他人のフラグは良く分かる
「これは一体どこでフラグが立ったんだろうか」
帰るなりセリナ達におしおきをされて、心身ともに疲労している根っこがそう切り出した。おしおきというかご褒美というか。なんども直に触らされて、鼻血をその度に噴水し、起きたらまた触らせ…どこを触ったかは内緒にしておくけど、天国と地獄を行ったり来たりしていたのは間違いないとだけ言っておこう。頼むから根っこよ。その記憶だけは衛星に保存するのはやめてくれ。
「根っこはともかく、僕の方はフラグとかじゃないと思うんだけど」
頭を強打していたから、つい心配になって回復魔法を唱えただけだし。
「馬っ鹿! フレーマーの方は確実にフラグ立ててるよ! 客観的に見てたらすっごく分かるよ! このスケコマシ!」
「いや、その台詞は結局自分自身に返ってくるっていうのは分かってるのかな?」
金策はなんか疲れた顔して責めてきた。曰く、子供の相手というのは一日中全力疾走するのと変わりが無いそうだ。よくそんだけ頑張って子供の相手ができるもんだ。
「それに根っこもそのイメチェンが原因なのは間違いないでしょうに。なんで君たちはそうフラグを立てちゃうかな?」
「「ごめんなさい」」
でも、サラって子はフレームにも詳しいし自分でも作ってるみたいだしなんか凄いんだよ? ちょっと鈍臭いけど。
「はっくしゅん」
「お嬢様、どうされました? お風邪でしょうか?」
「ううん、大丈夫。きっとフレームが早く作ってくれって急かしてるんですわ」
「…左様ですか。では、何かありましたら又お呼び下さい」
「はぁい、ありがと」
「…どこかで能天気なやり取りがされてる気がしないでもないけど、あの子とは友達になれそうなんだけどなぁ。僕たちってさ、なんだかんだ言って友達が少ないじゃない?」
「だから母さんが言うとおり趣味につっぱしって仲間を探してたって訳か。でもよりにもよってフレームの分野で何故に女の子と知り合うかなぁ?」
そればっかりは僕に言われても仕方が無い。戦うのが好きな女の子も居れば、セリナみたいに魔法が大好きな女の子も居るし、フレームが大好きな女の子が居てもおかしくない。知り合える確率は低いだろうけど。
「なってしまった物はしょうがない。それに根っこはともかくフレーマーの方は、なんか凄いお金持ちのお嬢様っぽいから、ミスリルを安く融通してくれるかもしれない」
「ん? なんで金持ちって分かるのさ? あーそうだねぇ、金持ちだよねぇ」
小型八型エンジンを三個以上もってる時点で莫大な資金が無いと無理だもんね。ひょっとしてとは思うけど、小型八型をあの子が独占してるんじゃないだろうね?
「でも、僕たちだってお金持ちって言えばお金持ちでしょ? なんといっても僕ってほら王子様だし~」
「ああそういやそんな設定あったねぇ。父ちゃん大丈夫かなぁ」
隣国のハイローディスは好戦的で、色々とちょっかいをかけてくる。こないだもこっそりロバス方面に侵入してたし。それが駄目なら今度は王族の一人を、花嫁修業と称してこちらに送り込んでくるようだし。何を考えてるのか良く分からないけどあれやこれやと、こっちにちょっかいを掛けてくるんだよね。
「週末には帰ってくる余裕があるんだから、大丈夫じゃないかなぁ? 一応、僕も貴族を監視してるから誰がどこでパーティしてるかは逐一報告してあるからね」
「まぁそれなら大丈夫かな? それより僕らはどうすべかねぇ。ギルドの方にも顔を出してそっち方面でも知り合いを増やしておく?」
ギルドねぇ。そりゃあ、ギルドだと戦闘面に特化したような人がうようよいるだろうし、情報もあれこれ持ってる人もいるだろうけど、なんか顔を出しにくいんだよね。なんかああいう場所って因縁ふっかけられそう。偏見だけどね。
「金策がギルドに顔を出す気があるなら止めないけども、無理にいく必要は無いんじゃない? 僕なら行かないだろうし」
「そりゃ僕だってちょっと怖いけどさ、なんか凄い人とかも居そうじゃない? ランクトリプルエスのギルドのエースとか」
「そんなランクなんてあったっけ?」
「ううん、適当に言った。でも、達人というかそういう頂点を極めた人達の噂話とかも聞けたら、会いに行く事もできるかもしれないじゃん?」
なんとなくだけど、そんな凄そうな人って簡単に会えないんじゃないかな? でも、ギルドにもとんでもなく強い人とかは居るだろうね。この世界には印持ちという特殊能力もある事だから、魔法が使えなくても弱いって事にならないからね。
「あー…まだふらふらするや。とにかく、知り合いというか友達増やすのは良いけどなるべく女の子じゃない方が良いって事で」
「でも、僕たちが選り好みできる立場だと思う?」
「「「「あー…」」」」」
僕の言葉に皆ががっくりして、ため息をつく。うん、なんというか友達って作るの大変だよね。どうやったら嫌われないで済むかとか、何が好きなのかとか話してて退屈しないかだろうかとか、あれこれ考えなきゃ駄目だからもうイッパイイッパイなんだよね。
「コラァ! またこんな所で固まってるし! 一人は必ずミミ達の傍に居ないと駄目でしょ?」
「そうです、こんな廊下の隅っこで集まってたら駄目ですよ」
ありゃ見つかった。そう僕達は廊下のすみっこや、空き部屋や厨房の影とかそういった所に隠れるように集まる癖がある。根っこの部屋に集まることも多いんだけど、最近は家の中で隠れるように集まるのが楽しくなってきたのだ。
「それに、コージさんはまだお楽しみの時間が残ってますよ☆」
そう言って、セリナは根っこをしっかり捕まえる。今は家の中なのでみんなくつろいだ格好をしているのに、セリナは何故に根っこを見分ける事ができるんだろうか。すげぇ。というか、根っこは倒れて休んでる隙をついてこっちに逃げてきてたのか。
「次は目隠ししてから、全身で楽しんで貰うからね。ミミがんばるから」
「そして、その次は勿論私ですよぉ~」
この二人どんどん過激な方向に走ってないでしょうか…いくらなんでもそれは危険でしかない! ここは僕として釘をさしておかねば。
「あの二人とも?」
「なんでしょう、フレーム好きさん」
あ、僕の事も分かるのね。
「あんまり過激な事すると本当に倒れちゃうからほどほどにお願い。それに僕ってほらお淑やかで、風でスカートがめくれたら顔を真っ赤にして恥ずかしがるような子とかが大好物だし」
「大丈夫です。私、すっごく恥ずかしいのを我慢してますから、きっとコージの好みです」
「ミミはコージなら、何されても平気だからそれは良く分かんない…」
「いや、目隠ししてたら分からないからね? ミミは羞恥心を覚えよう羞恥心」
「はっ!? じゃあどうすれば…」
よし、セリナがこっちに耳を傾けてくれた! 考えろ! 罰になってるようでなってない案を!
「それはやっぱり椅子に縛り付けて「可愛い」二人のファッションショーでもすれば良いんじゃないかな?」
「ファッションショー…ですか?」
「なにそれ?」
「要は色々服を着替えて見せるって事。で、可愛い所を見せ付けてみて。でも、僕は縛り付けられてるから何があっても手は出せないから、非常に辛い! あぁ、可愛い子が目の前でアピールしてくれてるのに、僕は縛られてるからどうしようもない! あぁ、なんて辛そうなんだろう!」
「「…」」
「ましてや、恥ずかしそうにチラリとかヒラリとかあったら、それはもうヤバいです」
ごめん根っこ。僕にはこれぐらいが限界のようです。だけど、先程の危険なお仕置きよりかは興味を持ってくれたようで、何かを考え込んでいる。後一押しだ! 何かないかな? 何か…そうだ!
「そして、あんまり可愛いとやっぱり可愛い子とお出掛け…いやデートしちゃいたくなるよね、きっと」
デートという単語を出した途端、目の色が変わる二人。そして、ライバル心を剥き出しにお互いをけん制しあう。
「んんっ、確かに私たちが考えてたお仕置きよりも、厳しい気がしますね。別にデートに釣られた訳じゃありませんが」
「うん、チラリとかヒラリはミミの得意分野だからデートはどこに行くか考えておかなきゃ」
「あら、ミミは勝ったつもりで居るのですか? それは気が早いですよ」
「ん? だって、ミミは毎日鏡を見て研究してるんだもん。それに家に居るときはそういうの着てるから、ばっちりだし」
「うふふ。楽しみですね」
「うふふふふ」
うん、攻撃対象を根っこから変える事ができたけどこれはこれで怖い。ピンク色の衝動のお仕置きが胃が痛くなる精神的にくるお仕置きになってしまった。だけど、根っこの方を見るとありがたいという風に僕を拝んでいた。
「では、連れて行きますね」
「またね~」
「「「がんばってね~」」」
さらば根っこよ。