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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
ステップ!
176/293

虹ふたたび

「そこのあなた。騒々しく走るのは止めなさい」


もう少しで追っ手を振り切れるかという時に、凛とした声が僕を止めた。色気あるど派手なレインボー先輩だ。だけど、ここで止まったら捕まる!


「すいません、急いでるんで!」

「あら、私から逃げる後輩は久しぶりですね。では遠慮なく」


どことなく楽しげでなんか物騒な気配を感じるけど、あの人って何する気だ?!


「まずは足止めね。“土よ! 大地に呼べ束縛する力! スロウエリア!”」

「うのっ!? なにこれっ!」


なんか、急に足が泥沼にはまったかのように動きづらくなる。周りを見渡しても特に変化したところは無い。だけど、急いで脱出しなきゃやばい気がする。


「反省しなさい。“土よ! 大地に解き放て腐敗する力! ポイズンフィールド!”」

「痛い痛い?! 地味に痛い!」


足止めを食らって、毒の沼ならぬ毒の廊下が出来上がった。歩くたびに痛いし素早く動けないとか、じっくり痛みを味わえって事ですか。この人、魔法の使い方がえげつなくない? そんな事を思っていると、胴体に何かが巻きつく。…鞭?


「捕まえましたわよ。観念なさい? 風紀委員長の目の前で、警告を無視して逃亡しようとした罰を与えますわ」

「いや十分すでに痛い目に遭ってますからっ?!」


レインボー先輩と争っている間にクラスメイトが追いついてきたけど、僕と先輩を遠巻きに見てるだけで近づいてこない。なんかしてやったりという雰囲気が漂っている。まさか、誘導された?!


「…それに、地味に痛いとおっしゃいましたわね? 私自分の魔法が地味と言われる事が非常に腹立たしいと感じるのですよ?」

「ひぃっ」


めちゃくちゃ怒ってらっしゃる! 魔法は地味でも見た目が派手だからバランス取れてて良いんじゃないでしょうか?


「尚、見た目が派手だから調度良いと思ってる方を見ると、無性にいじめたくなるのです。今、いじめたくなったんですけど、そこら辺はどうなんでしょうか?」

「全然これっぽっちも女王様とか思ったりしていません、あ痛っ!? 痛い痛い! なんか僕失礼な事言いましたかぁ?!」

「いいえ、反省してないようですので少し痛い目に遭って貰ってるだけです。それと誰が女王様ですか」


鞭が体を締め上げてくるわ、毒の廊下は痛いわ、まともに動けやしないわで踏んだり蹴ったりだ。この人風紀委員長って言ってたけど絶対まともじゃない! うん、逃げよう。


「“炎よ! 我が身を助け我が意のままに天を駆け登れっ! ツインジェット!”」

「なっ?! 逃げる気ですか!」


金策ありがとう! 君の空飛ぶ魔法は非常に役に立つよ! この魔法だと鞭で僕を制止する先輩ごと引きずって、廊下から浮き上がる事ができる。なんとか僕を制止しようとしている先輩をノロノロ毒廊下に引っ張ったのを見計らって「ギル」で鞭を両断する。


「風紀委員長だからって、そんな危ない魔法は駄目ですよ? しっかり味わって下さいね。それと走らずに飛んでるから良いですよね?」

「このっ、良い訳ないでしょう! 待ちなさい!」

「失礼しまーす!」


ちょっと廊下を走ってただけで、あんな痛い目に遭わせるとかどんな風紀委員だ。さらに罰を与えるとか恐ろしいよね。これ以上関わると非常に痛い目に遭うだけだろうから、とっとと逃げる事にしよう。





「ひどい目にあった」


教室に戻ると、にやにやして僕を見てる人達がいた。腹が立ったからその人達にあかんべとしておいて席に座る。そして、あんな目にあった僕としては癒しが欲しい。


「わふわふの柴犬を愛でたい。あのつぶらな瞳で見つめられたい…」

「シバイヌって何? ミミってシバイヌになれる?」


うん、柴犬は犬だからミミには成れないからね。僕を慰めてくれようとしてるのは分かるんだけど、もうちょっと自分を大事にしよう。


「お母さんの変身グッズの中にもがっ」

「うん、それ以上言っちゃ駄目だからね、ミミ」


こくこくと頷くミミ。意外と鋭いところをついてくるよね。でも、母さんの変身グッズというか父ちゃんの趣味のコスプレの中に入っててもおかしくないよね。だけど、僕は柴ワンコと遊びたいのであって、コスプレを楽しみたいわけじゃないんだ。す、少しぐらいなら付き合っても良いけどねっ!


「よぉ、ご苦労さん。おまえ見てるとほんま飽きへんわ」

「そいつはどうも。あんまり笑ってると見物料とるよ?」

「すまんすまん。ほれ、あいつらを見てみぃ。おまえが嫁さんといちゃこらしとるさかい嫉妬の炎がメラメラや。次は何をしでかすか思うたらつい笑いがこみ上げてな」


そう言われて指先を向けられた方を見ると、確かにぎらぎらした目つきで僕を視線で殺そうとしている一団がいる。師匠? 僕って弟子ですよね? なんでそんなに殺気を籠めた目で僕を見てるんですか?


「ハルト。師匠の女の子の好みってミミみたいな子なの?」

「さぁ、どうやったかいな? まぁ、尽くす子は誰だって好きやろ。それに大きいしな」


最後の台詞はぼそっと僕に聞こえるぐらいの音量で小声で伝えてくる。最近は注意したおかげでチラリもヒラリも無い制服になっているんだけど、それでも、ミミは目立つ。大きさで言えばまだセリナの方が大きいんだけど、隠そうとしているのとそうでないのとではやっぱり目立ち方が違うんだろうね。


「でも、セリナもミミもやっぱり人気あるんだねぇ。僕、大丈夫かなぁ…」

「何言っとんのや。そんなもんは実力で排除せぇ、実力で」


実力でどうやって排除するんだろう? まさか、すぐに暴力をふるうわけには行かないし。どっちかというと童顔な僕が凄んでも、誰も怖がらないもん。


「こういう事だよ、コージッ」

「そうそう」


ミミがむぎゅっと抱きついてきて、幸せそうにすりすりしてくる。それを見たハルトは正解やと言わんばかりにしきりに頷いている。だけど、ギラギラした視線を向けてきていた一団を見れば、諦めのため息と共に脱落していく人が多数見受けられた。依然として残っている人も若干脱力しているように見える。なるほど。


「それにおまえさんの戦闘力は、皆よう知っとる。それでもなお喧嘩ふっかけてくる奴がおったら、それこそ返り討ちにしてやればええってな」

「だけど、この実力行使は凄く恥ずかしいんだけども…」

「そこは嬉しいって言うと良いですよ。さぁ、援軍が参りましたよ」

「マスター来たよー」

「たまには、ちゃんと相手して貰わんとな」

「うん、平等にするべき、平等に」


セリナの台詞を切欠にぞろぞろと集まってくる。でも、こんな事したらなんか僕の評判がすごーく落ちていく気がする。セリナやミミ、白夜やヒロコまで友達が居るっていうのに僕にはトリックスターの面子しか友達が居ない! 師匠は友達というか師匠だし。僕だってもっと友達が欲しい…


「あの、エリーさんは何故ここにいらっしゃるのでしょうか?」

「援軍として居る。当然」

「それを言うならここはミミだけで十分だよ? これ以上は無いってぐらい見せつけちゃうし」

「主よ、魔石獣は明日倒しに行くのか? 結局延び延びになって欲求不満がたまりまくりじゃぞ?」

「がんばれマスター、骨は拾って上げるよ☆」


よくよく考えれば、僕の周りには結構な頻度で誰かがくっつきにくる。そんな状態で僕が友達を作るのってすっごく難しいよね? だから、一年近く一緒に勉強してるのに友達が少ないのって僕のせいじゃないよね? 無い…よね? ハルトを見ればなんとも気の毒そうな表情で僕を見ている。うん、ハルトは分かってくれてる。この状態はごうごう燃え盛る家の中で爆弾を持ってうろうろしているのと同じって事を。だいたいが仲が良いはずなんだけど、ちょっとした切欠でヒートアップするんだ。だから、可愛い女の子達に囲まれて羨ましいという目で僕を見ている君達。それは間違いだからね? ここに座ってると身を削られていく思いのほうが強いからね?


「では、ひざの上は譲って貰います」

「「むー」」


全然話を聞いてなかったせいで、どういう経緯でそうなったか分からないけど気づけばセリナがひざの上に座ってきた。だいたい、ミミに負けてわたわたしてる事が多いのに今日は珍しく勝負に勝ったのねセリナ。うん、僕の机ってどこにいっちゃったんだろう…?


「アースさんはいらっしゃいますか?」


この声はやばい!


突如投げかけられた声に身をすくませる僕を怪訝そうに見やるセリナ達。そして、レインボー先輩に誰も声はかけないが、視線でハーレムの中心を指し示すクラスメイト。こんな時ばっかり良い連携するよね、君達。


「なんですか、これは? 廊下で騒いだだけでは飽き足らず、教室内で女子を侍らせて悦に入ってるとは… そういえば生徒会長ともなにやら親しげにしてましたわね、あなた」

「ええっと、誤解だと思います?」

「ほぉ、この状態でそんな戯言を言えるのは性根が相当な事になってる様ですわね。放課後に呼びに来ますから、逃げないように」

「えっと、何の用事でしょうか?」

「呼びに来ますからね?」

「はいぃ」


鬼のような形相で言い切るレインボー先輩に余計な事を言う隙は無かった。これは放課後に罰という名の処刑がありそうです。骨は拾ってくれよヒロコ。


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