キラーマシン
勇者様ご一行に会い、「グッドラック」を手に入れてからは順調に狩りが進んだ。一度、他のパーティがモンスターを多数引き連れて来たのに巻き込まれて、多勢に囲まれたんだけど、ミミがなんなく捌いてくれたおかげで、かなり儲かった。今回、古代遺跡という地下の迷宮なのでセリナは炎の魔法を封印している。フレイムぐらいは使うんだけど、あまり長くは使わない。やっぱり酸素が無くなったら怖いしね。
だけど、セリナの凄い所は得意魔法が使えなくなっても、敵を倒すのに貢献する事ができることだ。ど派手な攻撃魔法が得意なんで、結構おおざっぱに攻撃しちゃうタイプかと思ったら、まず敵を弱体、拘束、味方の攻撃補助、加速と流れるように魔法をかけ、敵の足止めの為に壁魔法をつかい多対一にならないようにコントロールし、タイマー魔法というべきだろうか。うまく敵を誘導して時間差で発動する魔法の餌食にしたり。とにかく、魔法は敵を倒すための手段として使い、倒せるのであれば何の魔法でも良いというスタンスで魔法を使う。改めて、神童と呼ばれたセリナの凄さが分かったのだった。
「ミミも凄かったけど、セリナの魔法の使い方は凄かったなぁ。見習わないと駄目だね」
「えっと、急にどうしたんですかコージ? 褒めてもなにもでま・・・いえ抱きついちゃいますよ?」
「ミミもぉーーー!」
「うはぅ!?」
セリナの魔法の使い方を反芻して、自分もああなろうと物思いにふけってたら、二人に突撃された。いや、気持ち良いんだけどあぁああああん!?
「ちょっと離れようね? マスター?」
「・・・はい」
ヒロコがめりっと僕たちを引き離した。なんだか珍しいね、いつもだとにやにやしてるだけで助けようとも引き離そうともしないのに。どうしたんだろ?
「なんかね、向こうの方が凄く静かになったのマスター」
真剣な顔で怯えた様子で訴えてくるヒロコ。何かやばい敵が居るんだろうか?
「この遺跡に入ってから、いつもどこかからか生き物の気配が感じられたんだけど、さっき急に向こうの方の気配が次々無くなっていったんだ」
「ということは、何かやばい敵がそこまで来てる・・・?」
「そうかも。はやく行こうよマスター」
その言葉を受け何事かを感じ取ろうと、静かにしているセリナとミミ。
ギュィィイイイイイイイイィイイィイィ
と、甲高い音を立てながらそれは来た。
全高4メートル近い大きさの人型機械。ロボット。急に現れたそいつは、そいつから逃げてきたであろうオークをぐしゃっと、卵を割るより簡単に捻り潰していた。
頭部の横長に光るセンサーアイだろうか。それが僕たちの方を向いたように感じた。
「アクセル!!!」
本能的にこいつはヤバイ敵だと感じた僕は、いきなりアクセル状態に移行した。それはどうも正解だったようで、そいつの腕が徐々に持ち上がり僕たちの方へ向けられようとしている。あの腕は銃で間違いない。だとすると、遮蔽物を出して防ぐしかない。
「アースブロック! アースブロック! アースブロック!」
何故か一枚だと不安に感じた僕は、地面から壁がせり出す魔法を3連続唱えていた。さらに
「コロード! ダウン! プロテクナ!」
相手の防御力を下げる魔法、行動速度を遅くする魔法に防御魔法をかけた。
ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!
ロボの腕から案の定、弾丸が発射された。射線は確実に僕たちに向いているが壁が競りあがるので防げるはずだ。僕はかいくぐってでも肉薄するつもりだけど。ミミを見ると既にロボまで4メートルぐらいの距離まで迫っていた。さすが早い。
ロボの的を分散させる為に、僕も前進する。ミミが左からなので、遅れて右側から突撃していく。そして、ロボに脅威に思われるようにビームサーベルとビームガンを出し威嚇射撃を開始する。
ビシュゥン!ビシュゥン!ビシュゥン!ビシュゥン!
ロボの腕が射撃武器になっているので、銃身を狙って撃ちまくる。ロボからも射撃は続いているが、僕は斜線から逃げるように動きつつ撃っている。壁が凄い勢いで崩れていき視界を遮る。土壁の破片が避けきれない程飛び散り、結構な数が僕に当たる。破片といえど勢いが良いので結構痛い。だけど歯を食いしばって斜線をみんなから外すべく動きまくり、銃を無効化するべく、撃ちまくる!
バギュッ!ギュッッグォグォグォ!
うまく命中したらしく腕部の銃は異音を発し、弾丸が出なくなった。これで一安心と思ったら、腕の横側から剣がせり出して来た。だけど、ミミがすでに接近していて脚部を「月光」の後継武器である「月詠」を叩き込んでいる。モードは氷のようだ。まとわりつくように動くミミを狙い剣を振り上げるロボ。だけど振り上げた瞬間にはミミがじっと見ていて、攻撃しつつもすぐに回避できる体勢をとっている。いつもながら凄い反応だ。それを見た僕は安心して、攻撃に移れる。
セリナがそこでようやく攻撃を開始した。呪文を何か唱えてるようだけどアクセル中ははっきり言って何を言ってるかさっぱり分からない。アクセルの唯一とも言える弊害だ。だけど、ロボに飛んでいく魔法を見ると熱線魔法のようだ。
バジュッ!
魔法が当たった箇所を中心に一気に真っ赤になり、どろっと溶け出して貫通していく。だけど、熱線魔法は攻撃面積が非常に狭いのでロボ相手には足止めにもならないようだった。でも熱線魔法が効くのならどこかにあるメインコンピュータを狙えば一気に仕留められるはずだ。
「ボール・アイス! ボール・ファイア!」
「ボールシュート!」
ミミが接近戦を仕掛けているので頭部を狙って球魔法を撃ち込む。当たらなくても牽制になればそれで良い。案の定回避するロボ。ところがどっこい! ほろりと先程出しておいたアタックオプションが回避したボールをロボに反射させる。
ゴバッゴギィィン!
何か浮いているのは分かっていただろうけど、まさか魔法を反射するとは思っていなかったようで、咄嗟には避け切れなかったようだ。そして、体勢を崩したロボにミミが迫る。執拗に足を狙って斬りつけていたが、ここで膝をおったロボに飛び乗り腕を攻撃しながら反動でさらに上へ。胸部、腕部、胸部、肩、頭部と連撃を一気に決める。その姿は重力の存在を全く感じさせない優美なものであり持っているものが剣でなければ、天女が舞を舞ってるようにしか見えない美しさがあった。
だが、実際はロボへの威力の篭った斬撃。
僕が作った一瞬の隙でここまで攻撃を決めてしまうミミ。そして止めと言わんばかりに頭部からひらりと降りたミミを庇うように、ロボの頭部に熱線魔法が突き刺さった。
「エンド」
ゴシャァアアアアン!
そして、戦闘は終了した。
アクセル中の魔法は目をつぶってください。他の人が聞くときっと高速すぎて
聞き取れないと思います。でも、正しい詠唱と術式と魔力を流し込むと言う
プロセスをちゃんと踏むので発動するのです。きっと。