オアシスよ、泉を湛えるオアシスよ
「どうですか、コージ? これも可愛いと思いません?」
「ミミも見て見てぇ? ほらっ、動くと凄いでしょっ?」
大ピンチです!
フレーマーのおかげで暗闇裸攻めを免れたので、ほっとしたのも束の間。現在、椅子に縛られて目の前でファッションショーが催されてます。ファッションショーなら問題ないと言われそうですが、違います。見えるんです。
フレーマーは言いました。
色々服を着替えてアピールする事だと。
そして、その言葉をどう捕らえたらこうなるのだろうか。たぶん、駄目な方向に言葉が組み合わさった結果こうなったとしか言いようが無いのです。でないと、こんな…
「えいっ」
「うふっ」
「ごふっ!」
鼻血をこれ以上出してなるものかっ! 手が動かせない以上、上を向いて耐えるしかないんだけど、あんまり上を見ていると二人を見る事ができない! チラリズムが好きなんだけど今の二人はチラリズムじゃない! いや、チラリズムかもしれないけれどひらっとスカートが翻る度に見えるはずの布が見えないと、本来ちらっとしない物が見える!
そう! この子達下着を着けてない!
可愛い服を見せる。アピールする。その二つが組み合わさった今、二人の中で化学反応が起こり下着なしのチラリとヒラリのファッションショーが始まりました。
そして知りました。
毛というのは、どこの毛も同じ色をしてるんだなぁ…
ミミは胸は凄いけど、お尻はすらっとしてるんだなぁ。セリナはどっちも桃って表現が似合ういい形をしてるなぁ。顔を埋めたい! 匂いを嗅ぎたい! 舐めてみたい! なんで目の前であんなにおいしそうな物がひらひらと舞っているのに、僕はなんで我慢してるんだ? まて、慌てるな光司。ここはクレバーに行こう。そう、クレバーにだ。前に覗こうとしてどうなった? こみ上げる鼻血を抑えきれずに野望を達成できなかったはずだ。ふたりのピンクの頂きをこっそり覗けるせっかくのチャンスを不意にした! 今ももう少しで見えそうだけど、椅子に縛り付けられてるせいで角度が悪い。キリンみたいに首を伸ばしてもちっとも頂きは見えないのだ。
でも上が駄目なら下だろう?
幸い、足は自由に動く。ならば、できる事は一つ! 椅子ごとこけて下から覗く! 近寄ってきた所を椅子毎ぶつかっていけば、あの魅惑のフルーツは僕のものだ!
「次はすこぉし、改造して見ました」
「やっぱり、下着がないと変な感じするね」
そしてまたついたての向こうで着替えをしてきた二人。静かな部屋の中で衣擦れの音が響いてくるのって、想像力をかき立てられるよね。セリナはニットの薄いピンクのサマーセーターっていうのかな? そんなトップスと白のデニム地のスカート。ミミは袖のない白のブラウスにチェック柄のスカートをサスペンダーで吊っている。
「二人とも可愛いよ。でももう少し近くに来てくれると嬉しいなぁ」
「そおですか?」
「ん? そう?」
獲物が近寄ってきました。
あまり近くに来すぎると、見えなくなるのでタイミングを見計らう。よし、今だ!
思い切り足で勢いをつけ体を右側に傾け椅子のバランスを崩し、椅子の片側で立つようにする。そして椅子の後ろの足を支点にして回転するように足を動かしながら体を捻り、背中から床に滑り込んだ。この間ゼロコンマ三秒!(嘘)
「きゃっ!?」
「うふっ」
背中から落ちた事によりうまく風が舞い上がり、ミミのスカートがふんわり持ち上がる。だけどセリナはとっさの事でスカートを抑え込んでしまった! うん、非常に女の子らしい可愛い仕草なんだろうけど、デニム地で浮かび上がるわけないしょうぅううう!
と、思ったのは一瞬でした。
ミミは金髪だ。そして下から覗いた僕ははっきりと見た。今までのチラリなんかは正直まがい物としか思えないぐらいはっきりと見えた。これは行くしかない!
「ミミちゅわぁんっ!」
「あはっ♪」
「はっ!?」
だけど、椅子毎転がったせいで動けない。金色のオアシスが目の前に準備万端で待ってくれているのに僕は何もする事ができない。倒れてからしばらく経つのに僕に見られてるのが分かってても、傍に立ったままでいてくれるミミもきっと待ってるはず!
ええいっ! 縄なんて魔法ですぱっと切ってやる!
「“風よ! 我が敵を斬れ! カッター!”」
ずばっと切れ味抜群。ちょっと腕まで切れたかもしれないけれど、目の前にオアシスがあるからそんなのちっとも気にならない。金色の草原の奥の泉にいざ突入だ!!!
「いざっ!」
「えいっ!」
あともう少しという所で可愛い掛け声と共に後頭部に非常にやばい衝撃が走る。だけど、ピンチはチャンス! この衝撃を活かしてミミへ突撃する! 僕を今までの僕だと思うな! くんかくんかしたりぺろぺろしたりもふもふしたりするんだっ!
「“其は戒め、我が敵を留めたらん! ラシャラ!”」
「なんのっ!?」
「きゃっ♪」
紐が飛んできて体をまた封じ込まれる。ミノムシ状態にされてしまったけど、勢いは止まらない! そして、ミノムシなままミミへ覆いかぶさる。勿論、顔は胸へ突撃だ。頂きを隠すサスペンダーを鼻でどけて、クンかクン…
「そこまでです!」
「うわーん」
ミノムシなので簡単に転がされてしまい、護身用に渡していたスタンガンを食らう。オアシスもやわらかマシュマロもお預けになってしまった。そして、目の前には静かに怒るセリナお嬢様。うん、そうだよね。突撃されなかった方は怒って邪魔をするよねぇ…
「もうあとちょっとだったのにぃ。セリナひどい」
「目の前でそんな事許すわけないじゃないですか。ミミだって私が襲われたら邪魔するでしょ?」
「ううん、邪魔しないよ? だから、セリナも邪魔しないで」
しれっとした顔で嘘をつくミミ。なんというか、ごく自然に嘘をつけるミミちゃん怖い。
「嘘ばっかり! じゃあ、今コージが私を襲っても邪魔しないんですね?」
「駄目だよ、やっとミミが襲って貰ったんだから順番は守って!」
でもスタンガンを食らって少し冷静になった僕は、非常にきまずい。お風呂に一緒に入った時は、最初っから全裸だったから緊張してたんだけど、今回みたいにチラリとヒラリでしかも下着を着けてないとなると、徐々に理性をはがされていって暴走しちゃうようだ。
「えっと、そろそろ僕限界なんだけどお仕置きはもうお終いにしない?」
「うんうん、ミミを襲うのを我慢するのが限界なんだよね。いいよ、ミミのお部屋に行こう」
「ちっがっいっまっす! ミミを襲ってみて私の良さに気づいたんです! 襲いたいのは私ですよね? ねっ?」
僕が倒れこんでるので、二人とも四つんばいで僕のほうに詰め寄ってくる。あ、ちょっと首を伸ばせば見えるんじゃない? 喧嘩してるから僕に気がつかないだろうし。
「って、あー…ごめんなさい?」
しっかりどこを見てるか二人にばれて謝る僕。喧嘩してても視線には敏感なのね。勉強になりました…
「もう二人きりならいくらでも見せるんですから、我慢せずにお部屋に行きましょ? ね?」
「違うよ、ミミのを見てたんだよ! それにさっきセリナは隠したもん!」
「そ、それはとっさの事で恥ずかしかったんです! それに恥らう方がコージの好みって聞いてます!」
「どうしたの? また光ちゃんを取り合ってる?」
「はわっ!?」
「あ、お義母様!」
音も無く気配もなく。気付けば部屋の中に母さんが居た。子供の部屋に入るときぐらいノックして欲しいんだけども?
「したわよ? あらあらあら? 光ちゃん中々えろい事させてるわねぇ…」
「いやっ、僕がさせた訳じゃないからねっ!?」
「じゃあ、楽しんでないって言える?」
「…ごめんなさい。楽しんでました。全部僕のせいです」
母さんの見透かすような視線を受け、つい謝ってしまう。昔からこの目で見られると嘘がつけません。
「よろしぃ。孫は欲しいけど悩むなぁ。まだミミちゃんと遊びたいしなぁ」
「じゃあ、お孫さんを産むのはとりあえず私が先って事で!」
「だめっ! セリナは結婚だけしてれば良いの! 産むのはミミッ」
そして、落ち着いていたはずの二人の争いが母さんの要らない一言で再燃する。この人絶対分かっててやってるから、怖いんだよねぇ。
「悩め若人よ! 光ちゃんもせっかく分身なんてできるんだから、まとめて皆と結婚しちゃいなさい。そしたら母さんはお嫁さんが一気に四人もできちゃうもの」
「いや、分身で結婚というのは如何なものかと思うのですが…」
「なに言ってるの。結婚なんてぱっとやってぽんと産んで育てるだけなんだから、別に分身でも良いでしょう? 専用の分身なら浮気ってわけでもないでしょうに」
ええっと、専用ってなんというか僕は物扱いでしょうか。なんというか、母さんの思考は時々ぶっ飛んでるからついていけない時がある。
「専用のコージ…」
「私だけのコージ…」
ふとミミ達を見ると、なにやら専用という響きにうっとりしているようだ。駄目だからね? 部屋に監禁しそうな勢いの君達には絶対そんな事はしないからね?
こうして、いつもは余計な事しかしない母さんのおかげで僕の童貞は守られてしまった。どうせするなら、ちゃんとしたいから助かりました。珍しく母さんに感謝です。