グッドラック
勇者。
よくある物語の中の英雄。弱気を助け強気をくじく正義の味方、みんなの憧れ。誰もが勇者になりたがる。だけど選ばれたごくごくわずかな人間にしか成れない。そんな存在。
「だけど、これは無いよなぁ」
100ゴールドで買わされたボロボロの剣。剣身はところどころ歯毀れしていて、切れ味なんて無いに等しく、剣と柄の部分との結合もガタガタで正直、本気で振ったらすっ飛んでいきそうなぐらい、おかしくなっている。あー、良く見ればこれゆがんでるねぇ・・・
試しに使ってみたけど、頑丈なのは頑丈だ。だけど、あまりの酷さに結局魔法使ったし。
勇者の剣とか言ってたけど、リュートが使ってただけで勝手にそう言ってただけなんだろうなぁ。王様から貰ったにしてはひどい有様だし。でも、ここまで手入れもせずに使い潰さなくても良いのにと思う。リュートってにこやかに笑ってて、すごい良い人に見えたけど、物使いが荒い人なんだろうなぁ。この剣が可哀想になってきたよ。
よぉし、ちょっと手入れしようか!
勇者の剣に魔力を流し込んで、状態を調べる。うわー、剣の端っこの方は細かいヒビだらけなのに、良く折れたり欠けたりしないもんだなぁ、これ。こんな扱いを受けるなんて酷いよなぁ。まったく。今から綺麗にしてやるからな。
剣身の細かいヒビを徐々に埋めていく。溶かしながら隙間を埋め、固さを調整する。素材をあまり固くしすぎてもぱっきり折れちゃうだろうし、すこし粘りのある感じにして簡単には折れないようにする。あ、でも中心と外側で固さを変えるほうが良いかな?
慎重に魔力を操作し、丁寧に修理していく。ようしもう少しだぞー。
だけどあと少しで、全部が直るところでそれは起こった。
バシュッ!
と、大きな音を立てたかと思うと勇者の剣は一気に形を崩して、一個の鉄の塊と化した勇者の剣。
「え、なんでぇ!?」
慎重に魔力を流して修理していたのに、頑丈さが売りなはずなのになんで一気にこんな事に・・・と、思っていたら今度は急に鉄の塊が形を変えてブレスレットの形になり僕の腕に収まった。
「うっ!?」
「コージ、どうしたんですか?」
「どうしたのぉ!?」
ブレスレットが腕にはまった途端、このブレスレット、いや勇者の武器の使い方が分かるようになった。このブレスレットの名前は「グッドラック」本当に勇者の武器らしい。剣の形だったのは前の勇者が剣しか使えなかったので、その形で固定されていたらしい。そして物凄く頑丈だったのは、前の勇者は恐ろしい程の力持ちで、勇者の力に耐えられる剣が無かったみたい。その為、「グッドラック」は勇者の力に耐えられる剣になり、おかげで全力が出せるようになった勇者はどんな敵でも、粉砕していったようだ。
で、この武器はイメージした武器を使用者の魔力を使って具現化できるアイテムなようだ。単純に頑丈な剣と願うと頑丈な剣がでるし、「ノーミス」が出ろって念じると本当に「ノーミス」が出てくる。細かい設計を考えてあげると忠実にそれを再現してくれるし、出せる武器は一個だけではなく、二個でも三個でも一瞬で具現化してくれる。試しに神話に出てきた武器を出したりしたけど、それっぽい物がちゃんと出てきてくれた。しかも、本体はブレスレットのままなので武器だとは誰にも分からない。取り上げられる事も無いだろう。念のため、外れるか確認したけど僕以外は誰も外せなかった。
でも、ブレスレットの形が本来の形っぽいのに、なんで剣の形になってたんだろ? 魔力を持ってない人間が使うとブレスレットが変形しないと使えないって事なんだろうか? まぁなんにせよ、僕には非常に相性が良い武器なのは間違いないね。うん。ぷふっ
「あはは、いやぁこんな凄い物が100ゴールドなんて安い、安いよ!」
思わず笑みがこぼれてしまう僕。「ギル」に愛着が無いかと言えばそんな事はないけども、こんなに凄い武器がただみたいなもので手に入ったんだから自然と笑ってしまうよね。
「良かったですね、コージ」
「良かったねぇ」
「グッドラック」の説明をした途端みんな笑顔になった。
だって、リュートに渡した「ギル」はカートリッジ方式だから、カートリッジの魔力が無くなれば使えなくなってタダの棒キレと変わらなくなる。もし、戦闘中にそんな事になったら大変だろうけど、仲間が居るからきっと大丈夫だと思う。そして、僕に押し付けたこの「グッドラック」には魔力切れで武器が使えなくなるとかそんな事が無い。僕が使えば銃だろうと剣だろうと槍だろうといつでもアーティファクト級の武器を新品で取り出す事が出来る。勿論、ブレスレットに仕舞う事もできる。
どっちがお得であるか、考えるまでも無いだろう。勇者の剣の本当の姿を知らずにみすみす安値で渡しちゃうなんてね。もうほんとにこれは。
「これが因果応報、自業自得なんだねぇ、コージッ」
そうそう。リュート達が悪い事をしすぎで、こんな大損しちゃったんだよ。僕たちは棚からボタモチ的に良い事が起きたけどね。
「とりあえず、ブレスレットになっちゃったし勇者の剣を返せと言われても、知らぬ存ぜぬで通せるね」
「まぁ、正当に買った物ですから文句言えないでしょうね」
うふふと笑うセリナ。
「よぉし、それじゃあ今度は「グッドラック」のテストと行きますか~!」
「はーい」
「はぁい」
「はいはーい」