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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
出会い
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セリナの実力


ヒューイックの町に来て三日目の朝。

昨日は嫌なことがあったけど、気を取り直して今日は頑張るぞ!


食堂で朝食をとり、部屋に戻って狩りの準備をする。昨日無くなった分を取り戻す勢いで今日は、ちょっと遠くまで行く予定なのだ。町の近くの獲物はまだ居なくなったままだろうし、あまり早く町に帰ってきても昨日の奴に鉢合わせしたりしたら、また嫌な目にあうにきまってるからだ。


「よっし、準備オッケ。セリナとヒロコを呼びに行こっと」


コンコン


「コージだけど、二人とも準備できた?」


「はーい、待ってねぇ~」


とセリナの返事と共に扉が開き、ヒロコが飛びついてきた。


「はーやく、いこ~!」

「オッケ! 今日はちょっと遠くに行くから、昼ごはんを買って行こう」

「うん!」


ふと、扉のほうを見るとセリナがなんだか飛びつきそうな顔をしていた。


「? どしたのセリナ」

「な、なんでもないです。ちょっと遅れを取っただけです・・・」


残念そうな顔をして、こっちを見てるセリナ。ヒロコみたいに飛びつきたかったのかな?

いやいや、セリナは女の子だしそんな事はないか。


「ん? まぁ、行こっ?」

「はいっ」


元気良く笑顔でこたえてくれるセリナは今日も可愛い。良かった、昨日の事は吹っ切れたみたいだ。やっぱりこうでなくっちゃね。


「おいガキ」


うくぁ、こんな時に・・・


「はい、なんですか? 貴族様」


笑顔笑顔。とりあえず、無茶を言われないように笑顔で乗り切ろう。


「今日もしっかり持ってこい。いいな」


と、僕の笑顔が効いたのか、そう言うだけ言って去っていった。せっかく良い気分で出発できそうだったのに、ついてない。とほほ。


「セリナ、行こ?」


貴族が怖いセリナは今のだけで、びくびくと脅えてしまっていたので、そっと手を繋いで引き寄せた。そして、背中をぽんぽんと叩いてあげる。


「大丈夫、セリナは僕が守るから。あんな奴の好きにはさせないからね?」


言い聞かせるように、目をしっかりと見てセリナを安心させるようにそうやって、しばらくしているとセリナも安心してくれたようで、そっと笑顔を見せてくれた。


とりあえず、出発だ!






 こないだの狩場から、もっと森の奥。獣道がかろうじてあるような、そんな奥地へとやってきた。この場所は、エドの情報でもさすがにここらへんの穴場の情報はなかったので、自分達で獲物を探すことになった。


レッドベアにホーババードにキラースネーク。こいつらの素材を持っているので、昨日の内に作っておいたマジックアイテムにセットしてみる。


まずはレッドベアから探して見よう。


「んー・・・あっちのほうに反応があるねぇ。慎重に進もう」

「では、補助魔法をかけておきますね。“我が力に答え、その身を護りたまえ。ホーリーコート!”」


ふわんと、体の周りに魔力の膜が張られるのを感じた。防御魔法かぁ。


「セリナありがと、よし行こう!」

「はい」

「うん」


そろそろと慎重に、反応のある方向へ歩を進める。しばらく、そうやって進んでいくと前方にレッドベアの影が見えた。どうやら、パニモアと呼ばれる猪みたいな動物を食べている最中のようだった。


身振り手振りで、セリナとヒロコに伝える。すると、セリナが攻撃するというので僕は待機して見守ることにした。


杖を構え、とんとんと杖の頭を叩き、何か複雑な腕の動きをしたかと思うと、急に現れた火の玉がレッドベアめがけてすっ飛んでいく!


ボォッ! グギャァアアアアアア!


森の中で火の玉やめてぇえええええ!って一瞬心配したけど、火の玉はレッドベアを燃やしているだけで、ほかに燃え移る事がなかった。良く考えたらセリナって、森で長い間暮らしてたんだから、そこら辺は僕より分かってるよね。


「“其は戒め、我が敵を留めたらん! ラシャラ!”」


何か紐状のものをレッドベアに投げつけながら呪文を唱えるセリナ。悶えてるレッドベアが目に見えて、動きが緩慢になった。


「“炎よ炎よ炎よ! 踊り来たりて舞しめせ! バーンウォール!」


さらに連続で、今度は炎の壁を呼び出すセリナ。このままレッドベアに何もさせずに終わりそうな勢いだ。


だが、そこはレッドベア。驚異的な生命力で炎の壁をなんとか転がり出てきてセリナのほうに向かってきた。だが、その動きは非常に緩慢だ。


そしてセリナは、杖の頭をまたとんとんと叩き、今度はさっきとは違う身振りをした。


グガッ!?


レッドベアが急に小さくなった・・・? と思ったけど良く見ると、レッドベアは落とし穴に下半身が埋まってしまったせいで小さくなったように見えただけだった。


「“炎よ炎よ炎よ! 我が前で踊りたまえ、バーンピラー!」


腰まで埋まってしまったレッドベアにまた炎が襲い掛かる。今度は先ほどの壁より小さめだけど、すごく濃い感じがする。・・・なんとなくだけども。


そしてそのままレッドベアは動かなくなった。


不意打ちとはいえ、セリナはレッドベアに何もさせずに勝ってしまった。魔術師ってやっぱり凄く強いんだなぁ。


「あ、すみません。これだと、毛皮が駄目になってしまいますね・・・」

「あ」


そういえばそうだ。肝はなぜか、火に強いので大丈夫らしいけど毛皮は、駄目になっちゃったね、これは。けど、まぁいっか。


「いいよいいよ。でもセリナってやっぱり魔法の使い方が上手だねぇ」

「うふふ。そうですか? そう言って頂けると今まで色々研究してきた甲斐がありますねぇ」


よくよく考えて見ると、ケイン兄さん達のパーティで苦戦していたはずのレッドベア。

それをたった一人で魔法で仕留めちゃうセリナってひょっとして物凄く強い・・・?


とりあえず、道具がちゃんと獲物を探す事ができるって分かったのでこの広い森でも、そんなに苦労しないで獲物を探す事ができるね。まぁ、素材を持っていない獲物は探す事ができないんだけどもね。


「よーし、この調子でがんばろ~!」

「はい」

「おー!」


返事だけは元気なヒロコだった。君、空気だよ空気。


魔法でストレス発散・・・したっぽい。


はまると魔法って強いですよね。・・・はまると。

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