ハイテンション
ミミ達と合流した後は、ファラスさん達が用意していた逃走ルートを使う事ですんなりと牢獄から脱出する事ができた。
ファラスさん達も牢屋に用事があったようで、任務も無事こなせたようだ。どうも、捕まってた王様を探しに来たらしいんだけど、王様は自力でどうにか脱出してたらしい。さすが庶民派の王様、パワフルだなぁ。
お城から少し離れてようやく落ち着いて話をする事ができた。
最初、ファラスさん達は任務を達成するべく王宮に忍び込んだらしい。それで牢獄の周辺をうろついている内に、牢屋に捕まってたはずの王様の姿が見えないのでどうしたものかと思案していたところ、騒がしくなってきたそうだ。兵士達の話を盗み聞くと、どうもヒロコと僕が捕まった所が王様が逃げたルートと合致するらしく、僕達が逃走を手助けした犯人と思われて、尋問しようとしていたらしい。なので急遽助けに来てくれたそうだ。
「ほんと助かりました、ありがとうございます」
あやうく、兵士達の群れと鉢合わせするところだったようだ。で、早速で悪いんだけどロバスに戻らないと駄目な事をお願いしなきゃ。
「僕、急いでロバスに戻らないと駄目なんです」
「まぁ、私たちも用は済んだことだし早急に戻るつもりだけどね」
「そこで1つ提案があるんですが、聞いて貰えます?」
「ん?」
趣味と実益を兼ねた逃走方法を選択しよう。ちょっとぐらい無茶しなきゃ駄目だよねっ。
ギュイィイイイイイイイイイイイイイイィイィィィ・・・・・・
ホワイトファングに乗ってから、ガイアフレームに無性に乗りたくなった。ホワイトファングに乗る前は、憧れだけで済んだんだけど一度乗ってしまうとやっぱり中毒になるよね!
「お、おい。本当にこれで大丈夫なのか・・・?」
「大丈夫、大丈夫! むしろ病みつきになるよ!」
なにかはっちゃけちゃった僕は、ガイアフレームの販売店に押し入り、頑丈そうなガイアフレームを強奪。一応、代金代わりに素材は置いてきたけども。そのせいで少し慌しくなったけどロバスに行くにはこれが一番早いんだ。
そうガイアフレームで、空を飛んで行くのが。
「飛行ユニットなんて聞いた事ないんですけど、これどうなるんです?」
「勢い良くすっとんで行きますよ!」
前からガイアフレームで空を飛びたいと考えてた僕は、飛行ユニットを考えていた。背面から胴体を抱え込むように装着部を取り付け、翼とエンジンを着けた物だ。ジェットエンジンならぬ炎魔法エンジンと言うべき物を左右に二基ずつ装備し、機動性を増す為に可動部を取り付け垂直離着陸も可能としている。ただ僕以外には、頼りない板がちょいと付いてるだけなので飛べるようになるとは全く思えないだろう。
「エレメンタルフレア! 発進!」
ゴッ!!!!!!
即席で付けた名前を叫び、虚空へと飛び立つガイアフレーム。もとい空を飛ぶからスカイフレームとでも言うべきかな?
「う、浮いてる?!」
「・・・」
「うわぁ、すごく魔力消費してますねこれ。大丈夫ですか?」
「おー、飛びそう飛ぶぞ飛んでるぞぉ!」
「わぁ、すごぉい!」
コックピットの中は人で一杯だ。ハッチを開けて飛んでるから、風もびゅうびゅう入ってくるし。機体前方に結界張らないと大変な事になりそうだ。
手元のコントローラーを操作し、急上昇した後水平飛行へと移行する。セリナが呟いていた通り、スカイフレームは魔力の消費が激しいのだ。いま付けてる翼の浮力なんてたいした事はないと思うけど、少しは魔力の消費を抑えられるのだ。
「よぉし、このまま南東に向かって飛べばロバスに着けるけど、どれぐらいかなぁ」
行きは馬車だったけど、街道は結構くねくねしてるから、二週間ぐらい時間が掛かったんだよね。空だとまっすぐ飛べるから、関係ない。スピードも段違いだしね。たぶん本気だして飛べば1時間もかからないはずだ。抑えて飛んでも2時間ぐらいかも。
「たぶん、2時間ぐらいかかるからトイレとか気分悪くなったら教えてね!」
僕? 僕は空飛んでるからテンション上がって何時間でも行けそうなのです。よし、待っててね、母さん。
ゴォオォオオオオンンッ・・・・・・・ッォォ・・・・・・ン
薄暗い森の中を疾走する男女を乗せた馬の頭上をガイアフレームが飛び去って行く。
「ありゃあなんだ? おまえは何か知ってるか?」
大音量を響かせ一瞬で飛び去ったガイアフレームを、不思議そうに見つめ一緒に乗っている少女に尋ねる男性。
「こっちの世界の事なんてぜーんぜん知りませんよぉだ。それより、こっちに来てからの話をきりきり話してくださいね。主に女性関係を。・・・時間はたっぷりあるんですしね?」
にっこりと笑ってる少女。でも目が笑ってない。
「いや、向こうであいつが好きそうなもので何か・・・だから、牢でも話しただろ? 女性とは何もな・・・ちょっ信じて本当だから信じてぇえええええ!?」
あ、男が馬から落ちた。南無。