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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
異世界
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タタ村

 そんなこんなしている内に、タタ村の入り口が見えてきた。

入り口っていうか、民家がちらほら見えてきただけなんだけどね。なんとなくここらへんから村だよーって人が住んでる雰囲気が漂ってくる。


 はてさて、どうしたもんかなぁと悩んでいると横から声をかけられた。


「あら、こんにちは。タタ村へようこそ。今日はこちらでお泊りですか?」

 

 綺麗な栗色の髪を頭巾におさめた、くりくりと良く動く黒目の女の子がいた。


「えっと、泊まりたいといえば泊まりたいんですけど、お金が無いんで仕事が無いか立ち寄ったんです」


 とにかく、この村でお金を稼ぐなり食べ物を調達しないことには、にっちもさっちもいかない。ちなみに「二進も三進も」と書く。どうでもいいか。


「え、そんな軽装でここまで来たのにお金がないんですか・・・? 失礼ですけどタタ村へはどういったご用向きで来られたんですか?」


 お金が無いと言った瞬間に、すっごく警戒されてしまった。でも、なにか出来ることを探して、お金を稼がないといけない。情けないかもしれないけれど、この娘に頼んでみよう。


「訳はいえないんですけど、気づいたらここに着の身着のまま飛ばされてて、帰ろうにもお金が無いんです。なんでもしますんで、しばらくここに居させて貰えないですか?」


 一応、魔法が使えるんで色々僕って便利なはず・・・だ。


「んー・・・とは言っても、うちの村もそんなに余裕があるわけじゃないし・・・」


 言外に無理よーといった口ぶりの女の子。だが、諦めるわけにはいかない!


「僕、魔法も使えますし役に立てると思うんです! ですから是非!」

「え、魔法が使えるんですか? それでしたら、色々して貰えることはありますけども・・・

でも危険な仕事もあるんですよ? 大丈夫です?」 


 むむむ、ゲームや漫画の便利な魔法を知っているとはいえ、使いこなせるかはまた別問題だしなぁ。でも、ここで怖気ついて逃げたら何も始まらないし!


「大丈夫です、これでも攻撃魔法とかは得意なんですよ!」


 知ってるのってそういうのがほとんどだし? ウソツイテナイヨウン。


「へぇ・・・」


 そう呟くと、何かを納得したようにうなづく少女。


「では、少しお待ちになって貰ってよろしいです? ええっと」

「あ、僕は廣世光司と言います。こっちっぽく言い直すと、コウジ・ヒロセかな? よろしくね」


 と、笑顔で自己紹介する。笑う角には福来るってね。


「あ、わ、わたしはセリナです。タタ村のセリナです。ちょっと待ってて下さいね」


少し慌てた感じで、少し奥にある民家のほうに駆け出すセリナちゃん。


「で、ヒロコはどうして隠れてるの?」


 セリナちゃんが居なくなったので、そう問いかける。


「ずっとここに居たよ、ボク」


 としれっと答えるヒロコ。にこにこ笑顔だが、騙されないぞっ。


「僕以外に見えないように、実体化を解いたよね? なんか理由があるのかと思って黙ってはいたけども」


 確かに僕からは見えてるんだけども、わずかではあるけど存在が希薄な感じになっている。


「むぅ、そんな事まで分かるのねぇ。とりあえず、この世界だと精霊ってあんまり姿を見せないものだから、ルールに沿ってみたわけだよ、うん」


 そういや、ヒロコって精霊だったか。なんの精霊かは良くわかんないけれど。


「でもそれだと、これから一緒に居るのに不便じゃない? ていうかヒロコが他の人に見えない時点で僕って怪しい人になっちゃうんだけども?」


 一人でずーっとぶつぶつ言ってるのって、ちょっとあれだよね・・・


「はいはい、わがままだなぁマスターは。じゃ、これからは普通にしとくねー」


 ちょこっと嬉しそうにそう言うヒロコ。実体化してるほうが良いなら、ルールとか気にしなくて良いと思うんだけどなぁ?


 そうこうしている内にセリナちゃんが、男性を連れて戻って来た。


「お待たせしました、コージさん。あれ? そちらの方は?」


「あ、ボクはマスターと一緒に旅してるヒロコって言います」


 言われてすぐにぴょこっとお辞儀をするヒロコ。


「えっと、わたしはセリナって言います。よろしくお願いしますね。で、こちらはジャンさん。タタ村で狩りをする際にリーダーをされている方です」


 と横にいるすごく落ち着いた感じの30代ぐらい?の男性を紹介してくれる。


「どうも、こんにちは。僕はコウジ・ヒロセと言います」

「はじめまして、コージ君、ヒロコさん。ジャンと言います。コージ君は魔法が得意と聞いたけど、どういった系統が得意なんですか?」


 丁寧にゆっくりとした口調で語りかけてくるジャンさん。声渋い、うらやましい。


「特にこれといって得意なのは無いですけど、どれも満遍なく使えます・・・よ?」


 こっちの世界だと限られた系統の魔法しか使えないのかな?


「・・・っと、それはすごいですね。少し使ってみて貰って宜しいですか?」


 ジャンさんが少し驚いた様子で、そうお願いしてきた。この反応を見るにやっぱり使える魔法は限られてるみたいだね。


「えっと、僕の魔法は少し特殊でして・・・見ても驚かないで下さいね?」


 ちょっとはりきって行ってみよう。


「ボール・ライト、ボール・ファイア、ボール・アクア、ボール・ウインドウ」


 適当に属性のあるボール魔法を打ち上げた。


 打ち上げたはいいけど、何を狙おっかなぁ? あ、あれなんか丁度よさそう。


「アローシュート!」


 少し離れたところにある大きな岩を目掛けて魔法を解き放つ。


 ヒュゴガッ!!!ゴォオオオオン!


 なんか、岩がふっとんじゃった。良いとこ見せようとはりきったせいかな?


「な、な、なん・・・これは驚いたねぇ・・・」


 かなり予想外だったようで、口をぽかんと開けたままのジャンさん。


「・・・・・・」


 セリナちゃんに至っては、声もでず目も口もすっごく大きくなってる。


「こんな感じですけど、どでしょ?」


 威力が強すぎてダメとか言われたらどうしよう・・・ ヒロコがすごく非難の眼差しを送ってくるのが心に痛い。僕だって加減がわかんないんだから仕方ないでしょ?


「いや、凄いね。見た事の無い魔法だけど申し分ない力だよ。ただ、獲物を狩る時は加減してもらわないと何も残らないからね。そこは気をつけようか」


 落ち着きを取り戻したらしいジャンさんは、そう僕に教えてくれた。確かに、消し炭にしちゃったらダメだよねぇ。反省。


「とりあえず、今日は僕のところにでも泊まって貰う事にしようかな、コージ君、ヒロコさん」

「え、いいんですか?」


 泊めてくれるのはありがたいけども、こんな簡単に僕らを信用しちゃって大丈夫?


「どうぞどうぞ。あまり快適とは言えませんけどね」


 男の一人暮らしなんで、とジャンさん。とりあえず、ご厄介になることにしよう。


「ありがとうございます。お世話になります」

「お世話になりま~す」


 よーし、頑張るぞ! 



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