僕達の行動開始!
慌てて学園を出てきたものの、ハイローディスの部隊は簡単にけりがついてしまった。もう少し激しい戦闘になるかと思ったけど、ホワイトファングのウォーミングアップ程度で済んでしまったのだ。なので、時間がたっぷりある。
「白夜に戻るのはちょっと待ってね」
「お、おう・・・分かったのじゃ」
僕の言葉になぜか怯えた様子のホワイトファング。何もおかしな事は言ってないよね???
「重力に干渉するタイプの飛行ユニットだから、しっかり整備しとかないと何か異常があったら困るしね。それにホワイトファングを整備させて貰った覚えもないし。長い間調整とかしてなかったんだから、この際しっかり調べようね」
「お、お手柔らかに頼む」
飛行ユニットは、基本的に重力のベクトルを変更する事で飛んでるように見せている物なので本当は飛んでるんじゃなくて、落ち続けているだけ。一応はスラスターも使って飛んでるように見えるので飛行ユニットと便宜上呼んでいる。
なんでこんな物を作れたかと言うと、ホワイトファングの武装の中に重力を操作するものがあったおかげである。その武装の応用として試作しまくってようやくできた物なのだ。偶然できたような物なのでこまめに調べておきたい。それに、重力を自由に操れる装備もしっかり使えるように、理屈を理解したい。
静かに家の上空に待機し、周りを確認してから素早く屋敷の敷地に着陸をする。国境から家まで約六百キロの距離を一分強で到達したホワイトファング。なんか恐ろしい速さだ。大阪から東京まで三分あれば往復できるって事だもん。飛行ユニットで移動するよりもかなりの速度を稼ぐ事ができる。しかも全速力でぶつかるだけで恐ろしい破壊力を出せそうだ。
フレーム作成の僕の誘導で、離れの傍に作った格納庫へと移動する。エレベーターで地下へ移動し空いているハンガーにホワイトファングを収める。地下格納庫には十機のフレームを格納できるようにスペースを作っている。勿論、それに付随する補給物資や装備の為のスペースも確保してあるので、かなりの広さである。
「おかえり。おみやげ頂戴。さっそくばらしてみようよ」
「もうちょっとこう労わってくれても良いんじゃないかなぁ?」
「そんな自分同士で水臭い。それに衛星で見てたから大丈夫なのは分かってるしね」
「ま、それもそっか」
青いフレームの左右の腕部。肩から綺麗に落としたので完全品である。エティズムの配線の仕方や腕部の構造を調べ、役に立ちそうな所は真似するつもりだ。なんか全部青い機体で統一していた所を見るとそれなりに、由緒のある部隊だと思うし。隠密を得意とするなら静音性や長時間行動とかに調整されてるだろうし、戦闘の為ならばそれなりの強化をされているだろう。たかが腕二本と侮る事なかれ。そこから得られる情報は職人にとって宝石よりも価値があるのだ。
「おみやげも大事だけど、ホワイトファングの整備と飛行ユニットの使用データをしっかり調べるとしましょうかねぇい」
「うん、飛行ユニットはかなりのスピードが出せるのが分かったからね。今日は思う通りに動いてくれたけど、まだまだ稼動時間が少ないからね。少しでも異常があれば原因を探らなきゃ」
「ホワイトファングも気になるしね。エンジン三基積んでるんだよね?」
「サイズ的に小型だけど、出力はなんか凄いんだよね。増幅率がばか高いだけかもだけど」
「本人に聞いたら?」
「そんなのカンニングじゃん。ちゃんと自分で調べようよ」
「それもそっか」
そういってホワイトファングに向き直る僕たち。何故か身じろぎするホワイトファング。
「主よ、後生だからパーツが余ったとか、足りなくなるとか、元に戻せないとかは勘弁しておくれ」
なんというかホワイトファングが魂からのお願いとも言える声音で懇願してきた。やだなぁ、僕達がそんなへまをする訳が無いじゃないか。ビデオにも取るし、時間はかかるかもしれないけど元に戻すなんてお茶の子さいさいだよ。エレメンタルフレアに関して言えば一人で三時間もあれば分解して掃除できるからね。まぁパーツ数も少ない廉価フレームだからだろうけど、結局パーツが多いか少ないかだけで基本的な所は変わらないだろう。
「綺麗に磨き上げてあげるからね。期待してて!」
「そうそう! 豪華客船に乗ったつもりで安心してて!」
さぁて、お楽しみを始めましょう。
「結局は依頼を受けて、完遂しての繰り返しって事でいいんだね?」
「はい、そんな感じです。あとランクアップの試験が間に挟まるぐらいです」
金策班の僕です。セリナにギルドに関するレクチャーを受けてギルド登録を済ませた所です。名前や住所、犯罪歴を調べられて問題がなければ登録は簡単に終了する。今回、ランクA (Bじゃなかったらしい。おそろしやセリナ)のセリナからの紹介という事もあってか、すんなりと登録が済んだ。最初のランクはHからとなり、街中で便利屋のような仕事ばかりをこなさないと駄目なようだ。だけど腕に自信がある場合は受付に申告し、監視員と共に討伐依頼をこなす事でランクスキップができるそうだった。
「すいません、ランクスキップしたいんですけど」
なので登録をしてくれた受付のお姉さんに、さっそく申告する。だけど、ランクスキップを申告した途端、お姉さんは心配そうな顔を僕に向けてきた。
「ランクスキップして早くランクを上げたいのも分かりますけど、まずは地道に依頼をこなす事で色々な事を知るという事も大切なんですよ? 確かに魔物を倒す事が主な仕事になりますが、ランクが上がればそれだけでは無くなってくるんですよ」
まだ若いんだから、焦らずに頑張らないと駄目ですよ、とやさしく諭されてしまった。すいません、ギルドランクは遺跡に潜る為だけに欲しいんでそこまでランクを上げたい訳じゃないんです。
「ミランダさん、大丈夫ですよ。彼の人となりは私が保証しますし、戦闘だけが彼の本領という訳ではないんです。魔法にも造詣が深く、ガイアフレームの作成にも携わり、マジックアイテムも創り出せるマルチな才能を持つ方なんです。正直な所、ギルド証は遺跡に潜る為に欲しいだけなんです」
最後の方はミランダさんだけに聞こえるように小声で伝えるセリナ。えっと、そこまでぶっちゃけて言って良いのかな? 心証が悪くならないかなぁ?
「遺跡・・・というと、Bランクまで上げればそれで良いって事です?」
「はい、とりあえずそれだけあれば遺跡には行けますからね。あとは地道にランクアップすれば良いだけですしね」
セリナのその言葉に腕を組み、瞑想するかのように考え事をするミランダさん。
「さっきのセリナの言葉は本当なのかしら?」
「はい?」
「疑うようで悪いけど、魔法にも造詣が深く、フレームの作成もでき、マジックアイテムも創り出せる。どれもこれも一分野だけで、かなり才能が必要なものなのにそんなに年を取ってるようにも見えないのに、それだけの事ができるというのは本当なのかしら?」
「えぇ、魔法に関して言えば私と新しい魔法を開発できるぐらいですよ。むしろ私がお手伝いとも言えるレベルです。他の分野に関しては詳しい事はわかりませんが、作った物を見る限り今までに見た事のない物を作ってらっしゃいますよ」
その言葉を聞いて明るい表情でポンと手を叩き宣言するミランダさん。
「じゃあ、その三つの分野で作った物を持ってきて貰える? それを見て一定のレベルに達していると認められた時は即座にBランクにランクアップしましょう!」
「え、そんな事で良いんですか!?」
「そんな事って・・・一定のレベルに認められるっていう事は一つの分野でも大変な事なんですよ? それを三つも認められるというのはほとんど無いと言っても良いでしょうね。判定にはそれぞれのプロにして貰うつもりですから」
きりっとした表情で宣言するミランダさんには悪いけどこの勝負もらったも同然だ! しかもその分野のプロとも会える機会も貰える訳だし、願ったり叶ったりだねこれは。
「いつ持ってくれば良いですか? 今すぐでも良いですよ! あ、フレームは家に来て貰わないと駄目ですね。なにしろでっかいんで」
「そうね、明日また来て頂戴。それぞれ何時判定して貰えるか打診しないと駄目ですからね。そう遅くならないと思うけど、大丈夫なの?」
「え? 何がです??? 明日と言わず、早ければ早いほど僕としてはありがたいですけども、駄目ですか?」
僕の返事に少し驚いた表情をしているミランダさん。なんで?
「普通は自信作を作る為に時間を取ろうとするものだけど、逆にすぐして欲しい人なんて初めてみるわ」
「自信ありますからね。はやくBランクになりたいですし」
「あらあら、もうBランクになれるつもりで居るのね。ふふふ。自信があるのも良いけど過信は恥をかくだけですよ?」
そうたしなめるミランダさんだったけど、セリナと僕はその言葉ににやりと笑いを返すだけだった。
学園に分身を置いていかずに早退したのは、白夜を早退させるのに自分だけちゃっかり早退しないっていうのは、駄目だ! と光司くんなりに考えたからです。