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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
機甲都市ロバス
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クリムゾン

 うすぐらい室内に入ると、ほのかにひんやりとしていて、すごし易い感じだった。


「ここは、魔法を研究している施設なんですよ」

「あぁ、なるほどぉ。それでセリナがよく通ってたんだねぇ」

「はい。魔法が好きですから・・・もちろんコージも」


「ん? 何か言った?」

「いいえぇ、別に~」


何か小声で言ってたみたいなんだけどなぁ。でも、魔法を研究している施設っていうだけあって、魔術師を結構見かける。なんか、魔術師って塔に篭って1人きりで研究してる偏屈な人っていうイメージがあるんだけど、ここだとなんか学校みたいな感じだ。魔術師は生徒さんみたいな。


「で、わたしはここで研究した成果を色々と発表しているので、顔がきくんですよ」


レッドベアを1人で倒した手並みといい、貴族の屋敷で見せた動きといい、セリナはやっぱり凄い魔術師みたいだ。僕と1つしか変わらないのに色々してるんだなぁ~


「お、クリムゾンここに居たか、久しぶりだな」


向こうからやってきた、金髪ロン毛の背の高いお兄さんがそう言ってセリナを見ている。


「・・・クリムゾンって?」

「わたしは、タタ村のセリナです。その呼び方は止めてくださいトレイル」

「手厳しいねぇ。レイって呼んでくれって言ってるじゃないか」


と肩を竦めるトレイルさん? レイさん?


「で、なんの御用ですか?」

「あぁ、君に召集が掛かってるみたいだよ。さっき、上の連中が探しに来てた」

「ん? なんでしょうね? とりあえず顔を出してきますね、コージ」

「うん分かった」


なぜかトレイルって人から逃げるようにして、セリナは奥へと消えて行った。


「さて、自己紹介が必要かな?君・・・?」


なんか、いちいち綺麗にポーズが決まる人だなぁ。ちょっと羨ましい。


「どうも初めまして。僕はコージ=ヒロセです。ちなみに16歳です」

「こちらこそ初めまして、いきなり変なところを見せて申し訳ない。私はレイモンド=トレイル。ここで研究員をしてる者だ」


にかっと笑うトレイルさん。人懐っこそうな人だ。そして綺麗に決まるポーズ。


「早速なんだけど、クリムゾン・・・もといセリナとはどういう関係なんだい?」

「一緒に旅をしてる仲間なんです。彼女にはいつも助けられてます」

「え、彼女と一緒に旅してるのかい? それは凄いねぇ。あの鉄面皮と一緒で良く胃に穴が空かないねぇ」

「え?」

「いやいや、なんでもないなんでもない。ところで、ここに連れてこられたって事は魔法に興味があるのかい?」

「はい、僕も多少使えるのでこういった所は非常に興味があります」

「だったら、良い所に連れていってあげよう」


こっちだよーと、無駄に綺麗なポーズで僕を手招きするトレイルさん。


「彼女はね、今まで誰もできなかった魔法の強化を成し遂げたんだ。彼女が炎系の魔法が得意なのは知ってるかい?」

「はい、よく炎系の魔法を使ってますね」

「見たことがあるなら、話しが早い。何の魔法を唱えてた?」

「バーンウォールだったかな? あとバーンピラー?」

「なるほどなるほど。じゃあ私が唱えるから見てて」


「“炎よ! 我が前に踊りて其をしめせ! バーンウォール!」


ゴォッ!


激しい勢いで炎の壁が現れる。だけど、セリナが使ってたのより薄いなぁ。と思ってるとすっと炎の壁は掻き消えてしまった。あれ?30秒ぐらいでお終いなの?


「とまぁ、普通に唱えるとこんな感じなんだ。あ、ちなみにこれでも私は一流と言っても差し支えない使い手だよ」


おーそうなんだ。あれ? でも、そうなるとセリナって規格外なんじゃない?


「ふふ。気付いたようだね。彼女は恐ろしいまでの炎の使い手なんだよ。あと、呪文も僕のとは少し違ってると思う。私が彼女と同じ呪文を唱えても確かに炎の壁は出るんだけど、5秒と持たない魔法になってしまうんだ。まぁ威力は段違いなんだけどね」


セリナは“炎よ”って三回言ってたけど、あれって意味のある言葉だったんだねぇ。気分を盛り上げる為のものかなぁって勝手に思っててごめんセリナ。


「まぁ他にもあるんだけど、基本的に炎の魔法の改良について彼女は色々と研究を重ねているんだ。他には、身振りと手振りで術式を構築して魔法を唱える方法かな。」


あぁ、あれね。静かに魔法を唱えられるから不意打ちに使えるよねあれ。


「むむ、それも知ってるのかい? 彼女がそこまで君に手の内を見せてるとは驚きだねぇ」

「教えてって言ったら、全部教えてくれましたよ? 家に術式とか呪文とか書き記した物がたくさんありましたし」


セリナが色々見せてくれたおかげでこの世界の魔法を覚えられたんだよね。セリナありがとう。


「ますます、君に興味が沸くねぇ。ところで君はどの系統が得意なんだい?」

「えっとぉ・・・」


なんて言おうか迷っていると、セリナが凄い勢いで僕の所へやって来た。


「こんな所に居たんですねコージ。すこし助けて欲しい事があるんですけど良いですか?」

「え、うん。一体どうしたのセリナ?」

「ありがとうコージ。付いて来て貰えますか?」


とにっこり笑顔でお願いしてくるセリナ。


「ついでにあなたもです。トレイル」


と思ったらトレイルさんには、すっごい仏頂面。同一人物? ってぐらいの変わりようだ。


「は? 私もかい?はてさて一体何があるのやら?」


僕とセリナのやり取りをぽかんとした顔で見つめていたトレイルさんだったけど、セリナに呼ばれて、にやりと凄く悪そうな笑顔をしていた。綺麗なポーズもしてた。


ほんと、凄いけど無駄な才能・・・だよね?



良い所ってどこだったんだろ?

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