色々やってみよう
タタ村へ来て、2週間が経った。
色々と試すうちに、僕はかなり特殊だというのが分かった。まぁ、異世界に来ちゃった訳だし、普通じゃないとは思うけどね。
まず、魔法の力がでたらめだった。
ゲームやアニメ、漫画や小説の魔法や能力を僕は使うことができる。さらにこの世界の魔法であっても、見たものであれば簡単に真似できる。さらに魔法の改良や開発までできた。
で、調子に乗って魔法を試していたんだけど、僕が生き物を倒すと不思議な現象が起こる。
森の狼が村の家畜を襲ってきたので、魔法で反撃したんだけど急な事で手加減ができなくて、凄く威力のある魔法を撃っちゃったんだ。
狙いたがわず狼に命中したんだけど、ポンという音ともに何故かアイコンみたいな物が浮かびあがりこう書いてあった。
「魂を世界に還してアイテムを取得しますか?
ブラウンウルフ(Lv15)を仲間にしますか?
召還カードにしますか?」
何か色々なゲームが混じってる・・・ とりあえず、アイテムを貰って見たんだけど綺麗なエフェクトと共に、アイテム(毛皮と牙と肉)がポトッと落ちてきた。
でも、こんな事ができるのは僕だけみたい。アイコンは他の人にはまったく見えないらしく、この世界はアイコンで色々できるんですねーとか言ったら怪訝な顔されたし。
狩ってきた動物を血抜きしてから、さばいたりしていたし。
これは不思議すぎるので、ジャンさんだけには教えたんだけど、やっぱりジャンさんもこんな現象は見たことがないらしい。ただ、王都のほうにはそういった事ができる人もいるかもしれないとは言っていた。
王都グレイトエース。
バルトス王国の首都であるグレイトエースには、タタ村からは馬車で向かって半月ほどかかる場所にあるらしい。結構時間がかかるし、そんなに距離があるとなると道案内できる人が居ないとたぶん辿り着けない気がする。
あとロボット。
意外な事にタタ村にもロボットがあった。
とは言っても、ゴーレムに毛が生えたみたいな簡単な奴だったけども。
なんかゴーレムに精霊さんを憑依させて、それに乗り込んで動かすらしい。土木作業や農作業に向いてる。戦闘とかには使えない事もないけど、やっぱり不向きみたいだ。
この世界にちゃんとしたロボット(ゴーレムもどきじゃない奴で、ガイアフレームって言うのがあるらしい)があるので、ガイアフレームを使えるようになりたい。勿論、自分好みに色々改造もしたい。なので、ガイアフレームの開発で有名な都市ロバスを目指そうと思う。こちらはタタ村から馬車で1週間で行ける距離らしい。ガイアフレームを色々と見て回って手に入れた方が色々と都合が良いと思うし。
「あとは煮込んで完成なのでーす」
ジャンさんのお家にお世話になっているので、家事をさせて貰っている。
男の1人暮らしというだけあって、いやぁ凄い散らかりようでした。整理整頓がなっていなくて、ジャンさんにしか物の場所が分からない始末。なので、分類ごとに物をまとめて棚に分かりやすいように収納しました。あと、家具のレイアウトが家事をするのに動線が悪かったので、レイアウト変更。食器棚や収納棚などを邪魔にならない、かつ、視界をさえぎらないように配置して、見違えるように広く見えるようになり家事もしやすくなった。
そして、今カレーなぞを作っております。調味料とかはどうしたって? ある物はこちらの世界のものを流用して、無い物は魔法で作っちゃった。お米はあんまり食べないみたいなんだよねぇこっちって。ナンもどきを作って食べてもおいしいんだけどね。
「カレーッ♪ カレーッ♪」
ヒロコが嬉しそうに、食卓で騒いでいる。ヒロコも料理はできる(意外)んだけども
カレーは僕が作るのが一番おいしいらしいので、僕が作ってる。
でも、この2週間で3回も作るとか多すぎると思うんだ・・・
「いい匂いだねぇ。コージ君の作るカレーは本当に楽しみだよ。あと、セリナももうすぐ来ると思うよ」
狩りで使う弓矢などの手入れを終えたジャンさんがそう言いながら、リビングに入ってきた。僕がジャンさんの家にお世話になってからこっちセリナさんも夕飯を一緒にとっている。
「こんばんはー」
どうやらセリナさんが来たみたいだ。
「それでは、コージさんは来週にはロバスに行かれるんですか?」
若干不機嫌そうに聞いてくるセリナさん。ひとつ年上と聞いていたけど少しむくれた顔を見ると年下にも見える。
「うーん、そろそろ動かないとやっぱりまずいと思うんだ」
勿論、母さんを探し出さないとね。無事なら向こうも動いてそうだし。
「まだ、ぜんぜん魔法教えて貰ってないのに・・・」
そうは言っても、僕の知ってる魔法のほとんどが他人には教えられないと思う。
「でもマスターの魔法って、普通じゃないから使うのは難しいんじゃないかなぁ?」
3杯目のおかわりを平然と食べてる精霊のはずのヒロコ。もっと遠慮しようよ。
「うー・・・」
セリナさんは魔法オタクみたいな所があるみたいで、事あるごとに魔法を教えろーと僕にせがんできていたので、かなりご不満のようだ。
「えっと、これ渡しておくから我慢してよ、ね?」
と言って携帯電話を差し出す。
「なんですか、これ?」
携帯電話って見た目からして綺麗だからマジックアイテムに見えないこともない。
「僕特製の会話できるマジックアイテムってところかな」
こっちに来る時に持ってた携帯電話を、コピーして中身をごっそり交換して通話できるようにした魔改造版の携帯電話なのだ。ちなみに電力じゃなく魔力で動く。
「これでコージさんと何時でもお話できるってことですか?」
若干嬉しそうなセリナさん。
「そうです、ちょっと試しましょうか」
ピピピと番号を押して、セリナさんの電話に掛ける。
ピリリリリリ!
「ひゃっ!? 何っ?!」
いきなり鳴り出した携帯電話を取り落としそうになるセリナさん。
「蓋を開いて、緑のボタンを押してもらえますか?」
「う、うん」
「もしもし」
と言っても近いから良くわかってないみたい。なので、小走りに家の外に出て見る。
「聞こえますか? セリナさん」
「は、はい聞こえますよコージさん。凄いですねこれ」
すごく驚いてるのが電話越しでもわかる。
「これ魔力で動くマジックアイテムなんで、使いすぎると気絶しちゃいますから注意してくださいね?」
「はい、分かりました。これでいつでも教えて貰えますね~」
「まぁできるかぎりはそうしますけどね。でも電話に出れない時もあるんで怒らないでくださいねセリナさん」
電話のお試しができたので、家の中に戻る。
「なるべく出るようにして下さいね?」
にこっと笑顔でお願いしてくるセリナさん。可愛いは正義だね。うん。
「というわけで、ジャンさんにも携帯渡しておきますね」
とセリナさんとは色違いの携帯を手渡す。
村から僕が居なくなっても、こういった通信手段は重要だと思うからジャンさんの分も作っておいたのだ。
「あ、僕の分もあるのかい? いやぁありがとうコージ君」
カレーを堪能していたジャンさんは、自分の分は無いだろうと思っていたみたいで若干驚いた顔をしてお礼を言ってきた。
「詳しい使い方は、この水晶に吹き込んで置いたので見ておいて下さいね」
水晶に映像を記録してビデオ代わりに使っているのだ。これ超便利。
こういった感じで、便利グッズを色々作っている僕。
作り方は至って簡単。魔力を練って、具体的にどういう機能をさせるかをイメージすると、
必要な物が頭の中に浮かんでくる。あとはそれをイメージして組み立てるとそれっぽい物ができあがる。
とはいっても、あまり便利な物を作りすぎるとこの世界のバランスがおかしくなるかなーとか、目立って危ない人に目をつけられないかなーとか思うので、やりすぎないように注意はしている。あと、僕の魔法は凄く異質だから、分からないように魔法を改良しておかないとね。
それはともかくとして。
「行くぞロバス!ゲットだぜガイアフレーム!」
「ロボット好きだねぇーマスターは」
仕方ないでしょ、ロボット好きなんだから。