無双で決着!
なんと言って慰めれば良いのだろうか。
今、セシリアはしゃがみ込んで泣いております。気づけばこんな事になってました。
効くのかどうか良く分からないけど、とりあえず後頭部をとんとんと軽く叩き上を向きながら考える。うん、師匠もどう声を掛けるべきか悩んでいるようで、しきりに僕に向かってアイコンタクトをしてくる。できれば、師匠に師匠らしい所をここでも発揮して欲しいなぁって思うのは駄目?
セシリアとの決闘はなんともしまらない形で中断してしまった。
原因はパンツ。
いや、何を言ってるか分からないと思うが事実なんだ。女の子って可愛く見せる為にスカートを短くしてる子もいるじゃないですか。そしてけしからん風がいたずらをして、眼福を与えてくれる。ありがとう風。うん、話が逸れた。えっと、セシリアもやっぱりそこは女の子なのでご他聞に漏れず、なかなかに短い。細すぎず太すぎない健康そうで柔らかそうな太ももを、惜しげもなくさらしている。足もスラリと長いので非常に見栄えが良い。
だけど決闘にそういう格好してくると、大変な事になる。
何かほかの事に気をとられていたのか、セシリアは制服のまま決闘を挑んできた。僕も最初とくに気にせずに戦いだしたんだけど途中で意識せざるを得なかった。そう、セシリアのあの剣技のせいだ。あの技自体は僕も覚えたいぐらいで、非常に使える技だと思うんだけども、結構な風が舞うんだよね。で、短いスカートを履いてるセシリアがそんな技を使うとどうなるか分かるよね?
そう、パンツ無双。
決闘の最中に見えてるとか指摘する訳にもいかず、なんとか耐えていたんだけど余所見していると僕も痛いのでセシリアの方を見る事になる。舞い上がるスカート、視界に飛び込んでくる白い脚線美とその根元。意識を攻撃に集中しようと何度も試みたり、攻撃方法を解析する事で意識を逸らそうとしたんだけど、やっぱり視界に飛び込んでくる刺激的な情報が結局勝ってしまい、僕は鼻血をだしてぶっ倒れた。セリナとミミのおかげでそういう事に耐性が付いたと思ったんだけどそうでも無かったみたい。
でも、その刺激的な情報はしっかり心のメモリーに保存しちゃった! 具体的に言うなら衛星に映像として保存してるから、いつでもじっくり隅々まで見れる!
セリナとミミに言えば、そんな事をせずとも進んで見せてくれそうな気もするけど、やっぱり天然物って貴重だと思うんだ。そして、むっつりスケベと自覚のある僕はそんな事を頼むなんてできるわけがない。
「えっと、セシリアごめんね。見えてたんだけど、言うタイミングがなくって・・・」
ひんひん泣いてるセシリアがちらっとこっちを見た。そして、気まずそうに立っている師匠のほうも見る。
「・・・すけべ」
「えぇっと、ごめん」
「すまん」
なんというか、僕達に非は無いはずだけどここは大人しく謝るべきだろう。うん。顔を真っ赤にして目を潤ませているセシリアに逆らえる筈がないし!
「この勝負、私の勝ち?」
「えーっと、まぁお色気攻撃でやられたって事になるかなぁ・・・」
「ばっ!?」
あああああ!? 思わずポロリと本音というか、パンツ騒動を思い出させる事をつい言ってしまった! 師匠も視線でこのバカと言っている。
「コージのすけべ。でも勝ちは勝ち・・・よね?」
ぐずぐずと鼻を鳴らしながら上目遣いで尋ねてくる。セシリアは美人だ。だけど、小さな子供みたいにそうやってると物凄く可愛く見えてくる。
「えーっと、はいセシリアの勝ちで良いと思います」
「・・・思います?」
「いやセシリアの勝ちだ。そうだなコージ!」
「はい、その通りです!」
これ以上、機嫌を損ねてくれるなと言わんばかりに言葉を畳み掛けてくる師匠。フォローありがとうございます。意外と僕も負けず嫌いのようで、こんな時でも負けを認めたくない気持ちがあった。
「ふふっ、良かった。勝てなかったら、ずっとこのままだったもん」
「えっと・・・?」
「あ、うん、ごめんね一人で納得しちゃってて。こないだの事、ずっと謝りたかったの。だけど、中々言い出せないしハルトにも反省の為にも、しばらく謝るなって言われるし。でも、毎日となりでコージが緊張してるのを見て、申し訳無くなっちゃうしで・・・」
反省の為にも謝るなっていうのが良く分かんないけど、これはハルトの差し金だったって事は良く分かった。ここ最近の胃の痛さをハルトに分けてやりたい!
「でも、あの日から私達も頑張ってるの。バルトなんか、皆が怪我しまくるもんだから、ぶっ倒れるまで魔法を使いまくってるし」
「またなんでそんな無茶してるの?」
最近、五人で集まって何かしてるなぁとは思ってたんだけど遺跡で無茶してたのかな?
「痛感したからよ。コージの方が明らかに私達より格上だって」
「え、別に格上とかそういう物じゃないと思うけど」
「ううん、そうなのよ。測定でコージって私達より下だったじゃない? だから、どこかで私はコージより強いって思ってたんでしょうね。だから、この間コージにつっかっかちゃったんだと思う」
今なら前よりは随分近づいてると思うよ、うん。
「だけど、よくよく考えてみたらそんな能力でも私達とそんなに変わらない強さだったのよね。あれから随分コージは鍛えてるから、きっと凄く強くなってるんだと思う」
「師匠が無茶してくれるからね」
「抜かせ。腕立ても腹筋も碌にできなかったお前を誰ができるようにしてやった?」
「普通はいきなり五百回とか無理だからね?」
うん、良く師匠のしごきに付いていけたよね。まぁ最初の頃はあまりの辛さに師匠を恨んだりもしたけど、今じゃいい思い出だ。
「それにねコージの足手まといにならなくなったら謝っても良いって言われたから、すっごく頑張ったのよ?」
「えーっと、それはそのぉ・・・ありがとう?」
なんか恥ずかしいな。でも、僕も少しきつく言い過ぎたからそこは謝りたいんだよね。
「そのセシリア。あの時は・・・」
「駄目っ! まず私に謝らせて」
手で僕を制してセシリアがじっと僕の目を見つめてそう言ってきた。そして勢い良く頭を下げてきた。
「コージ、この間はごめんなさい。心配して言ってくれたのに、ちゃんと聞かずにつっぱねてしまって」
「ううん、こっちこそキツイ言い方しちゃってごめん」
「仲直りしてくれる?」
「勿論!」
やっとセシリアが笑顔になってくれた。しっかりと握手をして仲直り。はー・・・なんだか凄く長い間喧嘩してた気がするよ。
「うむ、やはり決闘は良いものだな。思った通りだ」
「・・・何言ってるんですか、師匠?」
「ん? コージがぐずぐずと悩んでるから、この場を設けたんじゃないか。感謝していいぞ」
いやまぁ、結果的には仲直りできたんだけど普通はこんな事で仲直りとか無いからね? むしろ危ない事だと思いますよ?
「まぁ、それは横に置いて。それよりも師匠! あの手を出さずに戦う行儀の悪い戦い方はなんですか! あれですか、ハンデのつもりですか?」
「当たり前だ馬鹿。俺が魔格闘でおまえに負ける訳がないだろうが。脚だけで戦えばちょうど良いだろう? それにあれも馬鹿にしたもんじゃないぞ、思いつきでやってみたがあれはあれで強かった」
「え、練習してたのを使ったんじゃなくて、ぶっつけ本番?! 馬鹿にしてますね師匠!」
研究に研究を重ねて編み出した構えって訳じゃないのか! その割にはなんか戦いなれてた感じがしてたんだけど。
「まぁ勝つのが目的じゃなかったしな」
「あれだけ痛めつけといて勝つ為じゃないとか、どんだけサドなんですかっ?!」
「普通だろ?」
駄目だこの師匠。決闘させる為に呼んでおいてダメージを与えるとかひどいよね? ある意味セシリアに対するハンデだったのかなぁ? 戦闘も魔格闘しばりだったし。
「ヴァイスとコージって仲がいいのねぇ・・・」
なおもぎゃあぎゃあ言い合ってる僕達を見て、ちょっとあきれ気味にセシリアが呟く。まぁ毎日飽きもせず鍛錬してる仲だしねぇ。仲良くならない方がおかしいと思う。
「いや、俺はコージが嫌いだぞ。主に魔格闘を自分が編み出したみたいな顔をしてる所が」
「ええっ!? そんな顔してませんよ?! それに僕が編み出した技だってあるのはあるじゃないですかっ!」
「それが気に食わん。俺が思いつかずになんでおまえが思いつくのだ」
「言いがかりだっ!?」
そんな僕たちの様子を笑いをこらえながら聞いているセシリア。いいよ、思い切り笑ってくれても。でも、セシリアと仲直りができて本当に良かった。まぁちょっとは師匠に感謝しても良いかもしれない。・・・ちょっとだけね。