収穫なし
間違いない。白い機体は他の機体の修理を一瞬でしてしまう。こいつを倒すには一撃で部品を残さないように消し去るしか無い。もしくは四機同時に大破させるか、かな。今手持ちの技でそこまでの大技があったかなぁ・・・? 魔法だったら部品も残さず消し去るのがあるんだけど、詠唱と魔力を流し込むのにいかんせん時間がかかる。ヒーロースーツの必殺技は確かに強いけど一機だけしか倒せないし・・・
「まったく厄介な敵だなぁ、君たちはっ!」
突然叫びだした僕を、遠巻きにこちらを伺っていた四機のメカ(カルテット)は警戒するかのように、白い機体を庇う陣形を取る。
フォォオオオォオォオォォォォオォ・・・
カルテットに時間を掛けすぎたせいか、僕の背後からストレートベリーが襲いかかって来た。襲い掛かると言うかヒーロースーツの何かに惹かれてきてる気がしないでもない。
「邪魔っ!」
大きく手を振りかぶり、瘴気を掻き消すように空気をかき混ぜる。それだけで、呆気無くストレートベリーは存在が希薄になっていく。ある程度薄くなってから、頭部をひっつかみ瘴気の渦から一気に引き抜いた。
カラカラァン
これだけで、ストレートベリーは浄化される。あ、またでっかい珠が落ちてるや。指輪にさっさとしまっておこう。お土産がまたできた。
「ん・・・?」
あぁっ! この手があるじゃないか!
「くっふっふっふ・・・僕の欲望を満たしつつ、一機ずつ倒す方法があるじゃないか」
ADDしたストレートベリーを処理してる間も隙を見せてなかったおかげで、カルテットは先程から微動だにしていない。いや、なんか魔力を回復しているのかな? なんか魔力の流れを感じられる。周囲から魔力を取り込んでいるようだけど、メカなのに魔力をうまく扱えるんだなぁ。ま、それはさておき、気合い入れて頂くとしますか。
バーストガンもレーザーブレードも、腰に下げて素手の状態になる。そうして、ゆっくりとした足取りでカルテットへと向かう。今は青青緑白の構成だ。
そして、カルテットの警戒線を超えたんだろう。青い機体がゆっくりと近づいていく僕へと向かってきた。二機が直列に並びまっすぐこちらへと進んでくる。そのせいでその背後にいる緑と白の機体がよく見えない。
だけど、これはこれで丁度良い!
「シャイニングスタースラァアアアッシュ!」
居合いの間合いに入った瞬間、気合を込めて必殺技をぶちかます。レーザーブレードを鞘に収めた瞬間に五茫星がきらめき青い機体は、斬られた事を思いだしたかのように崩れ落ちる。
「その前に頂くっ!」
青い機体が崩れ落ちきる前に僕はすかさず左手を伸ばし、残骸となった青い機体の部品を次々に指輪にしまっていく!
ガギィン!
なんとか間に合った。二番手が斬りかかって来る前に倒した青の残骸を指輪にしまい終えて、すんでの所で青のレーザーブレードを受け止める事ができた。これで敵は三機。一機ずつ切り刻んで片っ端から指輪にしまいこんでやる!
“ファントムアタック”
六体の分身を出し、青い機体を取り囲む。一機を倒され慌てたカルテットは緑色を青にして投入してきたけど、遅い。
「“穿光”」
四方向からの刺突技で一気に細切れにし、分身を元に戻して悠々と部品を指輪へとしまう。今度は距離があるので、右手で牽制しながら着実に残さないように部品を回収する。これでカルテットはコンビに変更だ。白い機体がいくら一瞬で修理できても、部品が無ければ修理のしようが無い。ねじの一本たりとも残さず根こそぎ回収すれば、さすがに大丈夫だろう。下手するとねじ一本から再構築しそうだもんなぁ。
後は、一機ずつ細切れにしてすかさず回収するだけの簡単なお仕事です。ファントムアタックで一気に削って終了です。
「はぁ、ちょっと疲れた」
これ、指輪が無かったら何時まで経っても倒せなかったね。だって、戦闘不能から一気に全回復しちゃうんだもん。接近戦も遠距離戦も対応できるし防御も結構固かった。あいつらを倒すには、ほぼ同時に四機とも殲滅するか部品一つ残さずやっつけていくしか無い。ミミとセリナが入れば、楽だったね。ミミなら一機ずつ細切れにしていくのは簡単だし、セリナはあれぐらいの大きさのメカなら溶かしきるぐらいの魔法を持っている。僕もできるんだけど詠唱に時間が掛かるから、一人じゃどうしようも無かったんだよねぇ。
うーん、陣式の魔法もそろそろ考えると良いかもしれないねぇ。一人だと威力のある攻撃を出すのに不都合がありすぎる。百階層より下を目指すなら、こういった敵も増えてくるだろうし、攻撃手段は幅広く持っていた方が便利だ。いつもいつもミミとセリナがいるわけじゃないしね。
あーだけど、カルテットは取れる部品ちゃんとあるかなぁ・・・倒すの優先にしちゃったから本当にズンバラリンなんだよねぇ。あの変色機構は便利だし。まぁ僕ならわざわざ色を変えたりはしないけどね。
「ん~・・・どうしようかなぁ。カルテットはたぶんこの階層にはもう居ないだろうし他にやばい敵は居ないはず」
カルテットとの戦闘でちょっと疲れたので、休憩しないとだるい。小腹も空いたから、脇の小部屋でこっそりと隠れて休憩するとしよう。もう少し探索を続けたいしね。
結局、百階層の探索は特に何も見つける事もなく終了した。たぶん、フロアの半分ぐらいは探索できたと思うんだけど、全体像が掴めないからはっきりした事は分からない。今ままでの階層の広さから類推しただけだからね。それに、この階層にはかなり広い通路が出てくるようになった。これならフレームが移動するのに支障がない。
「しらみつぶしに探せばどこかにフレームが置いてありそうなんだよね」
百階層に無くても、格納庫へ直行するエレベーターがあるかもしれない。この遺跡内部でフレームを運用していたなら、必ずそういうのがあるはずだ。・・・たぶん。
「ただいまー・・・って、なにこれ」
家に帰ると、甘い香りが漂いなにやらリビングが騒がしい。根っこが何かデザートでも振る舞ったのかな? あ、マカロンがもう残り少ない筈だから作っておかないと駄目だね。
「おかえり金策。おまえマカロン食べすぎだろ。ミミが泣いてたよ?」
「いや僕だけで食べたんじゃなくて、お客さん来てたんだよ。根っこも知ってるでしょ?」
根っこも家に居たはずだから、知ってると思ったんだけど?
「ううん、学校さぼったから家の中でこそこそしてたし」
「さぼったから、家の中を堂々とうろつけないって事か。そかそか」
なんというか、学校さぼって家に居るとおおっぴらに遊べないよね。宅配便が来ても居留守つかったりして、家には誰にも居ませんよ~って、息を潜めちゃうんだよね。
「コージィ・・・マカロン・・・」
ぐずぐずと半泣きになりながら訴えてくるミミ。今から作るからなんか他の甘いもので我慢してて。って、クレープあるじゃん。
「いまから作るから、明日には食べれるから今はそこのクレープ食べててよミミ」
「あ、なんかミミは焼き菓子が良いみたい。クッキーもどきでも作ろうかって話してたんだよ」
「そっか、ミミは柔らかいのは駄目?」
「ううん、お口が固いのを求めてるの。固いのの口なの」
別にクレープが嫌だという訳じゃないらしい。
「お蔭様でゆっくり頂けます」
むぐむぐと切り分けたクレープをゆっくり咀嚼しているセリナ。うん、君は本当に上品だねぇ。それにひきかえヒロコときたら・・・
「やひがひもまっへるよ、まふたー!」
口が小さいせいか、食べる量は少しずつなんだけど口いっぱいに頬張る癖があるヒロコ。なんで右側ばかりに溜め込むんだろう・・・?
「食べてからしゃべりなさい。根っこ手伝って」
「あーはいはい。じゃ、大人しく待っててね。母さんはもうコスプレは終了してよね」
まだうさぎのままかよ。客観的に見てかわいいうさぎコスなんだけど、それが自分の母親となるとまた別の感情が浮かび上がってくる。
「うぅ・・・」
あぁっ、ミミがうじうじし出した。とりあえずもどきを作って我慢して貰おう。