あこがれのロバス
機甲都市ロバス
頻繁に現れる魔石獣を前に、必要に迫られて開発されたガイアフレーム。その最先端の技術を生み出す都市ロバス。常に魔石獣の脅威にさらされる事により、皮肉にも技術の革新が他の都市よりも数段上を行くようになり、フレームといえばロバスと言われるまでとなった。
ロバスは大変奇妙な形をしている。特徴的なのは都市の中心部に聳え立つ巨大な塔。その塔を中心に十字方向に広い、道と言うには余りにも広い通路があり、そのおかげで都市は4つのブロックに分かれているのだ。そして、分かれているブロックの外周部は魔石獣の襲撃を食い止める為にぐるりと、巨大な壁で囲われている。
巨大な塔の周辺は木も草も無く、見渡す限りの大地となっている。それもそのはず、その塔には常に魔石獣が寄り付き、荒れ狂い、そして朽ちていく場所だからだ。
今も目を凝らせば、塔の中から次々とフレームが出撃し、魔石獣に立ち向かう光景が見える。
魔石獣の数は10前後であろうか。それぞれ異なる種類の魔石獣が塔へと向かっている。あるものは、空から。ある物は陸から、そして地中からも塔へと進む。その様は誘蛾灯に惹かれる蛾の群れとなんら変わりない。
そう今やロバスは、わざと魔石獣を呼び寄せフレーム製作の試験と魔石獣狩りを兼ねる程までに強大になっているのだ。良いフレームがある所には、良いライダーが集まる。優秀なライダー達は、効率的な魔石獣の狩り方を知っていて、多少のハンデも物ともしない。そしてライダーによっては単機で魔石獣を倒す事もしばしば見かけられるのだ。
確かに魔石獣は脅威だ。塔が造られる以前は、群れで襲ってくる魔石獣が頻繁に都市に多大な被害を負わせていた。そして、魔石獣の習性を研究した結果、群れを作らせない様に魔石獣を誘き寄せる人の耳には聞こえない音を出す塔を造り、そこへ常に誘き寄せる事で、少しずつ魔石獣の数を間引き、魔石獣の脅威をコントロールしている。
魔石獣の被害から身を護り駆逐する為の技術が都市を発展させた。それが今、その技術は魔石獣の存在無しでは立ち行かぬ程までに魔石獣に依存していた。
そして、ロバスは今日も日夜休むことなくフレームを生み出し続けていた。
広葉樹が青々と生い茂る森の中。次第に木が少なくなっていき、見晴らしが良くなってくると、巨大な壁が遠くからでもはっきり見えてきた。
ヒューイックから旅をする事、おおよそ半月。ようやく、ロバスの外壁が見えてきたのだ。
「おー、やっとロバスかな? ロバスだよね! あの壁って!」
ガイアフレームの聖地ともいえる都市ロバス。都市を魔石獣と呼ばれる超巨大生物から護る為に造られたと言われる巨大な外壁。人の手で造っていれば10年以上はかかりそうな壁だが、ガイアフレームが作業をしているらしく相当な速さで外壁が造られたらしい。ていうか、ガイアフレームを建築作業に使用できる人間がたくさん居るっていう事の方が驚きだ。ブルドーザーとかクレーン車みたいな扱いだよねぇ。なんか生活に密着してる感じが、すごく萌える!
「ロバスは、4つのブロックに分かれているのですが地下に通路があるので、どこから入っても、大丈夫なようになっています。いま見えているのが南ブロックですね。真ん中からちょっと右寄りに見える白い所が人が入れる門になります」
セリナがそう説明してくれるのだが、とにかく外壁が大きすぎて、人が入れる門がまったく分からない。外壁が黒いので白く塗っているそこが、人専用の門というのが分かるけど、目印がなかったらきっと迷っていただろう。
とりあえず外壁が見えてきたので、光る浮き輪君はしまっておく。
ここまでの道中で、色々なモンスターを狩れたので素材は結構色々ある。換金する素材が豊富にあるので、借金はあるけどロバスで4人で生活する分には充分だ。
「とりあえず、ゆっくりできる宿を確保してから、どうするか考えよっか」
「ミミは、都市は怖いから宿から出たくないなぁ・・・」
ミミはニートみたいな事言ってるなぁ。
「わたしは、魔法の講義を受けておきたいですねぇ。ロバスにはガイアフレームと戦う時の魔法講座が唯一ある都市ですし」
そんな危険な講座があるんだ、ここは。だから貴族の屋敷でガイアフレームに向かってくる魔術師達がたくさん居たのか。道理で厄介だったわけだよ・・・
「ボクは、人が多すぎる所は苦手だなぁ、マスター・・・」
ヒロコは精霊だからか、自然の中で居る方が好きなようだ。でも、ヒューイックの町は結構楽しんでたよね? あの町ぐらいの人口なら平気って事なのかな?
「まぁまぁ。セリナ以外はロバスに行った事無いんだよねぇ? とりあえず、中に入ってから決めた方が良いと思うよ」
意外と凄く気に入るかもしれないしね。特にヒロコは珍しい物も大好きだから。まぁ、ガイアフレームが造られている都市だから僕は絶対気に入る自信はある!
きっとこれだけ大きな都市だと、中古のガイアフレームとかジャンク屋とかがあって、さらには自作ガイアフレームキットとかあるかもしれない・・・ え? パソコンじゃないからそんなのは無理って? まぁ期待するのはタダなんだから、良いの良いの。
そんな事を考えていると門が近づき、ようやくロバスへと到着したのであった。