悩める子羊
うー・・・昨日あんな終わり方したから、気まずいなぁ。かといって、このままずるずると仲直りしないでぎくしゃくしたままで居るのは嫌だから、がんばって仲直りしなきゃね。でも胃が痛い。
「コージ、どうしたんです? お腹痛いんですか?」
「あーうん、ちょっとだけ痛いんだけど気にしないで」
無意識で胃をさすっているとセリナが心配そうに尋ねてきた。なんというかこんな事って経験がないだけに、緊張というかずきずきするといいますか。僕って喧嘩するような友達って居なかったもんなぁ。
「うふふ聞いたわよコージ君。お友達と喧嘩しちゃったんだってね。でも大丈夫よ! この生徒会長である私が仲裁しましょう!」
「いや、なんで知ってるんですかエイジス先輩? ていうか、子供の喧嘩に親が出てくるみたいですっごく嫌なんで遠慮しておきます」
ハルトあたりはエイジス先輩が好きだから、すぐにでも仲直りしてくれそうだけどもね。でもセシリアだもんなぁ。どう謝れば良いかさっぱり分からないんだよねぇ・・・エリーに聞いてみようかなぁ。
「つれないなぁ、コージ君は。たまには先輩らしい事させてくれても良いじゃない」
「いやいや。生徒会長なら公平に生徒に接して下さいよ? 僕だけえこひいきしちゃ駄目でしょう?」
「生徒会長だって人間です! 好き嫌いはあります! 勿論、コージ君は大好きです!」
「大声でなんて事言うんですかっ?! そんなに叫ぶなら先に行きますよ!」
なんかエイジス先輩が暴走しそうなんで、慌てて制止する。この人は油断してるとろくでも無い事ばかりするなぁ。
「分かりましたぁー!」
元気良く返事しているけど、油断してるとすぐに変な事をするのが特徴だ。でも、エイジス先輩があほな事をしてくれたおかげですこし楽になった。こういうのを狙ってやってるのなら凄いけども・・・まさかねぇ?
「そいではまたねコージ君。喧嘩は早く仲直りしてね。バイバイッ!」
学校につくと直ぐにエイジス先輩とは別れて僕たちは教室へと向かう。さてさて、仲直りしましょうか。
「おはよう~」
挨拶をしながら教室に入ると、セシリアが居た。ほかの面子はまだ来てないようだった。
「セシリア、おはよう」
「おはようございます」
一応、返事は返してくれるんだけどちょっとつっけんどんな感じだ。話を切り出したい所だけど、エリーにどういえば良いか聞いてからにしたい。やっぱりまだなんか怒ってる感じがするし。こういう時、席が隣だと余計に緊張するなぁ。
「コージ? どぉしたの?」
「ん? なんでもないよ?」
なんとなく僕が緊張している空気を感じ取ったのかミミが、後ろからちょっかいをかけてくる。ミミさん、顎を肩にのっけるのは止めて下さいな。くすぐったいし恥ずかしい。そんな僕達をちらりと一瞥するセシリア。だけど、特に何を言うでもなくまた元に戻った。
「おうコージ、おはようさん」
「あ、おはようハルト。ちょっと良い?」
「ん? なんや?」
ハルトが珍しく早く来たので、腕をひっつかんで廊下へと引っ張り出す。なんとなく僕が聞きたい事が分かっているのか、大人しく引っ張られるハルト。
「で、セシリアと仲直りはもう少しかかると思うぞ、わしは」
「えー・・・席が隣なのに暫くこのままって言うわけ?」
単刀直入にハルトにどう謝れば良いか聞いてみたけど、返答はそんなつれないお言葉。なんというか、バルトもちょっと怒っているらしいし。
「いやいや、怒ってるっちゅーか機嫌が悪いっちゅーかな。別にコージが原因で怒ってるわけじゃないんや。なんか他の事で気になる事があるみたいやで」
「でも、なんか僕が余計に怒らせちゃったんじゃないかなって気になるよ・・・」
「ちゅーたかて、別にコージが原因やないのに謝られてもバルトも困るんちゃうか?」
うーん・・・確かに僕が原因じゃないなら、いきなり謝られてもどう返事をすれば良いか困るかな? でも、気になるんだよねぇ。
「ほいでセシリアは、しばらくほっとけ。あいつも自分の強さに折り合いが付けば自然と仲直りできるやろうし。それまでの我慢や」
「それはちょっと厳しいよハルト。こんな状態がいつまで続くか分からないのは結構拷問だよ?!」
正直、早く仲直りしたい。僕の言い方が悪かったんだろうから、次からはちゃんと気をつけるから、この胃に悪い状況を改善したい。
「まぁ、落ち着けって。昨日の事は別にコージも間違った事を言ったわけやあらへんやろ? そやのに、コージから謝るっちゅーのは昨日の事を間違った事やと認める事になるんやないか? そうなると、今後似たような事が起きた時に困るのはセシリアやし、他の面子も何がしか影響あるのは間違いないやろ?」
「う、うん・・・だけど・・・」
「だけどもくそもないで。おまえは男らしゅーに、どんと構えとけ。間違ってないぞと胸を張っとかんと、ちょっと機嫌損ねられたぐらいで意見を変えとったら誰もおまえの意見なんぞ聞かんようになるぞ?」
「そう。コージはどっしりしてるべき。間違ってない」
「あ、エリーおはよう」
僕の挨拶にこっくりうなづくエリー。あれ? 髪型がちょっと変わってるかな?
「コージは強いのに細かい事を気にしすぎ。はげる」
「父ちゃんはげてないから、大丈夫だよ?! それより髪の毛切った?」
「うん切った。そういう細かい事は大いに気にするべき」
「エリー、おまえはマイペースすぎるやろ・・・」
エリーは言葉は少ないけども、僕からセシリアに謝るのは駄目だと言いたいようだった。ハルトの言うように僕から謝るのは、今後の事を考えるなら止めておいた方が良いのかな? それはそれで、精神的に辛いものがあるんだけどなぁ・・・
「いい訓練。精神修行だと思って。ね?」
「・・・う、うん・・・」
なんかエリーがこっくりと首を傾げながら話しかけてくるという実に女の子らしい仕草を見せたのでびっくりしてしまった。普段大人しいしあまり感情を出さないタイプだから、そういう女の子っぽい仕草をするなんて思わなかった。エリー自身も僕の反応が恥ずかしくなったのか、赤い顔をしている。
「私だって女子。コージは失礼」
「ごめんごめん。ちょっとびっくりしただけだって。この通り!」
なんにせよ、僕は僕のまま普段どおりにしないと駄目って事だね。
「あ、ハルト。昨日なんか技を知らないかって聞いてたでしょ?」
「おお、コージは魔法ばっかり珍しいもん持ってるからのぉ。コージは剣も使えるさかい剣技でもそういうの無いか気になるんは当然やろ?」
僕とエリーの話を横でなまぬるい目をして聞いていたハルトだけど、剣技の事となると目を輝かせて食いついてきた。
「うん、それで昨日試しに知ってる技を試したんだけど、使えそうなのがあるから覚えてみるかなって思ってさ」
「ほぉほぉ、どんな技なんや?」
「一撃必殺な技と、相手の動きを鈍らせる範囲技の二つだよ。ハルトは素早い相手に翻弄される事が多いからね」
「一撃必殺なら今の“絶刃裂波”でも充分な威力あるんやけど、あかんか?」
「使い勝手は確かに“絶刃裂波”の方が色々と工夫できるから良いんだけど、一対一の戦闘で役に立つ必殺技なんだ」
「ふぅん・・・覚えとって損は無いっちゅー事か?」
僕の説明に興味が沸いたのか、嬉しそうな表情をするハルト。
「まぁ、実際に教えるのは後のお楽しみって事で。覚える覚えないは見てから決めてくれて良いしさ。でもきっと気に入って貰えると思うよ」
「えらい自信ありげやな。わかった楽しみにしとく」
駄目なら駄目で、どういう技が欲しいか聞けば良いしね。でも、今日教えるつもりの技はハルトは気に入るはず。
「「ふっふっふっふ・・・」」
「二人とも気持ち悪いから、止めて」
知らず知らずに含み笑いを漏らしていた僕たちは、エリーに太い釘をぶっすり刺された。