表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
機甲都市ロバス
33/293

ファラスの疑念

 ガタゴトと時折大きく揺れながら馬車は王都目指して進む。このロバスの馬車は妙な感じでハイテクなのである。御者の替わりに何か音がでるマジックアイテムがくっついていて、音にあわせて馬が動くみたいだ。勿論、目的地まで自動で進むので迷うことも無い。なのでロバスの馬車は御者いらずとなっている。


ロバスを出て約一週間。今のところ大きな襲撃とかはなく至って順調に馬車は進んでいた。


「あーあぁ・・・学園って楽しみだったのになぁ・・・」


ぽそりとミミがそんな事を呟いた。そう言えばみんなで学園に行こうって話しだったよね。


「ごめんなミミ。でも、また帰ってきて落ち着いてから学園に行けば良いし、なんだったら王都で学校に行くのも良いと思う。みんなで行けばどこだってきっと楽しいよ、うん」

「うん、そうだよね。我侭言ってごめんね、コージ」


ミミ、我慢するね。と健気な様子のミミ。で、何かを期待するかのようにじっと上目遣いでこっちを見るので、ミミの頭をぽんと叩いてから撫でておいた。すごく毛質が細くて撫でると凄く気持ちが良い髪なんだよねぇ。


「マスター、ヒロコも我慢してるよ~」

「わ、わたしもです」


とか考えてたら、二人にも催促された。・・・あれ? 馬車が止まった。今日はここで野営するのかな?


「今日はここらで野営しましょう。ここから先に進むと少し危険ですからね」


と言って、外にでていくファラスさんとエリツォーネさん。こんな感じでずっと二人は本当の護衛のように良く動いている。やらなくて良いと言われてるけど僕も少しぐらい手伝おう。ぶーぶー文句言ってる二人は置いて行こう。


「手伝います。枯れ木探してくれば良いです?」

「本当に手伝わなくていいのに、君も強情だねぇ。まぁ、一緒に行くとしましょうか」

「はい」


女の子達はエリツォーネさんと一緒に食事の準備をしているようだ。


「コージ君、ちょっと尋ねたい事があるんだけど良いかな?」

「なんでしょう?」


今日は珍しいなぁ。何を聞きたいんだろ?


「最初は思い違いかと思ってたんだけど、君と一緒にいるミミという娘なんだが彼女の素性は知ってるのかい?」

「ミミですか? 彼女は貴族に無理やり攫われてた所をたまたま僕が助けたんですけど、帰る家が無いらしいので、一緒に居るんですけど」


今では可愛い妹です。年上だけど。


「いや、彼女には帰る家はある」


あ、やっぱりそうなんだ。でもきっと訳ありなんだろうな。


「ミミ=テスタロッサ、それが彼女の名前だ」


なんかカッコイイ名前だなぁ。





「ミミ=テスタロッサ、それが彼女の名前だ」


コージを探しに林の奥へ入った時、ミミの名前が聞こえた。声がした方を見るとコージと男の人が居た。コージに知られちゃったぁ・・・


「なんか、かっこいい名前ですねぇ、テスタロッサって」


でも、名前を知ってもコージは相変わらずコージだった。


「そんなに暢気な事を言ってる場合じゃないんだ。彼女は忌み子だ。噂では悪魔の力が乗り移った魔女という話だ」


あ・・・そうだよね、ミミって変な光が見えるからそんな風に言われてたんだっけ。


「魔女ってミミがですか? そんなの有り得ませんよ。変な事言わないで下さいよ、もう」


あれ? なんかコージが怒ってる・・・? 魔女って言われてたの黙ってたからかな?


「あれは危険なんだ。危険だと言う事で処刑しようとすれば全て避けたらしい。しかも目隠しをしているのに関わらずだ。その上、代々高名な騎士しか輩出してなかった家なのに彼女には魔力がある。なので何をしても死ななかったそうだ」


なんでそんな事コージに言うの? そっとしといてよぉ・・・


「あんな小さな子を処刑って・・・ 怖い所ですね。それに魔力があるのは結構な事じゃないですか。なんで怖がるのか訳がわからないですよ」


「普通に魔術を唱えられるなら問題ないさ。だが、彼女は魔力があるのにも関わらず、一切魔法を唱えることができなかったのだ。この旅でも、彼女から魔力が感じられるのにも係わらず、まったくと言って良いほど魔法を唱えることをしなかった。魔力があれば誰であれ唱えられる筈の魔法をだぞ。魔に魅入られて魔族になりかかっている人間ぐらいだ、そんな事になるのは」


魔法なんて教えて貰ってない。だから魔法なんて唱えられる訳ないもん・・・


「それに・・・」

「もういいです、これ以上ミミの悪口は止めてくれませんか?」


気付くとコージは物凄く怒っていた。体中から赤黒い光が漏れてくるほどに。そんなコージを見て男の人は、怯えていた。


「絶対、ミミの前で今の話をしないでくださいね? 良いですね」

「・・・分かった。だが、何かあったら・・・」

「そんな事はありません、絶対に」


自信たっぷりにそう言ってくれるコージは、すごくかっこよかった。





あーもう、むしゃくしゃするー!

ミミが魔女とか魔族とか、一体どっちやねーん! ってすっごくツッコミたかったわぃ!

なんかエセ関西弁が出るぐらいおかしくなっちゃうよ、もう。こんな時こそ深呼吸。


すーはー


ミミが帰る家がないって言ったのは、帰ったら処刑されるからだったんだ・・・処刑なんかされるようだから、相当ひどい事されたんだろうなぁ。そんなの全然わかんなかった。確かにちょっと人見知りなところがあって、慣れてる人には甘えん坊なのに、普段はすっごく臆病なミミ。でも構ってあげたり一緒にいると嬉しそうに笑うミミ。何か訳ありだろうなぁとは思ったけど、これはヘビーだなぁ、まったく。


あれだね、ミミが魔族とか何かの間違いだね、うん。魔力があるのに魔法が唱えられないってきっと魔法を教えて貰ってないから無理なんだよ! ミミみたいな小さな子を処刑とかいうぐらいの家だから、きっと家でいじめられてて、魔法を教えて貰ってないのに、教えたって嘘をつかれて魔族扱いされたんだよ、きっと。


だから、僕がミミに魔法を教えれば何も問題なし! なのである。




代々高名な騎士を輩出してきたテスタロッサ家も、腐ってきてるようです。


ミミが魔法を使わない原因を看破したコージ君。鋭すぎる。

だけど、教える魔法がコージの魔法だと、無理じゃね? セリナでも無理だし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ