何ルートだ、これ?
「セリナありがとね。セリナがアピールしてくれたおかげで早くBランクになれそうだよ」
「うふふ、あとでご褒美くださいねっ」
ギルドから帰る道すがら、セリナに感謝を述べると弾けるような笑顔でそう返してきた。それならあとでと言わず、今すぐご褒美というかプレゼントを買いに行こう!
「じゃあ、ちょっと寄り道して帰ろう? セリナに似合いそうな服とかカチューシャっていうの? 見つけてるんだよね」
「え、え、え?! わたしの服ですか?!」
「うん、きっとセリナに似合うと思うよ!」
男が女に服を贈るのは・・・となにやら赤い顔でぶつぶつと言ってるセリナ。へにゃっと崩れてる顔も可愛いけど、何を妄想しているか聞くのはちょっと怖い気がする。
「では、早速行きましょう! ギルドの登録も予定より早く終わりましたからね。時間はたっぷりあるのです」
「だね、セリナさまさまだよ!」
そういって僕はセリナの手を握って、目的のお店へと足早に連れ立って行った。
セリナは緑色系の服を良く着ているので、淡い緑色のワンピースとショールを組み合わせた服を試着してもらった。ワンピースはシンプルなデザインだけど腰の辺りからスカート部分がふわりと広がっていて女の子らしいセリナには良く似合い、ショールもワンピースより少し濃い色でほどほどに胸元を隠してくれるので清楚な雰囲気をまとうお嬢様な感じに仕上がった。靴も良く分からないけど、いつものだと服に合わないから店員さんに見繕って貰った。カチューシャは本体はオレンジがかった黄色で全体的に薄く花柄が彫りこまれている物で、しかも少し角度を変えてみると花に色がついて見える不思議なカチューシャだったりするのだ。
「うん、思った通りよく似合ってるよセリナ。可愛い」
「あ、ありがとうございます、コージ。大事な時に着ますね」
「ううん、普段から着ててよ。大事にして貰えるのも嬉しいけど、着て貰った方がもっと嬉しいし、また何かあったら買って上げたいしね」
そうセリナに伝えると、顔を真っ赤にして頬を押さえ身もだえしている。毎日そんな事しちゃうんですか? そうなんですか? とかまたぶつぶつ言っている。
「じゃあ、頑張って着るようにしますね!」
「う、うん。ぜひそうして」
なんで頑張るのかは良く分からないけども、横で店員さんが何やらにやにやと笑顔で居るけど気にしないでおこう。
上機嫌のセリナと共に屋敷に辿りつくと、早速ランクスキップに向けての準備を始める。自分で造ったものはそれなりに自信があるから、きっと見て貰えればランクアップは間違いないだろう。さてさて、ランクアップの為のブツはどれにしようかな?
フレーム関連でいえば飛行ユニットを見せれば、分かる人には分かるだろう。分からなくても乗って貰えば理解できるしね。念のために魔石シートも準備しておこう。反転弾も今までに無い武器だろうし、これも準備しとこうっと。魔法とマジックアイテムは、「ギル」に創った魔法を込めて持っていけば良いよね。あ、意外と携帯電話もびっくりして貰えるかも。魔力が無くても遠くの人と話ができるアイテムだから珍しいだろうし、遠話って魔法で実現しようとすると、結構難しいみたいだもんね。
あ、準備が簡単に済んじゃった。
これじゃあ寂しいから、フレーム関連で何か追加したほうが良いかなぁ・・・ま、いっか。あんまり手の内を出し過ぎると後で困りそうだしね。それにぱっと思いつかないや。とりあえず、僕は金策が目的だから高額アイテムを落とす魔物をしっかり把握しておこう。僕が五人になった事だし、自作フレームも五体あったほうが良いだろうから、ますます目標額が跳ね上がっちゃったんだよね。他の僕とは相談していないけど、まず間違いなく五体のフレームを作る事は賛成するだろう。
ようし、ぱぱっとランクを上げてどんどん金策して行くぞぉ!
「ん~・・・っ!」
監視衛星からの映像をずっと見ているだけっていうのは、かなり疲れる。結構色々な場所を監視しているので、一個のモニターだけをずっと見ているという訳には行かないからだ。フレームが移動しているのは、さすがに目立つから見つける事ができたんだけど森の中を忍者みたいな奴が移動しているのは見つけるのは難しいだろう。うそ、ごめん、無理だ。だいたい何処を通るか知っていれば見張りようがあるんだけど、そんなの全く分からない状態だと見つけようが無い。
「エドどうしてるかなぁ」
貴族にこき使われてるのは間違いないので、次男坊を見つけさえすれば救出する事もできるんだけど、如何せんあのアホボンは隠れるのが上手い。それに貴族の屋敷というのは馬車というか装甲車みたいな乗り物が結構行き来するので、誰が乗っているか確認するのは乗り降りする瞬間だけしか無く、全ての乗り物のチェックをしようにも数が多すぎて、チェックが追いついてない状態なのだ。貴族達の毎日パーティを開くような金の無駄使いぶりを見てると腹が立って仕方が無いのだけど、いつか貴族を引き摺り下ろしてやると考えると少し落ち着く。普通の人は毎日毎日そんなに豪勢な食事なんてできないんだぞ!
「監視ってやっぱり辛いわぁ。忍耐力が試されるね、うん」
「という事で、ミミが癒しに来ましたぁ」
「うわぁ?!」
にゅーっと背後からしなだれかかってくるミミ。首にきゅっと抱きつかれ頬をスリスリされると気持ちが良い。気持ちが良いのは確かなんだけど、スキンシップは無しでお願いしますよ、ミミさん。
「どして?」
「ほら、見落としたら嫌だしね。話し相手になってくれるのは大歓迎だけども」
「そっか、そうだよね。じゃあ、お話し相手になって貰おうかなぁ~」
そういって、横にちょこんと密着して座ってくる。これぐらいは良いよね? と目で訴えながら座ってるので、僕としても反論しようがない。僕が納得したと分かったらしいミミはそのままで話始めた。
「コージはこれからどうするの?」
「ん?」
「だって、コージって王様の息子だから王子様なんでしょ? お城で優雅に暮らしていけるんじゃないの?」
確かに父ちゃんは王様だから、そういう事もできるよね。だけど、今は貴族の勢力が強すぎてそんな優雅に暮らすとかはできない。まぁ貴族のいいなりになっていれば、そうなるかもしれないけどね。
「ミミはここの生活は嫌?」
「ううん、楽しいよぉ。だけど、楽しすぎてこのままで良いのかなぁって・・・」
何か心配事があるのかな? ミミらしくない少し憂いのある表情でそう呟いた。
「僕がこの世界でやっていくのに、色々学ばないと駄目だっていうのは前にも言ったよね」
「うん」
「この世界って、貴族がまるで神様みたいに好き勝手してるから、僕の目には凄く異様に見えるんだ」
なんか平民は貴族に逆らう事は許されないという空気が凄くある。いくら平民の方に能力があろうとも、貴族は貴族というだけで何の能力が無くても偉そうにしている。そんなだといつまでたっても、頑張ってる平民の人が報われないままだ。
「今はまだひよっこな僕だけど、いつか仲間を集めて力を付けて貴族なんか無くして平民だけの世界にしたいんだ」
「貴族ってやっつけれるのかなぁ・・・?」
ミミは貴族に物のように扱われてきた過去がある。ミミ自身も貴族のはずなのに、そんな過去があるせいでむしろ平民といっても差し支えないぐらいだ。ありがたい事なんだけどね。
「父さんも貴族を無くす為に頑張ってるみたいだけどね。だけど、僕は僕で頑張ってみたいんだ」
今は学園で学んで自分を鍛えるのに必死なんだけどね。まだ、何が問題か見えてない僕には、細かい目標を立てる事なんかできないからだ。だからこそ、色々調べないと駄目だし学ばないといけない。焦って貴族の屋敷に特攻したくなる気持ちはあるけど、今は我慢して力を蓄える時期だ。
「ミミも一緒に居て良いの?」
「むしろ、僕からお願いしたいぐらいだよ。まだまだ僕って友達も少ないしさ」
なんというか僕って、気が合う人としかまともに話ができないようで、いまだに友達が増えていない。変な知り合いばかり増えてるけども。
「うふふぅ。友達じゃなくてお嫁さんなら考えてあげるっ」
「いやっほらっ、そういうのはまだ早いっていうか・・・」
「まだって事はいつかはそうなるって事で良いよね?」
う、言葉尻をうまく捕らえられてしまった。ミミってそういう所が意外と抜け目ないよね。
「ま、まぁ否定はしないよ。うん」
でも、僕としてもこんな可愛い女の子をお嫁さんにできるなら何も問題ないわけでして。だけど、正直にそういうのは恥ずかしくて、結局はへたれな返事しかできませんでした。そんな僕をちゃんと分かってるという風な目でミミはじっと見つめていました。うぅ。