破廉恥野郎!
セリナを助け出した後、馬車を奪って屋敷から逃走。屋敷に居た人間には、大掛かりな陣を用いて、僕たちの記憶をあいまいにする魔法を唱えた。陣自体も隠蔽してあるので、見つかる事は無いと思うけど、僕たちの事を覚えてるかどうかの確認はできないので少しだけ不安だ。漫画ではうまくいってたから大丈夫、と信じよう。
攫われた女の子は、馬車で家まで送って上げた。でも1人だけ、ミミという名のツインテールの女の子は帰る家が無いという事で僕たちと一緒に行きたいと言った。
「とは言ってもなぁ・・・」
この子、凄く体が弱そうだし旅に着いて来れるのかなぁ? そもそも、未だに赤いスーツを来て素性の良く分からない僕に着いて来ようと言うのが良く分からない。
「そこの女の子は一緒に着いて行くんですよね? じゃあついでにミミも連れて行って欲しいです」
「うーん、でも僕たちも目的があって旅をしているんだけど、危ない事の方が多いんだよ?」
見た目より幼く感じる口調なので、小学生ぐらいの子をあやす感じになってしまう。
「これでも魔法が使えるんだよ。だから大丈夫なの」
「いや、そうは言われても・・・ えっと、それじゃあ魔法を見せてみて?」
この世界で出会う女の子は魔法を使う率が高いなぁ。
「え?」
なんでかびっくりした表情の女の子。え、なんで?
「どうしたの?」
「いや、女の子の言う事を疑うんですかぁ?」
と、上目遣いでこっちを見る。いや、使えるって言ったから見たいだけなんだけど・・・
「いや、疑うとかじゃなくて魔法使う所が見たいなーって・・・」
「ほら! ミミが魔法使えないって思ったから、そんな事言うんだよね?」
「いや、見ない事には使えるか分からないでしょ?」
「使えるって言ってるんだから、使えるって事でいいじゃないですかぁ」
あー・・・本当は使えないんだな、この子。でも、そこまでして魔法が使えるってアピールするのはセリナが魔法を使っている所を見たんだろうなぁ。だから、魔法が使えたら連れて行って貰えると考えた・・・って事かな?
ちょっと可愛いからって、なんでも許されると思ったら・・・その通りだ!
でも、どうしようかなぁ。うーん、深呼吸して落ち着こう。
すーはー。
僕が突然、深呼吸し始めるのを見て怪訝そうな顔をするミミ。あ、顔が見えないから深呼吸してるのが分からないから、変な動きに見えるせいか。
「んー・・・分かったよ、そういう事にしておこう。二人とも良いよね?」
一応、セリナとヒロコにも確認する。黙って頷いてくれてるからオッケーだ。
「じゃあ!」
「でも! お兄さんの言う事はちゃんと聞く事。良いね?」
あ、年聞いてなかったけど、まぁいいや。僕より年下だよね、この子。
「ありがとう、お兄さん。ミミはミミだよ、ミミ=テ・・・えーっと、テト村のミミです」
いま、明らかに何か違う名前を言おうとしたよね、この子。何か隠してそうだね。まぁ、自己紹介してくれたから、僕もしなきゃ駄目だね。スーツが邪魔だから変身を解く。
「どうも初めまして。コージ=ヒロセです。よろしくねミミちゃん」
「ミミはこれでも18なのです。子供扱いは駄目です」
セリナより年上・・・? 思わずセリナを見たけど他意は無い。つい見比べたとかも無い。
無いったら無い。
「えっと、わたしはセリナです。タタ村のセリナです。よろしくお願いします。ちなみに17歳です」
「えっと、ボクはヒロコだよ。よろしくね」
ヒロコは生まれたて・・・になるのかな? あとでヒロコの年齢は僕と同じ16歳にしておこうと言っておこう。
「んー、セリナ」
「はい・・・」
僕の声は大きくなかったけど、セリナはびくっと反応した。名前を呼んだだけだけど、そこに込められた気持ちを感じ取ったんだろう。
「お説教だよ、いいね?」
「・・・はい」
その後は、セリナをとても心配したこと、危うくセリナが酷い目に会うのを知らずに別れる所だったこと、手紙の内容が悔しかった事、もうとにかく二度とこんな事をしないように、何かあれば絶対相談して貰うように、くどくどと説教した。
でも、僕は怒りすぎてセリナを泣かせてしまい、ヒロコに怒られた。その様子をミミはぽかーんと見ていた。こっち見んな。
そして、ちょっと残念なお知らせ。
せっかく仲間になったホワイトファングだけど、一度別れることにした。それというのも、ホワイトファングは長い間誰にも動かして貰えなかったおかげで、機体の燃料とも言える魔力が随分と減っていて、今のままだと実力の5%程しか出せないらしい。一時的に僕の魔力で補ってもだ。
魔力をてっとりばやく補給する為に、ホワイトファングが知っている秘密の場所へと行くらしい。数ヶ月から下手すると年単位で補給が必要で、補給している間は動かない方が良いらしい。僕がピンチの時は呼べば飛んできてくれるそうだけど、本当によっぽどの時でないと来てくれないらしい。この破廉恥ハーレム野郎め! とかなんか怒ってた。
そして、みんなにホワイトファングを手に入れたおかげで、物凄い借金が出来た事を伝えた。セリナとミミの顔が蒼白になっていた。ヒロコはどうでも良いって顔だった。
でも、ハーベイさんに少しずつでもちゃんと返してかないとね。
「と、まぁこんな事になってしまった訳だけど、どうする? 今なら引き返しても大丈夫だよ?」
僕すごい借金持ちだからね。一緒に居ると苦労しそうだよー。
「いえいえ、わたしはむしろ死ぬまで一緒に居ないと駄目ですね。うん、わたしのせいで借金できちゃったみたいなものですから~」
足りない分は身体で返します、きゃっ♪ とか、なんか小声で言ってるセリナ。
「ミミはどうせ1人だったもん。1人でいるより、みんなが居る方が寂しくないから離れたくない」
「~♪」
ヒロコは本当に何も考えてない。すっごい能天気な顔でずーっとこっちを見てる。
「よし、それじゃあロバスに向かって行くとしよっか」
そしてロバス目指して僕達は、旅を再開するのであった。
コージが最初に気付いた森の中。若い女が二人、辺りを警戒しながら歩いていた。
「ここ・・・ですかね」
「そうですか、間違いないですか?」
青い髪の女と、仮面をした女がそんな会話を交わしている。
「絶対とは言えません。印の気配がかなり薄くなっていますし。でも、ほぼ間違いなくこの木の辺りで休んでいたようです」
「・・・そうですか。ご苦労」
目元を覆う仮面を押さえながら、暗い情熱を抑えるように応える。
「さぁ、ゆっくりでも良いです。確実に追い詰めて捕まえますよ」
「はい、エリス様」
そんな二人を見て森がざわめいていた。
男の子も増えないかなぁ・・・
やっぱりライバルって要りますよねぇ