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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
ゼロ
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動く世界

「これ以上は待てん! 今すぐ出撃しろっ!」


広大な地下格納庫に男の鋭い怒号が木霊する。その声は近くで作業をしていた人間が思わず首をすくめてしまうほどの、粗暴さと強さがあった。


「ですがゲオルグ様、こちらへ移動する時に使った魔力の分も回復していない状態です。これでは作戦行動時間に限りが…」

「うるさいっ! いつまでもこのデカブツを置いたままにしておけんのだ! 時間に限りがあるというなら、それまでになんとしてでも終わらせろ! 今が貴族の長子を消す絶好の機会なのだ!」

「…分かりました。それではライダーを呼んできます」

「早くしろよ。ワシは暗殺部隊に連絡を入れておく」


喉まで出掛かった言葉を無理やりに飲み込んで、ゲオルグの前から一旦離れるトロン。しっかり説明したにも関わらず理解をしない貴族への苛立ちと自分の弱さに苛立ちながらギガンテスに乗る少年エドワードを呼びに向かった。


「お、おっちゃん。そんな顔してるって事は無理やり出撃って事だな。心配すんなっておっちゃんのでっかい奴は強いんだからさ」

「…すまん。半分ほどはチャージできてるのだが、全力運転するには乏しい状況だ。やってくれるか?」

「おう! 任せろって。俺にもやらなきゃ駄目な理由があるしさ、頑張るぜ!」


頼まれた少年エドワードはトロンの暗い雰囲気を吹き飛ばす勢いで明るく返事を返す。これから向かう仕事は決して人に賞賛されるものではない事は重々承知の上で、己の為に突き進む強さをその瞳は持っていた。その明るく力強い視線に感化されたのであろう、トロンの方も少し気分が上向いてきたようだ。


「そうだな。私のギガンテスならそこらの有象無象など一薙ぎで済むし、むしろ丁度いいハンデになるな」

「お、調子出てきたねおっちゃん。そうそうその意気だよ、どっしり構えて見てるだけでいいさ」


そう言って、ばんばんとトロンの背中を叩きまくるエドワード。


「じゃあ、いっちょ行ってくるとしますか!」


いささかの曇りも無いその瞳は、まっすぐに前を向いていた。いや、向かざるを得なかった。






首都グレイトエース。


ユージ王の監督の下に作られた都市であり、バルトス王国の各都市を結ぶ中継都市であり有事の際には長期間に渡って篭城できる程の物資を貯えている。先の動乱では、飛行フレームという新兵器によりあっさりと空からの進入を許しはしたものの、現在は飛行フレームが警戒する事で、空からの防備も以前に増して強化されていた。


ズズズゥゥウウン…


グレイトエースから南東十キロの地点にその巨体は突如として姿を現した。その巨体を見せ付けるかのごとくゆっくりした動きでもって首都へと近づきつつあった。


「ちょっとまだ慣れないな。歩くのにこんだけ時間かけてちゃ戦闘なんかできないなぁ。今のうちに癖をつかんどくか」


試運転をしているとはいえ、地下の格納庫での試運転である。各部の稼動チェック程度のものでしかなく、広い場所での操縦は今回が初めてである。どこか動きがぎこちないのは仕方の無い事であろう。


グレイトエースへ向かう商隊であろうか。街道を北上していく荷車がギガンテスの姿を遠目に確認し、慌てた様子で逃げていった。そんな様子を可笑しそうにモニター越しに見つめるエドワード。どうせ発見されるのは分かりきっているので、特に気にもしていないようだ。それよりも、ギガンテスに慣れる事に重きを置いているようで、おかしなリズムで様々な動きを試すかのように森を突き破って行った。


フォオオオオオオォオオオオオーッ!


魔力を吸い込むための頭部にあるインテークが時折不気味な音を響かせる。その不吉さを連想させる響きに森にいる動物たちは泡を食って逃げ出していく。勿論、ギガンテスはそんな事はおかまいなしに森をただひたすらにまっすぐつき進む。木々を軽々と蹴り倒しながら進むという事は当然、かなり目立つ事になりグレイトエースのフレーム部隊の知る所となる。


街道から少し離れた場所とはいえ飛行フレームにとっては地形など関係なく、あっという間にギガンテスへと接敵する。その数五機。首都周辺を警戒飛行をしている部隊である。あっという間にギガンテスの上空を旋回行動に入り、呼び掛けをしてきた。


「そこの巨大フレーム、今すぐ停止しなさい。従わない場合は攻撃も辞さない」


飛行フレームからの通達もどこ吹く風で、一旦動きが止まったものの直ぐに首都を目指して行進するギガンテス。一度、通達したという事でその行動に即座にマジックアローを連射する飛行フレーム。


フォオオオオオオォオオオオオーッ!


不気味なうなり声が上がったかと思うと、マジックアローが軌道を変更しギガンテスへと飲み込まれて行く。


「おっちゃんすげえなぁ! 本当にマジックアローを飲み込めたよ!」


ギガンテスのコックピット内ではしゃぐエドワード。ばかでかいギガンテスにとって、マジックアローは格好の的であるのだが、吸い込めるのであれば話は別だ。稼働時間を延ばすために少しでも魔力の補給を行いたいギガンテスとしては、効率は悪いが格好の燃料となる。


対して飛行フレーム部隊は、その光景を目の当たりにして攻めあぐんでいた。物理攻撃のできるバリスタは弾数の制限もあり、携行している機体が居ないせいもあり近接攻撃へと移行しようとするが、あまりの巨体のせいでいま一つ距離感が掴めないようで、剣を構えてギガンテスを掠めるように飛び回るので精一杯のようであった。


「そんなこっちゃ、このギガンテスは落ちませんよっと」


そう言うや否や、けり倒した樹木を拾い上げ無造作に飛行フレームへと投げつける。その一本一本がフレームと変わらない大きさで、勢い良く投げられた樹木は飛行フレームに次々と直撃していった。うまく剣をつかって飛んでくる樹木をいなす機体も少なからずあったが、すこしずつ投げる速度が上がっていき終いには、途切れることなく投げられる樹木を避けきることができずに、墜落していった。


「おっちゃんの言う通り大きいってのは、それだけで強いんだなぁ。よしよし。ぼちぼちこいつにも慣れてきたぞぉ」


今の戦闘はエドワードにとって機体に慣れる為の訓練でしかなく、飛行フレームに勝つ事は当たり前のようであった。グレイトエースにはルーツ「777」がある。一度その機体に乗った事のあるエドワードは当然、それとの交戦は避けられない事を知っていた。さらには、「777」に乗った自分をいとも容易く捕獲してきた白い機体。友達、と言える少年が駆る機体が来るであろう事も、期待していた。


「コージだろうと、俺の邪魔はさせない。これさえ成功させれば記憶を取り戻せるんだ」


ゲオルグが持っていたオーブ。あれにエドワードの記憶が封じ込められていると言われ今まで大人しく従ってきた。強引に奪い取ろうとも考えたが、言葉一つでオーブが粉々になると言われては、下手な事はできなかった。だが、今回の件をこなせばオーブを渡すと約束してきたのだ。


「ようやく、取り戻せるんだ。だから、誰が来ようと容赦はしない」


そう固く決意をするエドワード。その様は言葉に出す事で自分に暗示をかけるかのようであった。






呼び出しです。


監視の一号がまたもや呼び出しを掛けてきました。最近、なんというか早退してばっかりでなんというか申し訳ない。今日は実習がある日だっていうのに、早退しないと駄目なんだもんなぁ。まったくもうどこのどいつだ! よりによってグレイトエースに襲撃をかけてくるとか、何考えてるんだろ?


「ごめんね白夜、毎度毎度つき合わせちゃってさ」

「何を言うか主よ。ワシはフレームじゃ。その存在意義は戦うことにある、むしろこのような呼び出しは大歓迎じゃ」


度々の出撃も嫌な顔一つせずに嬉々として、従ってくれる白夜。うん、週末は魔石獣狩りに行ってたっぷり撃ちまくろうね。屋上へ行き、ホワイトファングへと変化して貰う。即座に乗り込み、パイロット認証をしている時にそれはきた。


ッィ!!!


何か音にならない何かが、世界を揺るがし何かを奪い去っていった。


「…ッ認証エラー、エラー? 認証、オーケー、再登録完了」

「どうしたの!? 今の変な奴のせいか!」

「む、大丈夫…じゃ。今、妙な波が干渉してきたようじゃ。あやうく主のデータが吹っ飛んでしまう所じゃったが、乗ってる時で助かったわ」


ルーツであるホワイトファングへ電子攻撃を仕掛けてきた奴がいるんだろうか? だとしたらかなりの上位機種がいるのかもしれない。さっきは慌ててたから詳細を聞くのを忘れていたんだけど、こんな攻撃をしてくる奴だ。しっかり聞いて置く事にしよう。


「…出ない。なんで?」

「どうしたんじゃ?」


電話が通じなくなったのか、監視の一号に連絡がつかない。衛星経由の念話で全体に話しかけてみたんだけど、誰からも応答が無い。さっきの電子攻撃のせいか? 今までに無い状態に言い知れない不安を感じたけど、グレイトエースを襲撃してきてるフレームを放って置くことはできない。ホワイトファングもさっきので少し変調をきたしているかもしれないが、行くしかない。


「とりあえず、先にグレイトエースを襲ってる奴を叩きのめすよ!」

「うむっ、任せておけっ!」


気合を入れてくよ!


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