巨大兵器特攻
「あれっ!?」
ふと気付けばホワイトファングに乗っていた。微妙に細部が違う気がしないでもないけどこの慣れ親しんだコックピットはホワイトファングで間違いない。てかあれ? 乗り込んだ覚えなんて無いんだけど。
「何をぼやっとしておる主よ! おぬしの楽しみにしていた巨大ロボット戦じゃぞ?」
「へぇっ!?」
よく目を凝らして見れば、機体の正面二キロ程に一体のフレームが見える。え、あれ? 二キロも離れてこれだけ見えるって、でかくない? と思った瞬間向こうがこちらに気付き極太レーザーを放ってきた。
「ってぇ!?」
すんでの所で回避できたけど、装甲が一部溶けてしまっている。ホワイトファングの装甲を溶かすなんてやるじゃないか。
「すまん、エネルギーの収束を感知できんかった。察するに今のは威嚇射撃じゃぞ。気を引き締めてかかれよ」
「今ので威嚇っていうの? なっかなかに燃えるシチュエーションだねぇ」
あれだけの熱量を一瞬で放ってくるデカブツ君。しかも全力じゃないって事は、本気で撃ったら凄いだろうねぇ。まぁ本気で撃てないのかもしれないけどね。
「オプション展開! 全武装チェック! まずはなんとしてでも接近するよ!」
「了解じゃ主」
彼我の距離は二キロ弱。この距離を縮めなければ勝利は難しいだろう。そう思っているとデカブツは右手をこちらに向けていた。
「くるぞ!」
ホワイトファングの言葉通り、でかぶつから何か不定形な物が連射される。ぶよぶよと膨張と収縮を繰り返しながらこちらに向かって飛んでくるエネルギーの塊のようだ。
「一発も当たるなよ、かなりの威力じゃぞ」
「了解!」
伸びたり縮んだりを繰り返しながら飛んでいるので、回避しずらいが当たると一発アウトっぽいので必死に回避を繰り返す。時折、誘導されているのか急激にこちらに向かってくる塊もあったりしたけど、ホワイトファングのサポートでなんとかすり抜ける。
「ライフル!」
「おおよ!」
すり抜けた先に、塊の第二陣が迫ってくるのを見てライフルを放つ。一秒ほど開放して塊をなぎ払うように射線を動かす。って、うわっ!?
とっさに展開したエナジーフィストで、威力を弱めたけど少し抜けてきたせいで機体にダメージを負ってしまう。デカブツを見れば何かのフィールドが消えていく所が見える。防御するだけならまだしも、反射してくるとか嫌らしいフィールドだ。
「主!」
一瞬ぼけっとしていたせいで、塊の接近を許してしまう。やばい直撃する?! とっさに手に持っていたライフルを振り上げ塊にぶつけながら、回避を試みる。ライフルがぶつかった塊は何も抵抗を見せる事無く、ライフルを溶かしてしまう。だけど、そのおかげで塊は縮み、回避できる余裕ができた。
「油断禁物じゃ。遠距離攻撃はほとんど効かぬかもしれんな。次は実弾で試して見るか?」
「うん。でも止まってる暇は無いから空中で撃つよ」
「それじゃと、照準が甘くなるが…あれだけでかければ大丈夫か」
「そういう事。じゃあいっくよぉー!」
空を飛んだまま百五十五ミリカノン砲を両手でしっかり掴む。本当は肩に取り付けて座った体勢で撃つものだけど、今回は精度を求めていないのでこれでいく。
「てぇっ!」
バッガアアアアアアン!
耳をつんざく爆音が響き、凄い勢いで吹き飛ばされそうになる機体を必死に制御する。おかげで両腕で固定していたカノン砲も何とか無事だ。下手な事をすると銃身がまがっちゃうもんね。
「って避けた!?」
「あのでかさでああも軽々と避けるか。一筋縄ではいかんのぉ主よ」
まっすぐにデカブツに吸い込まれるかに見えた弾頭は、するりと回避されてしまう。これだけ離れてて、あんだけ移動してるんだから相当な速さだ。
とか考えていたらデカブツの指が光った。
「なんとぉっ!」
指からなのに極太レーザーって、どんだけでかいのよ! 塊を出しながらも指先からレーザーを次々に連射してくる。もちろん塊にあたっているのはお構いなしで、近づこうとする僕を牽制するかのように、レーザーを放ってきていた。
「これって、近づいてもやられそうになったら、全力で逃げられそうな気がするね」
「じゃなぁ。フィールドを制限するしか無さそうじゃ」
「できる?」
「任せろ。じゃが、その間サポートはおざなりになってしまうが良いか?」
「わかった」
そう僕が返事をするや否や、エンジンが甲高い唸りを上げて動き出す。そして、ケージが一瞬目の前に現れたかと思うと、すっと消えてしまう。
「よし、これでここから半径三キロのバトルフィールドが出来上がった。あとは主の好きなようにやれ」
「ありがとうホワイトファング」
これでフィールドは限定された。あの動きの素早いデカブツを叩きのめすには近接攻撃で直接ぶった切っていくしかないだろう。だけどそれにはデカブツの動きを止める必要がある。となれば、不利は承知で射撃戦で嫌がらせをしていくしかない。先読みレーザーとカノン砲の連携で少しずつでも削っていこう。
「観測ビットとハンター射出! 目標はフィールド発生装置の破壊。無理なら別の手を考える」
「わかった」
頼りになる相棒ハンター。やっぱりこういう自律攻撃型のオプションって大事だよね!
「そして、カノン砲の連射だぁ!」
ハンターだけに攻撃を任せる訳にはいかないので、カノン砲で援護射撃を行う。いや、こんなでっかい奴で援護とかいう表現はどうかと思うけども。
さすがの塊もカノン砲の威力を消しきれないようで、射線上にある塊は綺麗に片付けられていく。撃っては冷やし、撃っては冷やし、反動で行きつ戻りつしながらも少しずつデカブツに近づいていく。
一発もかすりもしないカノン砲だけど、おかげでハンター達がデカブツに取り付く事ができたようだ。だけどデカブツが、でかすぎるので細かい様子があんまり分からない。ん、そろそろ観測ビットも準備ができたようだね。
「さてさて、少しは効いておくんなさいよっと!」
気合をこめてカノン砲を撃つ。そして遅れてディスティニーを発射する。
胸部前面にまばゆい光が溢れ、デカブツの方へ集束した光が向かっていく。
計算する為に一瞬のためが必要だけど、デカブツはレーザーに吸い込まれるように動く筈。レーザーが当たれば反射フィールドが作動すると思うので、急いで移動する。
だけど思惑に反してデカブツはレーザーを反射せずに直撃を食らっていた。とは言っても、巨大な手の平で受け止めているのだけども。今、フィールドの制限にパワーを回しているせいでディスティニーの威力もフルに発揮できていないようだ。
手首から先だけ蒸発したデカブツは、ディスティニーの威力を認めたのか距離を取ろうと後退する。だけど、残念。ホワイトファングがフィールドを制限しているので、それ以上は後退できないよ。
カノン砲の連射速度を落とし、両腕の補修を行う。さすがのホワイトファングもカノン砲を腕で持ったまま射撃するのは無茶だったようで、攻撃を食らっていないのに両腕はひどい状態になっている。駄目だね、カノン砲を撃ってるとひどくなるばかりだ。
デカブツは僕の接近を阻むようにレーザーを連射してくる。だけど、そろそろその攻撃は慣れてきたので、驚く事無く避けていく。ただ、これは牽制程度の出力なはずなので、いつ本気で撃って来るかだけは気をつけてはいる。
よし、ここは少しエナジーフィストを試して見よう。
カノン砲をしまい、両手をフリーにする。そして、両手を合わせるように構え、そのまま腰ダメにねじり、ぐいっと広げる。すると、両手に光の槍が現れる。
「こいつはどうだっ!」
大きく振りかぶって勢い良くデカブツに投げつける。いまだ辺りに漂う塊の間を縫って槍はデカブツ目掛けて一直線に駆け抜けていった