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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
ステップ!
177/293

委員長とおしおきと説教と

放課後、気が進まないけれどレインボー先輩に連れられてどこかに向かっている。たぶん、演習場のどこかに放り込まれて先輩の魔法の餌食にされるんだろう。土の属性の使い手って初めて見たんだけど、地味かと思ってた僕のイメージを見事に崩してくれた。集団戦でめちゃくちゃ便利そうな魔法だよね。ゴーレムを作ったり、壁を作ったり、落とし穴を作ったりという攻撃的でない魔法が主流かと思ってたんだよねぇ。


時折、ちらちらと僕のほうを見るのは逃げていないか確認しているんだろう。少し怒っているようにも見えるから、よっぽどこの先輩の逆鱗を刺激しちゃったみたいだ。まぁ、飛んで逃げたしハーレム作ってたしで、風紀委員のこの人にとっては印象最悪だもんなぁ。


「ここです。少しこちらへ来なさい」

「はい」


言われるままに先輩に近づく。なんだろうって思ってると、不意にがちゃっと手首になんか嵌められた。なんで? ってびっくりしてると、足にもなんか嵌められた。これは嫌な予感しかしない。


「また飛んで逃げられては駄目なので、魔法は使えないようにさせて貰いましたわ。と言ってもそこまで長持ちするものではないのですけど」


使用許可を頂くのにだいぶ書類が必要でしたのよ、とどうでも良い事をぼやく先輩。魔法を封じられる僕としてはちーっとも嬉しくない。でも、こんな物で本当に魔法が使えなくなるのかな? あ、本当に魔法が使えない。魔力が流せないようになるんだ、へぇ…素材が何か特殊なのかな?


「さぁ、時間もあまり無い事ですし二度とあのような事をしないように、罰を受けて貰いましょうか」

「魔法が使えないぐらいで、逃げられないと思います?」

「あら? 能力的には魔力が一番高いじゃないですか。一番高い能力を封じられてまともに戦えるのですか?」


なぜか僕の成績を知ってるのね。だけど、こういうハンデ戦も調度良い訓練になりそうだ。幸い武器は取り上げられてないしね。


「僕の入っているパーティはご存知です?」

「えぇ、よく知ってますわよ。あのハルトバルトにセシリア嬢が組んでるパーティですわね。風紀を乱しそうなハンスベル君も居るのが玉に瑕ですが。彼らに付いて行けば成績もうなぎ登りでしょう?」


いいんだ。所詮僕なんて無名な存在なんだし。というかハンスベルって言うから一瞬誰かと思ったけどレイの事だった。彼はもてもてすぎるから風紀委員に目を付けられちゃってるのね。というか、僕だって結構貢献してるんだけどそういう話は伝わってないんだねぇ。


「それが間違いって教えて差し上げますよ。僕らは誰も寄生してる訳じゃないです」

「そうは見えませんけど、時間も無いですからさっさと行きますよ」


そう言っていつの間にか持っていた杖を構えて、僕に向ける。


「“土よ! 大地に呼べ束縛する力! スロウエリア!”」

「またそれかっ!?」


結構な範囲で動きを阻害する魔法だ。慌てて距離をとり、「ギル」を身構える。


「“絶刃裂波”」

「“土よ! 我が前に大地の守りを! ロックウォール!” “土よ! 我が敵を打ち倒せ! マッド!”」


土の壁で盾を作って泥玉を放ってくる。先輩は一歩も動かない。うんうん、簡単に終わったらつまらないからね。泥玉は避けるまでもない、気合ですべて吹き飛ばす。接近させずに遠距離からちまちまと戦う相手にはどうすれば良いか。的を絞らせないで相手が疲弊するまで逃げ回るのもありだけど、相手以上に遠距離から攻撃するのもありだ。


「“絶刃裂波”」

「馬鹿のひとつ覚えではこの壁は崩せませんよ?」


微妙に角度を変えて壁の無い方向から、どんどん撃ち込む。そしてその度に壁を増やしていく先輩。もちろん、攻撃魔法も撃ち込んでくるんだけどその程度の魔法なら回避しながらでも技を放つ事ができる。そうしていると、先輩の周りに隙間無く壁ができてしまった。


「さぁ、反撃ですよ先輩!」

「あなたの技では、この壁を抜く事はできませんわ」

「その程度でしか撃ってませんからねっと“絶刃裂波”」


技を壁に当たらないように、空へ向けて解き放つ。そして、先輩のいる辺りへ落ちるように衝撃波を急降下させる!


「え!? きゃあっ!」

「どんどん行きますよぉ!」


位置を特定されないように、周囲を回りながら技を放つ。どっちにしても壁があるからこちらの姿は見えないのだけど、いつまでも同じ方向からだと避けちゃうかもしれないもんね。仮にも先輩なんだしこれぐらいの修羅場は経験しているよね? しばらく撃ち続けていると、何も聞こえなくなってきた。さて、一発でかいのを撃って壁をなぎら払っておこう。


「あれ?」


気合を少し込めて技を放ち、土の壁をすべてなぎ払ったんだけど壁の中はもぬけの殻だった。て事はどこかに逃げたね? こういう時のお約束の定番としては背後から出てくるものだけど…静かに気配を探っていると背後で物音がする。背後にいる敵を惑わす為に瞬時に横移動してからバックステップして敵を視界に収める。


「ゴーレムか、先輩は土の中に居るのかな?」


大きくて中々素早いけれど、ハイマニューバとかのメカに比べたら鈍重すぎる動きだ。それに人間じゃないから、安心して斬り飛ばせる。次々に現れるゴーレムだけど、その場から動かずに“絶刃裂波”を飛ばして次々にゴーレムの四肢を切断して行動不能にしていく。たぶん、演習場のどこかにあのノロノロになる場所や毒沼みたいな場所が出来上がっているんだろう。ゴーレムはそこへ誘導する為の駒なのだ。


いい加減、このままだと先輩をやっつけられないので地中にいるであろう先輩の気配を探ってみる。…あれ? 地中に居ないけどどこに? まさか!


「ばれちゃったわね。“土よ! 岩をも貫く槍を解き放て! ロックドリル!”」

「よいせっ!」


僕に倒されてたゴーレムの胴体から先輩がするりと姿を現して魔法を放ってくる。至近距離からの魔法だったけど、なんとか「ギル」で逸らす事ができた。今の魔法って直撃したらただじゃ済まない威力あるんだけど、何してくれるのこの先輩は?


どんどん行くわよ、といい笑顔を浮かべた先輩は岩のドリルを連射してくる。誰だ土属性が地味とか言った奴は! このドリル連射はめっちゃど派手だよ?! しかも、最近発見した魔法の連射方法をしっかり利用しているし。魔法って陣を思い浮かべて魔力を流しこみながら呪文を唱えるんだけど、同じ魔法を唱える時は精霊への呼びかけだけで発動できるのだ。この際、最初に流し込んだ魔力とまったく同量の魔力を流し込まなければ発動しないので、まだ連射方法を使いこなしている人は少ないのだ。


「ん! 嫌らしい攻撃を混ぜてきますね先輩!」


時折、呪文を詠唱しているので威力を調整しているのかと聞き流していたんだけど、小さい岩のドリルを混ぜる事で遠近感覚を狂わせてきたのだ。危うく小さいとはいえドリルに貫通される所だった。


「誰がいやらしいんですか!」

「そんな格好をしておいて、それは無いと思いますよ先輩?」


最初に“絶刃裂波”を連射した時に無傷とはいかなかったらしく、服がところどころはだけてるし、肌が露出している。もともと弾けそうな感じだった服は大変な事になってしまっている。


「よくそんな事を言われるんですが、どういう意味ですか? 今でこそ少しはだけていますが、いつもは制服を普通に着てるだけですのに…」


僕の言葉に何か感じる事があったのか、先輩の攻撃の手が止まった。


「いや、あんな色気たっぷりに着こなしておいて普通とか何言ってるんです? 控えめに言っても、色気たっぷりで風紀委員とはまったく逆の存在にしか見えなかったですよ?」

「え!?」


どうも本気で普通の格好をしてると思ってたらしく、物凄く驚いた顔をしている。なんというか真面目な人柄なのかな? だから周りの人は先輩がショックを受けると思って、今まで誰も本当の事を言えなかったんだろうね。


「上着のボタンを少し外しているのは駄目でしょうか?」

「駄目ですね、胸元が見えすぎです。先輩は大きいんですから余計駄目です」

「上着の長さはこれぐらいで大丈夫ですよね?」

「いいえ、何かあればお腹が見えそうなのは短いと言っていいです。もっと長くするべきです。しかもなんでそんなに透ける素材を使ってるんですか? それも元に戻してください!」

「スカートは…」

「短すぎますよ! 激しく動いたらパンツ丸見えじゃないですかっ!」


そんな格好をしていても、普段は行儀良くしている先輩はパンツ見えたり色々ちらりとしないんだけど、少しでも行儀悪い事をしたりいたずらな風が来れば一発アウトだ。というか、これだけはっきり駄目出ししないと理解してくれないとかどういう環境で育ってきたんだ…


「はぅぅぅぅ…」


大丈夫と思ってた事をことごとく否定された先輩は、随分とショックだったようでひどく落ち込んでいる。まぁ周りに居た男子生徒は目の保養って事で、わざと教えないようにしていたのかもしれないね。


「先輩、安心して下さい。風紀委員長いえ委員長スタイルにばっちり変えてあげますから!」

「…アース君?」


丁度良いタイミングで魔法も使えるようになった事だし、ここは本当の委員長スタイルという物を伝授しようじゃないですか。眼鏡をかけて黒髪で隙のない制服の着こなしをする良くあるイメージに出てきそうなザ委員長になって貰おう!

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