抵抗
うぅむ・・・ホワイトファングの整備が目処がついたからちょっと眠ったんだけど、なんかすぐに目が覚めてしまった。変なテンションでずっと作業をしてたから、神経が昂ぶってたのかな? やっぱりフレームをいじるのって楽しいんだよねぇ。ん?なんか、部屋に違和感があるけどなんだろう?
「あれっ、ヒロコ? どうしたの?」
部屋をよくよく見渡してみれば、ヒロコがなんかぼーっと立っていた。手にはフレームの模型を持っている所をみると、それで遊ぼうとしたんだろうか? ヒロコって意外とロボットゲーム上手かったから気に入ったのかな?
「あれっ、マスターなんで居るの?」
ベッドから僕が見ている事にようやく気づいたヒロコが驚いた顔をしてそう尋ねてきた。声を掛けても上の空だし、なんか調子悪いのかな?
「なんでもなにも僕の部屋に居てなんで悪いのさ」
「学園は?」
どっちかというとそれは僕が聞きたい事なんだけども?
「白夜を僕の都合で休ませたから、今日は僕も休みだよ。ヒロコこそどうしたのさ」
「んー、サボリ?」
なんで疑問系なんだろうか、この娘は。そういえば、前に母さんがヒロコの様子がおかしいって言ってたけど、何か関係があるのか?
「理由もなくさぼっちゃ駄目でしょ。まぁヒロコは精霊だからあんまり学園で学ぶ事はないのかもしれないけどさ」
「そういうマスターこそ休む時はちゃんと教えてくれないと駄目じゃない」
「セリナ達にはちゃんと言ったけど?」
「あれぇ?」
なんだろう。ヒロコと僕のさぼるタイミングがたまたま重なったからこんな事態になっちゃったのかな? ていうか、フレームの模型は持っていかないで欲しい。
「で、ヒロコはなんでその模型を持ってるのかな?」
「え? あれ? えーっと、そうそう。ゲームできないから、これでも触って遊ぼうと思ったんだ。ボクもフレームに乗ってみたいし」
「ふむふむそれはとても良い事だ。それじゃヒロコの分もフレームを作らないと駄目だねぇ。金策君にがんばって貰おう」
フレームに乗ろうというその意気込みやよし! 女の子でもフレームに興味を持ってもおかしくないよね! そしてコンビネーションで巨大な敵を撃破するのである。うん。
「えーっと、じゃあお願いしようかな。あはは~」
なぜか、少し焦ってる様子のヒロコ。なんだろ? お金が掛かりそうだから遠慮してるのかなぁ?
「でもその模型は持っていっちゃ駄目だよ。それも一応レアメタルでできてるから、あとで使うつもりだし」
「はぁい」
「その代わりゲームはいつでもしに来てくれて良いから。やり方もちゃんと教えるし」
「ほんと?! やたっ」
なんか久しぶりにヒロコのはしゃぐ姿を見た気がする。色々忙しくて話する暇も無かったしヒロコも大人しかったからねぇ。これをきっかけにまた仲良くできると良いな。
「乱獲じゃぁあああああああ!」
ギルドランクがBになった僕はさっそく遺跡へと潜る。変身スーツを着た僕は、今までの鬱憤を晴らすように遺跡を駆け巡る。スーツの時の武装はちょっと違う。キラーマシンの武装を利用した銃を二丁に、レザーブレードを一本。あとは魔格闘による素手の戦闘と必殺技を駆使して敵を倒していくのだ。魔格闘の為に腕と足にすこしばかりギミックを仕込んだ手甲と足甲を装備している。
「トルネードキィイイイイイイイック!」
いちいち技名を叫びながら攻撃するのはお約束だ。いまハイマニューバが続々と生み出した子グモに絶賛囲まれ中なので、範囲攻撃技で一気に殲滅する。
「ソニックナックル!」
そして親グモのハイマニューバへ一気に詰め寄るパンチ技をお見舞いする。
パギィイィイン!
だけど、僕の攻撃はハイマニューバの直前でバリアみたいな物に阻まれる。しかし、ここからさらに僕は突き進む。
「トンファーブレード!」
トンファーなのかブレードなのか突っ込みたくなるけど、トンファーの攻撃が剣で斬ったみたいに相手を切り裂くのでこんな名前らしい。その攻撃でバリアを切り裂いたけど、ハイマニューバは前足を振り上げ僕に突き刺すべく、すごい勢いで槍のように繰り出してきた。
右、左、右、右、左と足とは思えない速さで、突いてくるがその全てが空を切る。そして、タイミングを見計らって足元へと詰め寄る。
「フライハァアアアイ!」
とか叫びながら、普通にアッパーを繰り出す僕。気分的にはぶっ飛べおらぁの方が合う。真下から突き上げた僕の拳をもろに食らったハイマニューバは、見事に天井にめり込み身動きが取れなくなっている。
「シャイニングスタースラァアアアッシュ!」
その状態からレーザーブレードで居合いをぶちかます。一瞬で五茫星を描くように剣閃をひるめかす。一瞬の間をおいて、ばらばらと落ちてくるハイマニューバ。スーツを着る前はそんなつもりは全く無いんだけど、これを着て戦い始めると何故か技名を叫ばずにいられない。しかもめっちゃ気合を込めてしまうという恥ずかしいオマケ付きである。でも、戦隊物とかってそういうもんだよね???
そして、手早くバラバラになったハイマニューバを指輪にしまい、次の獲物を探して移動を開始した。
そうやって五十階層から始めた乱獲は百階層に行くまでには、少し落ち着いてきた。いつもいつもレアなアイテムをゲットできる訳ではないので、こうやって乱獲して少しでも拾えるアイテムを増やしてお金を稼いでいく予定なのだ。つまりは質より量って事。オンラインゲームだとこんな事したら凄く嫌われるけど、遺跡の場合は大丈夫だよね・・・?
「さてさて、スーツを着たままこっから先に進んだ事無いけどやっぱり楽になるかな」
ヒーロー戦隊物のスーツを具現化して、僕に使いやすくメットの視界や武装の出し入れ、防御力やスーツを着た人間の能力の底上げなどをしているので、僕一人でこの先もやっていけるはずだ。色は赤だからすっごく目立つんだけどね。
手始めにカオティックブラウンと戦えれば、どれぐらいの強さになってるか分かるだろう。こいつはライオンのような容姿を持つ魔石獣で、セリナとミミが居れば楽に勝てる相手だ。なのでこいつに楽に勝てるようであれば、百階層でもうろうろできると思う。それにこいつのタテガミはより合わせて糸にすれば、かなりの強度を誇る糸になる。普通により合わせても凄い糸だけど、魔力を込めながらより合わせれば魔力耐性を持つ糸になる。その場合物理耐性は少し落ちてしまうけど、それでも両方の耐性を持つ素材はかなり貴重なので、結構いい値段になるのだ。
「だけど魔石獣だけあって擬態化されるとまったく分かんないんだよねぇ・・・」
魔石獣の特性の擬態化というか完全隠蔽といいますか。本気で魔石獣に隠れられてしまうとまったく感知できない特性があるので、僕のアイテムでも探せなかったりする。さすがに魔石獣が怪我をしていると、感知できるんだけどそれも完全じゃない。なので魔石獣と出会うのは本当に運なのだ。それが良いか悪いかは別として。
そして今もっとも出会いたくないのは、ストレートベリーという魔物である。なんかストロベリーっぽい名前なんだけど、こいつは瘴気を撒き散らしながら精神干渉をしてくる嫌らしい奴なのだ。しかも時々次元斬りという技を放ってくるので、油断もできない。遠距離からの攻撃もこの次元斬りで防がれたりするので、接近戦が有効なんだけどいつ次元斬りが来るかビクビクしながら、戦う羽目になるので胃に優しくない敵なのだ。ミミであれば攻撃が分かるので、回避も余裕なのでそんなに不安にならないんだけどね。
そして、悪運は僕に微笑んでるようで。
フォォオオオォオォオォォォォオォ・・・
地獄から響いてくるような声が僕に迫ってきていた。うぅ、ほんとになんで嫌な奴が真っ先にくるかなぁ・・・
「本気出して行くぞぉ」
さぁて、悪霊もどきを退治するとしましょう。