金策飽きた
満足そうな顔をして家に帰ってきたフレーマー。サラさんの家、つまりはペリカン氏のお屋敷のメイドさん達に尾行されていた事を、ちゃんと衛星に情報を残していたのは良いのだけども、特に対策を練るでなく遺跡にもぐって遊んできてるとかどういう事よ?
「ごめんごめん、徹夜明けは変なテンションになるよね。ちょっと昨日作ったガーディアンのテストがしたくてつい遺跡に行っちゃいました」
まったく反省してない顔で悪びれもせずにそういうフレーマー。なんか、結構マイペースな人間になってきてる気がするのは気のせいだろうか。一度、分身と融合してまた分身しなおした方がいいのかな? 情報の共有はしているんだけど、人格がそれぞれの役割によって変化してきてる気がしなくもない。それか役割をローテーションして行く方が良いのだろうか。でも融合の方が早いから集まったら一度融合するようにしよう。
今日は夕方に学園から帰ってきたミミ達に僕に婚約者がいる事を伝えた。そして、僕が王子だという告知後に婚約者の発表があるという事も。ちょぉっと黒いセリナさんが出掛けたんだけど、今回の話に関しては父ちゃんが悪い…と思うので、怒りは父ちゃんにぶつけて貰うのと魔法を何か一緒に考えるという事でなんとか納得して貰った。ミミの場合は、婚約者ができようができまいが今まで通りに攻めて攻めて攻めまくって一番になると宣言してました。正直、一番怖いです。ヒロコはふーんって言っただけだし白夜は着物を着て褒められまくってたのでご機嫌で僕に婚約者ができたのは別に何も考えていないようだった。
その後で、ミミ達とも婚約したいので指輪を贈ったらえらく喜ばれました。涙ぐんで喜ぶ様子に今までほったらかしにしてて悪かったなぁって思いつつも、果たして本当に僕は大丈夫なのだろうかという不安が沸きあがってきた。泣いて喜ばれるほど好かれてるというのは嬉しい反面、僕なんかがそこまで慕われて良いのかな? という気持ちが沸いてくる。
「一応、今日あった事は衛星経由で皆も分かってると思うんだけど、さてこれからどうしようかという事なのです」
「とりあえず、皆集まってる事だし融合して分身しとく?」
「そうだねぇ。なんか性格がちょおっと変化してってるよね」
「僕はそういう自覚は無いんだけども、他の皆がそう言うならそうなんだろうねぇ。なんというか情報と経験は別物って事なのかな」
皆が揃うとそれぞれが勝手に色々意見を出し合うんだけど、今日も当然同じように各々が勝手にしゃべりだして、話がどんどん膨らんでいった。なので、先に融合してから会話するよ! と仕切ってようやく融合後、再度分身が終了した。わが事ながらまとまりがない。おかしいなぁ、前はもうちょっと以心伝心な感じだったよね?
「んー…やっぱり一度リセットすると、違うようだね。個が薄れてるっていうのかな? 根っこ以外の記憶には薄く膜が張ったような感じがするね」
「だね。基本はやっぱり根っこって事がよく分かるよね。ていうか、この鼻血ブーな記憶がめっちゃやばいんですけども…」
すいません。やばいから衛星には上げなかった情報が融合しちゃったから、結局皆に行き渡ってしまいました。思い出すだけで鼻の下が伸びるね。僕以外、皆すんごく鼻の下が伸びてるからちょっと恥ずかしい。やらしい事を考えてると僕ってこんな顔になってるんだね。
「で、フレーマーが切れちゃって泣かせたサラさんだけど、どうする? 今、リリーさんがお邪魔してるお屋敷なんだよね?」
「二人ともフレームが好きそうだから意気投合しそうだよね。そういった意味では、今後またサラさんから接触がありそうではあるよね。メイドの人達は敵意むきだしだろうけど」
一号と二号の言葉に面目ないとしゅんとしているフレーマー。一応、役割をふってはいるけど分身したてだから別に謝る必要はないんだけどもね。
「なにがあってもサラさんのお誘いだけは断固拒否という事でお願いします。あの屋敷に行ったらなんかメイドさん達が気になって気になって仕方ないし」
「というか、こんなにちょくちょく殺気を向けられるのは嫌だねぇ」
娘が大好きな親馬鹿なお父さんが、駄目男に娘さんを下さいと言われた時の怒りようと言えば分かって貰えるだろうか。サラさんの機嫌と接し方一つで全方位から殺気を向けられるのは、面倒です。今もサラ家のメイドさん達が家の周囲を探ってるようだし。どんだけサラさんラブなんでしょうか、あの人達は。
「そういえばフレーマー、レアメタルの模型はちゃんと持って帰ってきた? 指輪の中に入ってなかったんだけども」
「あ! 持って帰ってきてない!」
「少ないけれどあれも、レアメタルなんだから忘れてきちゃ駄目でしょ。取り返しに行かないと駄目じゃん」
「行くにしてもミミかセリナに付いてきて貰わないと、面倒なことになりそう」
「そうだね、一人で行くのは嫌だね。でも、模型を取りに行くにしても告知後のほうが良くない?」
「それが良いかな。僕が王子だと分かればあのメイドさん達も下手な手出しはできないだろうし。今だと何されるか分かんないんだよねぇ」
そういって身震いするフレーマー。そういう悪寒は強烈に残ってるのね。でも、王子と告知されたら学園のほうが騒ぎにならない…よね。僕、友達少ないから今までとあんまり変わらないよねきっと。トリックスターの面子なら僕が王子だろうと、気にしないだろうしサカキ先輩も態度を変えるとかはしないだろう。口調は少し丁寧になるかもだけども。
「サラさんの話しが出てるから聞くんだけども、今どれぐらいのお金が集まってると思う?」
「え、あれ? 素材は結構あるのになんで換金できてないの?」
サラさんと何の関係があるか分かんないけど金策が現在の貯蓄状況について聞いてきた。記憶を探ってみたら毎日遺跡に行ってる割には大した金額じゃなかった。指輪には結構な数の素材が溜まってるにも拘わらずだ。換金できなかったんだろうか?
「それが、一気にあちこちで換金してしまうとすんごい値崩れが起きちゃったんだよね。今はようやく戻りつつあるんだけど、今後は市場に出す量を調整していかないとせっかくの素材が安く買い叩かれちゃうのよ」
「そういうもんなの? キラーマシンの装置なんかは売れば売るだけ儲かりそうなもんだけど?」
「それがさ、一箇所だけに売るのはまずいかなぁってあちこちに売りに出したら、何故か価格競争が始まって…」
「品薄になって人気が高騰して値上がりしなかったの??? …してないね」
あの手のパーツって、中々市場に出回らないから結構高値で取引されてた筈だよね? ハーベイさんも高額で買い取ってくれたし。狙ってる人は多いと思ったんだけどなぁ。
「それがあちこちの店舗で同時に売りに出たせいか知らないけど、まったく買い手がつかなかったようで結局、買い取りの値段と変わらない値段で販売しちゃったそうでさ。次に買取お願いしたら売れないから今は良いって断られちゃったのよ」
一応最初に二十個売れたから千プラチナは稼げたんだけどもね、という金策。金策の言葉を引き金に素材換金のときの交渉の苦労が頭に浮かび上がってきた。あー、最初千プラチナ儲けた時はすぐに目標金額達成できると浮かれてたなぁ。
「うーん、ハーベイさんが五十プラチナで買取してくれたから結構な人気商品だと思ったんだけども、実弾ってあんまり人気ないのかなぁ?」
「ロバスぐらいフレーム好きが集まる場所なら、実弾好きがたくさん居てもおかしくないんだけどねぇ? これは何が高額で売れるか市場調査をしたほうが金策効率が良い、かな? どう思う?」
というか、ハーベイさんがキラーマシンの部品を高額で買い取ってくれたから、金策といえばそれって感じになったんだよね。お店やギルドに周っていろいろ調べた方が、結局近道になるかもね。
「駄目だね」
良い案かなと思ったんだけど、金策が静かに反対した。違う方法じゃないと駄目かな?
「そんな風に個人で稼ぐには、僕たちの目標額は大きすぎる訳なのよ。ならどうするか?」
一万プラチナ。今じゃ五万プラチナぐらいが目標金額になっちゃってるけど冷静に計算してみると、円に換算したら億の単位なんだよねこれ。あははー。
「…なるほど、それでサラさんの家が関係してくるのか」
「そういう事。かなりの商売人なはずのオーロさん所から、お金を借りちゃえば良いんだよ」
「借りるって簡単に言うけど、とんでもない金額なんだけど?」
「だから納得させるだけの材料を、皆で考えようって訳。ちまちま金策するよりもそっちのほうが絶対早いよ」
自信ありげに笑ってる金策。さてさて、どうしましょうかねぇ?