ウィスパー?
「理屈がさっぱり分からぁあああああん」
グラビティの作用は分かるんだけど、どういう理屈でこれが重力を操れるのかがさっぱりわからんちんです。簡単に言うとクリスタルとちょろちょろっとした部品とセンサー類が組み合わさったなんだけど、たったこれだけでなんであの威力を実現できるのか理屈がさっぱり理解できない。
とりあえず、部品をコピーして組みかえれば使えるんだけども、やっぱりモヤモヤっとする。そんな僕の周りを何か仕事をくれと言わんばかりに、こちらを見ているプッチくん。いつまでも作業ロボットとか呼ぶと可哀想なんで、名前をつけてみたら意外と喜んでいるようだった。
「今のところ、プッチくん達に手伝って貰う事は無いんだ。ミスリルが掘れるようになったら手伝って貰うかもしれないから、その時はお願いね」
ぶんぶんと手を振り上げ喜びの動きをするプッチくん。最近、大量生産してないので出番が無くて暇を持て余してるみたいなんだよね。何か無いかなぁ。
「フレーマー、ミスリル買ってきたよー」
「あ、ありがとう、そしてお帰り。ミスリルが買えたって事は・・・」
「めでたくBランクになったよ。で、一人で潜ってきた」
「おー、おめでと。で、一人で遺跡はどうだった?」
金策がミスリルを買って帰ってきたという事は、それなりに稼げたという事だね。僕もちょっとぐらい身体を動かしに行こうかなぁ。
「変なメカ見つけて来たよ。めっちゃてこずった!」
「え、見せて見せて!」
「ほいな、バラバラなのは我慢してよ」
え、バラバラなのか。いつもみたいに綺麗にばらしてないって事は相当てこずったんだね。うわ、ほんとにバラバラだ。スーツの必殺技でずんばらりんにしたのかな。
「全部で四機分の部品があるはずだよ。全部同じ形してるんだけど、色は違うんだけど色ごとに役割が決まってて、敵に合わせて色を変えてくるんだ」
「ふぅん? 連携がすごかったの?」
正直そんなてこずる敵には見えないんだけど?
「連携もあるけど、一機厄介なのが居てね。どんだけ大破させても一瞬で修理しちゃうやつが居たんだよ」
「そいつだけ、先に狙えば・・・ってそれぐらい試すか。何か問題あったの?」
「うん、敵に合わせて色を変えるって言ったでしょ。白い奴、えっと修理しちゃう奴なんだけど、やられそうになるとすぐに色を変えて逃げちゃうんだよ。そのくせ、修理の為なら強引に突っ込んでくるから、いつまで経っても倒せないんじゃないかって心配したよ」
自分の説明だけど、良く分かんないや。オーブ使ってロードした方が早いかな。僕がクエスチョンマークを頭の上に浮かべてると、苦笑しながら金策が提案してきた。
「記憶を共有したほうが説明の手間が省けるね。なんというか、細々と説明するのが面倒くさくなってきたよ」
「そんな事じゃ、はやくボケちゃうよ。頭は使えるうちに使わないと」
「いや僕は肉体労働専門で」
同じ僕なのに何を言ってるんだろうねぇ?
「根っこの部屋に行こう。ぱぱっと他の皆の一日も知っておきたいしね」
「了解、そろそろ根っこも戻ってるだろうしこれからの事も話しておこうか」
金策と一緒に根っこの部屋に向かう。格納庫を後にして屋敷へと向かう。屋敷の中はなんか甘い匂いが漂っていて、僕も何かつまみたくなってきた。
「さっきまで、お菓子を色々作ってたからね。クレープにクッキーにマカロン、あとプリンも作らされてたなぁ」
「またなんでそんな事に?」
「マカロンが無くなっててミミがね」
「あーそりゃご愁傷様。でもミミってあんだけ甘いもの食べて全然太らないとか反則だよねぇ。いや、出る所は出てるから成長してるのか?」
「意外とお腹は出てたりして?」
「どうだろうねぇ? 二の腕はぷるぷるしてたっけ?」
金策としてたそんな話をミミがこっそり聞いてたのは、また別のお話。
「おーい、根っこ報告に来たよー」
「おー・・・」
なんかスルメを齧りながらぐったりとしている根っこ。甘い物成分を摂りすぎたから、辛いもの分を補ってるみたいだね。
「あーそだ。そのオーブはもう使わなくて良いよ。いちいち報告に来るの面倒でしょ?」
「いや、別に面倒じゃないけど何か別の方法を考え付いたの?」
ぐったりしながらもやる事はやってるのね。でもどうすんだろ? と考えてると、根っこが指を上に向けた。上?
「あぁ、衛星経由で連絡できるようにでもしたの?」
「ご名答。てなわけで今から説明するよ」
“あーテストテスト。ただいまマイクのテスト中”
マイク持ってないじゃん。
“えー根っこです。突然の放送ごめんね。オーブに記録するのが面倒くさ・・・もとい皆が大変だと思ったので仕様変更しました。基本的に皆の情報は僕こと根っこに勝手に流れてくるようになってます。他の皆は人差し指を立てて「セーブ」と「ロード」をして下さい。それだけでナノマシン経由で衛星に記録が保存でけます”
「でけますって。で、根っこがしてる一斉放送? みたいなのはどうやってすんの?」
ちっちっちと指を振って少し待ての顔をする根っこ。自分なんだけど少しイラっときた。
“で、全体放送だけど衛星に意識を飛ばして貰って後は普通に頭の中で会話してみて”
“こんなかんじ?”
“こう?”
“声だけじゃ誰か分かんないねぇ”
皆好き勝手会話し始める。なんだかんだで皆新しい物好きだし。あ、僕もか。僕も衛星に意識を飛ばす。すると他の僕が居る場所がぼんやりと分かる。この状態で頭の中で話をすれば良い?
“で、これって衛星に記録されてるって事?”
“うん、そゆこと。あそこなら誰にも触れないでしょ?”
“なんかあった?”
“オーブが誰かに触られてた感触があった。勿論屋敷の中の人間以外ね。だから大慌てでこの方法を考えた”
“セキュリティは何も反応してなかったけど?”
“だからやばいんじゃない。僕達の監視を掻い潜ってくるなんて敵ながら天晴れじゃない?”
“天晴れとか暢気な事言ってる場合じゃないでしょ。セキュリティどうすんの”
“もう対応済み。だけど、警報は鳴らさないであくまで監視と追跡をするようにしてる。こっちが気付いてるって分かったら向こうも警戒して来なくなるかもしれないし”
“セリナ達は大丈夫なの?”
“保険はかけるつもり。プレゼントという形で身を守るアイテムを渡そうと思う”
“この話は誰にもしちゃ駄目だよ。どこで聞かれてるかさっぱり分からないし”
“やっぱり貴族関連?”
“良く分からないんだよね。でも一番可能性が高いのは貴族だと思う。他に恨みかってそうな所ってそもそも思いつかないし”
“とりあえず、そういう事で皆気をつけるように”
“何勝手に仕切ってるの監視の一号”
“いや、ちょっとやりたくなった。今は満足している”
“へいへい。じゃそゆことで”
「とりあえず、竜王に認められるにはどうすれば良い?」
「ドワーフのガドさんは、ドワーフバリスタで飛んで認めて貰ったらしいんだけど・・・」
何事もなく全体会話とは関係ない話を始める根っこ。どこで聞いてるか分からないというから、そういう会話をしてもいないというスタンスなんだろう。ほんと貴族は色々ちょっかい掛けてくるよね。
「竜王は風竜って言ってたよね? 魔法で飛んでみせたら満足するんじゃない?」
「生身でやるならそれしか無いかぁ・・・人間大砲もおもしろそうだけど」
「誰が飛ぶのさ?!」
「勿論、金策でしょう。話つけてくる役目は金策なんだし」
「嫌だからね? もっと格好良い方法考えようよ?」
まったく、格好悪いから嫌とか贅沢者め。格好良いじゃん人間ロケット。あ、ジェットパック背負って飛ぶのは駄目かな。
「ジェットパックってあんまり早くなさそうなんだよね。早さを求めるならでっかいロケットを背負って飛ぶ方が良いだろうし、それはそれで格好悪くない?」
「うーん、駄目かぁ。もっとインパクト欲しいんだけどなぁ・・・」
ど派手にいったほうが竜王も喜ぶよね、きっと。
「まぁ、とりあえず魔法で行くって事で。もっと派手で楽な方法があればそっちでも良いけど、僕の体がぶっ壊れそうな方法は勘弁してよ」
「はいはい。じゃあ竜王はよろしく頼むよ~」
僕はカルテットの分解をするとしましょうか。うひひ。