会議はまとまらない
ロバスの中心にある塔「ティンラドール」その一角に、辺りの景色を一望できる豪勢な部屋があった。その部屋には、数名の男女が外の景色に気を取られる事なく、深刻な会議をしていた。
「で、王都でのクーデターは宰相ファウンデルス卿の主導で間違いないんですな?」
所々に赤いラインが入った長衣を羽織った、金髪の男性がそう確認した。
「ですね。私の方もそのように報告を受けております。ユージ陛下は投獄されてるとの事で存命のようです」
「生かさず殺さずで、傀儡にしてしまうつもりだろうが上手く行かないであろうな」
その言葉にテーブルについている面々から、微笑とも苦笑ともとれない笑いがさざめいた。
「それで、ロバスの方針としては如何いたすつもりか」
「わが都市は一都市とはいえ、フレームの所持数は他の都市の追随を許すものではない。いくら脅されようとクーデター派に恭順するなど有り得ない」
「とはいえ、全都市が力を合わせて攻めてくれば、たとえロバスといえどタダではすまん」
色々と意見がでるが、基本的には王党派、もしくは中立を守るという物でクーデタ派に協力しようと言う意見は全く無かった。
「ただ、このまま静観すれば隣国に攻められるのは間違いないでしょうなぁ」
宰相ファウンデルス卿は、隣国のハイローディス帝国との繋がりが噂されており、いつ同盟という名の侵略を開始されてもおかしくなかったのだ。そうなれば、たとえロバスであっても攻め落とされる事になるだろう。
「では、早急にユージ陛下を救出しクーデター派を打倒するのが最善かと」
「それには、クーデター派に恭順を示したと見せて王都に潜入工作員を派遣し、内密に救出する手が考えられますね」
「フレームの武力を背景にしているロバスが、簡単に恭順の意を示すのは逆に警戒されないだろうか?」
「となると、しばらくは保留にし時期を見て恭順の意を示すという事になりますが、日が経つにつれユージ陛下が存命している確立が低くなっていきますがね」
最善と思われる意見が出ても、即座に否定的な意見が出て来てしまい会議は右往左往してしまう。それぞれが納得できる理由も説明しているので、誰もが意見をまとめかねていた。
「このままでは埒が明かないのは承知の上だが、しばらくは静観する振りをし、その間にユージ陛下の調査隊を派遣して危ないようであれば即座に救出するという形で宜しいか?」
「そうですね、タタ村の神童も丁度来ているようですし、彼女も調査隊に加えましょう」
「決まりですね」
結局、ユージ陛下の命を最優先という事で会議はまとまり、ようやく会議は閉会した。
ロバスはとりあえず出入りが面倒くさい。いちいち門でチェックするのは安全の為だってのは分かるんだけど、今まで町の外に行って素材を集めて生計を立てていた僕としてはその手間が非常にめんどくさく感じるのだ。
「あ、それなら心配ないですよ。ロバスには地下に古代遺跡がありますから」
「え、なにそれ?」
セリナに門がめんどくさいと愚痴ったら、そんな答えが返ってきた。どうも、ロバスの地下にはかなり深い所に古代遺跡があり、そこにはモンスターもいれば機械生命体? のようなものもいるらしい。そして、ルーツはこの古代遺跡から発掘されたもので、非常に運がよければルーツもしくはそのパーツを見つけることができるらしい。なので、ある程度の強さの冒険者はロバスの古代遺跡を探索すれば、楽に生活していけるそうなのだ。
そして、ロバスには珍しい学園がある。勿論冒険者を育成する為の物で古代遺跡を利用して実地で色々なことを教えてくれるそうだ。この冒険者学園は、ロバスが出資していて入学して卒業するまでの学費が年間20ゴールド程度で良いそうだ。そこまで格安の理由として、優秀な冒険者を増やしいつまで経っても踏破できない古代遺跡を人海戦術で調べあげ、古代遺跡に眠っているはずのルーツやそのパーツを発掘し、ガイアフレームの発展の為に役立てるつもりだそうだ。
ミミは冒険者のような生き残る術を持ってない様に見えるので、学園に入学して何か手に職を持てるようになったら良いなと思う。勿論、僕やヒロコも一緒に入学しミミが寂しくないようにするつもりだ。
でも、とりあえず古代遺跡に入ってみてどの程度の物なのか確認して見ようと思った。
「セリナはどうする? 魔法の講義を受けに行ってくる?」
「うーん、そうですねぇ・・・ 古代遺跡に行くなら少しだけ待って貰えないです? ギルドで講義が何時あるか調べてきます」
「あ、わかった。じゃあ、ここで待ってるね」
「はい、行ってきます」
ていうか、セリナってそんなに魔法だけで、ガイアフレームと戦いたかったんだろうか? 見た目と違って意外と好戦的なセリナ。これこそギャップ萌えだよね。
「ミミ、ちょっと良い?」
「ん、何ぃ?」
「ミミって、ロバスの冒険者学園に入るつもりってある? なんか色々教えてくれるそうなんだけど」
セリナが出て行った後とりあえず、なんのひねりも無く聞いてみた。
「え、冒険者学園? お金ないから行きたくないなぁ」
「お金はなんとかするから大丈夫。もし行くなら、僕もヒロコも行こうかなって思うんだけど、どう?」
「え? なんでコージがお金だすの? それよりコージも一緒に行ってくれるって言うのは本当なのぉ?」
「勿論! あとお金も出すし、ヒロコも一緒にも行くよ。ね、」
「うん、マスターが行くなら行くよー」
「うーん・・・」
なんか凄く迷い出した。遠慮なんてしなくて良いのに。
「ね、ミミ」
「ん?」
「確かに僕は凄い借金あるけど、僕達が学校に行って暮らす位のお金は楽にあるんだよ?
ここに来るまで一杯モンスター狩ったのは知ってるでしょ?」
「うん、それは知ってるけども・・・」
「だから、遠慮なんかしないで欲しいんだ。なんせ僕はミミのお兄ちゃんだしね」
いや、年齢は僕の方が下なんだけどね。気持ち的にっていうか。
でも、僕がそういうとミミは一瞬目を見張ったかと思うと、顔を真っ赤にして小声で分かったと呟きながら頷いてくれたのだ。
「まぁ、すぐにって訳じゃないから安心して。とりあえず、学園に行くって事で。ヒロコも一緒に頑張ろうね」
「うん、マスター」
「えへへ、ありがとう」
えっと、何か忘れてる気がするけど・・・うーん・・・なんだろう?
ま、ミミが笑顔だからいっか!