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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
ステップ!
178/293

僕が師匠じゃ支障あるから死傷者でちゃう?

そうして、先輩を委員長に改造してトリックスターの皆が待つ演習場に向かった。最初は他の皆も心配してついて来ると言っていたんだけど、一人で大丈夫と言い切っておいて良かった。改造した先輩は明日からは風紀委員長らしくびしっとした隙のない出で立ちで、風紀委員の使命をまっとうするだろう。先輩のクラスメイトの男子はがっかりするだろうけど、そんなの知ったこっちゃ無い。


「お待たせ~、どう? 分からない所ある?」

「おう無事やったかコージ。とりあえず、一応形にはなっとるで」

「あ、丁度良かったわ。この刻む文字の効果を教えてくれる? 他にもあったら教えて欲しいわ」

「ねぇコージ。俺の場合はちゃんとできてるかどうか、試せないんだけども?」


なんとか自分でできる所までやってるみたいだね。だけど、レイの場合は盲点だった。そうだよね、カウンターできる相手が居ない事にはちゃんとできているか分からないよね?


「ハルトは恥ずかしがらずに真剣に動きをなぞってよ? 意味の無い動きじゃないんだから少しぶれると失敗するかもしれないんだからね。セシリアはとりあえず、書いてある文字を全部覚えてから他の文字を覚えるようにして。それだけでも効果抜群な物を取り揃えているからね」


ハルトとセシリアにはそう指示をだす。しっかり型をなぞって自然と技を出せるようになってもらうまで、何度でも反復して貰うのが一番だ。


「で、レイは僕が攻撃するから頑張ってね☆」

「なんだか俺だけ厳しい気がするのは気のせい?」


イケメン爆発しろとか思ってませんよ? ええ! 思ってませんとも! でも、ファントムアタックでつい力が入りすぎてカウンターにさらにカウンター当てたりしたのは、ちょっとした茶目っ気だと思って欲しい。モンスターの模擬戦でもやれ無い事は無いと思うんだけど、やっぱり実際に戦う方が覚えるのも早いよね、たぶん。


ぼこぼこになったレイをバルトが治療して、即座にカウンターの練習をする。そうやって繰り返し戦ってると、徐々にどの方向からでもカウンターを合わせられるようになってきた。こつは一点を注視しない事と止まらない事。あとはタイミング勝負になる。レイはかなり素早い身のこなしなので、僕より八手撃は向いていると思う。


ハルトとセシリアは今のところ僕が見ていなくても大丈夫そうなので、レイに掛かりきりで教える事ができた。でもエリーとバルトにも何か役に立ちそうな事を教えられれば良いんだけど、何が良いかなぁ。意外性を持たせるために、氷系の魔法で熱を奪う魔法を覚えてもらおうかな? 筋肉から熱を奪うようにすれば、加減次第で攻撃にも回復にもなりそうだし。ちょっと地味だけど、普段が派手だから別に良いよね。バルトの方は神聖魔法で能力の付与魔法を覚えて貰えればいいかな。ブレスと違って限定的な能力の底上げだから、今のバルトでも大丈夫だと思う。


「あら? どちらさんですか?」

「あのアース師匠はこちらにいらっしゃいますか?」

「アース…? あぁ、コージですか。ちょぉ待ってくださいね先輩、今呼びますさかい」


なんかハルトがにやにやしながら、こっちに来た。ん? あら? なんでレインボー先輩が来てるんだろ。何か問題でもあったのかな?


「おいコージ。美人の先輩さんがお前をご指名やぞ。またおまえは何したんや?」

「いやレインボー先輩だよ、風紀委員の」

「はぁっ!?」


すごい勢いで振り返るハルト。そして僕の台詞に皆も一斉に演習場の入り口を見る。いきなり遠慮のない視線を浴びた先輩は身を縮ませてしまう。まだ、あの格好になれていないんだな、きっと。


「レインボー先輩、どうしたんですか? すぐには慣れないかもしれませんけど、その格好似合ってますよ」

「いえ、そのそれがですねアース師匠。その事についてご相談が。あと私の事はレイチェルもしくはレイレイと呼び捨てでお願いします」


さっきまでの派手な感じから一転。長い黒髪をまっすぐ下ろし、ふちの無いメガネをかけて貰った先輩。服装もしっかり隙の無い様にかっちりした物に換え、胸元もお腹もパンツも簡単に見えないようになっている。だけど、スタイル自体は良いので別に地味には成らない所がこの先輩の凄い所だ。色気たっぷりお姉さんからよくもここまで清楚なお姉さんに変貌を遂げたものだ。我ながら恐ろしい才能だね。


「…あれ? 今何か変な台詞が聞こえたような気が…?」

「なんでしょう師匠?」


師匠とかレイレイと呼べとか。自分の匠の技に惚れ惚れしてたんだけど、先輩が今おかしな事を言った気がするんですけども…


「どうされたんですか、師匠? よかったらお話を聞いて欲しいんですけど」

「いや、話を聞くのは良いんですけど先輩。その師匠って言うのはなんでしょうか?」

「先輩じゃないです」

「先輩?」


重ねて先輩と呼ぶとむっとした表情で僕を見つめる先輩。


「おい、コージの奴またなんかやらかしたんかあれ?」

「当然でしょ。あの先輩があそこまで変身しちゃった原因に間違いないわね」

「で、当然のようにああなったと」

「浮気許すまじ」

「コージは美人を撃墜する率が高いよねぇ。俺なんかよりよっぽどモテモテだよ」


ひそひそと言ってるつもりだろうけど、全部僕には丸聞こえだからね? 浮気もしてないしモテモテじゃない。なんというかレイにだけは言われたくない。


「レイチェルです。それ以外はレイレイです」

「と、とにかくどうしたんですか? 相談なら話聞きますよ?」

「もぅ。良いです、とりあえず場所を変えても良いですか」

「はい、分かりました。ちょっと行って来る! 後で君達にもオハナシがあるからね!」


先輩に返事をして、トリックスターの皆に大声でおしおき宣言をする。軽く肩をすくめられたけどね。後で覚えてろ。しずしずと先導する先輩に付いて行った先は、風紀委員とプレートが掲げられた部屋。生徒会ならまだしも風紀委員もこんな部屋あるんだ、知らなかった。そして静かに部屋の鍵を開けて、僕をうながす先輩。風紀委員の部屋ってなんというか縁のない場所なので、つい恐る恐る入って行く。別に何も悪いことはしてないんだけども。


ガチャッ


えっと、鍵掛けましたか? 掛けましたよね? でも大丈夫。僕なら窓の外から街中へ脱出できる。それより今は鍵に気付いてないように振舞うのが先決かも。でもなんか背後から嫌なプレッシャーを感じてやまない。


「師匠。とりあえず、手近な所に座ってて下さい。飲み物を用意してきますので」

「えぇっと、お構いなく」


会議がしやすいように、机と椅子が綺麗に並んでいる。とりあえず端っこに座る僕。堂々と正面の席に座るとか小心者にはできるわけがない。ハルトなら座りそうだけどね。


「お待たせしました」


待ってるのが退屈になってきて、誰も居ないから椅子をガッタガタして遊んでいたら先輩が戻ってきた。やべぇ、途中から夢中になって遊びすぎた。僕の前にあったかそうな飲み物を置いて、そのまま当然と言わんばかりに僕の隣に腰掛ける先輩。


「えっと、お話というのは…?」


何かのハーブティを頂きながら、しばらく間を置いてから先輩に問いかける。ハーブティが落ち着かせる効果があるのか飲んでるとなんだか冷静になってきた。


「師匠、まずはお礼を言わせて下さい。本当にありがとうございました」

「えっと、どういたしまして?」


すっと席を立って僕に向かって深く礼をする先輩。そんなにイメチェンを気に入ってくれたのか。


「こうなって初めて分かったのですが、私はどうも服装に性格がひきずられるようです。師匠に強引に変えて貰ったこの服装と格好のおかげで、私すごく冷静になりました」

「…そうですか。でも、今まで服装を変えようとは思わなかったんですか?」

「それが、先程までの服装ですと家にある全ての衣装が同じ系統に変えられてというか、自分で変えてしまっていたので変えようにも変えようが無かったんです」

「それで、変わる事無くずっと今までやってきたというんですね」

「はい。でも、ちょっとおかしいかなとは思ってたんです。だけど、クラスの男子からちやほやされると、どうでも良いかとなってしまいまして…」


お恥ずかしい事なのですが、と頬を赤らめてうつむく先輩。でもとりあえずは自分を取り戻したと言いますか、元に戻ったんなら良いんじゃないでしょうか? 


「でも、師匠にはっきり指摘されたおかげで目が覚めました。その上、このようにかっちりした服装まで用意して頂いた上に髪の色まで変えて頂いて感謝の念がたえません」


でもすいません。僕のイメージでは委員長は黒髪なんですけど、これって良く考えたら日本での設定であって金髪が普通なこっちだと、むしろ黒髪は異質ですよね…


「それは良いんですけど、その師匠っていうのは止めて貰えないでしょうか?」

「いいえ、前のままでいればいつか野獣の手に落ちてしまったかもしれない私を救ってくださったんです。しかも、的確に私が望んでいた服装を用意してくれたんです。師匠が駄目ならご主人さまとお呼びしたいぐらいです」


話が変な方向に突っ走ってる気がする象。なんで、じりじりとこちらへとしなだれかかってきてるんでしょうか。そして、さり気なく膝に手を置いてくるのは何故なんでしょうか、さらには顔がどんどん近くなってきてるようなんですがだれかたすけ…


ドバンッ!


「コージッ♪ ミミと一緒に帰ろうねっ♪」

「あなたのセリナがただいま参上です。さぁ、泥棒猫には指一本触れさせませんよ」


扉が爆発したぁ!? と思ったら気付けば僕は扉の前にいた。


「では、ご機嫌ようです」

「ばいばーい」

「えっと、さようなら先輩!」

「そんなの言わなくて良いの!」

「そうです、さっさと帰りますよ!」


おほー、助かったんだけど助かってないよこれー! 僕を抱えて走る二人の目が怖い。でも、下手にこれ以上女性に興味を持たれるよりはいっか良いよね良いんだよっ! 



「逃げられてしまいましたか。ですが、まだ始まったばかりですし焦らずに行きましょう」


そういって、扉が破壊されて破片が散乱する部屋で、静かにお茶を飲みながら静かな笑みを浮かべていた。


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