について報告をして欲しいとの事だった。そういやセリナって帰ってきてからずっと一緒にいるから、報告なんて全くしてなかったよね。それでいいのか?
「いえいえ、ちゃんと報告書は向こうに送ってるんですけど、口頭で色々聞きたがるんですよお偉いおじーさんたちは」
はぁ~と、ちょっと色っぽいため息を吐きながら、仕方ないかぁと呟くセリナ。魔法教会でのやり取りを考えているのか、すごい無表情になってて別人みたいになっている。そんなセリナの頭をぽんぽんと叩いておく。
「そんな顔しないの。せっかくの美人さんが台無しだよ?」
そんな僕の台詞にぱぁぁああああああっと、まぶしい顔を向けてくるセリナ。そ、そこまで眩しくしなくてもいいから普段から維持しようね、それ。セリナって最初から僕には優しい顔や笑顔を向けてくれていたんだけど、他の人には無表情か仏頂面が多いんだよね。仲間になってるヒロコやミミにはそうでもないんだけどね。とにかく温度差が激しい。
「じゃあ、セリナはお留守ば・・・んは可哀想だから、終わるまで待って皆で行こうね」
さっきいじめられたから仕返しに、と思ってセリナにお留守番してねって言おうとしたんだけど、言い切る前にセリナにこの世の終わりみたいな顔をされて断念した。だって、あんな顔されたらすっごく罪悪感が沸いてくるんだから意地悪できなくても仕方ないよね?
「わたしを待ってる間に勇者と会わないように気をつけてくださいね」
「・・・宿にこもっておこう。うん」
勇者パーティに会うと、嫌な目にあってから良い事があるんだけどやっぱり会いたくない。だって、そのうちもっと酷い事になりそうで怖いんだよねぇ、あの人達。
明日は幸運を貰いにいくぞーーー!
ロバスとグレイトエースを結ぶ街道沿いの森の中。一組の男女と二人組みの女性とが対峙していた。
「なんで、おまえがここに居る! エリス」
「そういう陛下こそ、お忍びでこんな所まで来るのはいたずらが過ぎますよ?」
激しくにらみつける男に対し、すずしい態度で応対する仮面の女エリス。
「探し物のついでに、おいたをしてる陛下を見つけられるとはついてますね。さぁ、お城に戻りますよ!」
「抜かせっ!」
そう言ったが早いか、少女を抱きかかえ横っとびに逃げる男。
「じゃまだ!」
エリスとともに付き従っていた女性を、抱えている少女の足で蹴りつけ、脱兎のごとく逃げ出す男。
「あぁもうついてねぇ! きりきり逃げるぞぉおおおお!」
「あの女性とはどういう関係?」
「いや! 今そんな事言ってる場合じゃないからっ? 空気読もう! 空気!」
「逃がしませんよ。行くわよリリィ!」
「はい、申し訳ありません!」
街道沿いの追跡が幕を上げた。