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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
ステップ!
133/293

もっと仲良くしましょ!

「日替わりデート第一弾は、ミミでーす! というわけでコージ、いこっ!」

「う、うん・・・」


あれ、おかしいな。僕は金策する予定だったんだけど、どうしてこうなった?


「うーん、なんだか楽しそうじゃないよぉ? ミミとお出かけするのは嫌?」


僕の煮え切らない返事に、眉をひそめて身を寄せてくるミミ。いや、あのね。


「え、いやっそんな事ないよ!? 嬉しいよ!」

「えへへ、じゃあ行こっ」


すったもんだの挙句、ミミが勝利をもぎ取ったらしく最初にお出掛けする事になったようだ。なんというか、あのセリナから勝ちをもぎ取るとはミミさんも侮れないなぁ。今も嬉しそうに僕の腕を掴んで離さず、ぴたりと身を寄せてきている。


「じゃあ、ちょっと急ごうか。早めに行かないと席が取れるか心配だし」

「うんっ、わかったぁ」


向かう先は西ブロックで評判の演劇をする「エイルベート」と呼ばれる劇場だ。なにやらうまく魔法を使って演出しているらしく、すごく面白いと評判で少し高い値段ではあるものの連日賑わっているそうだ。魔法の演出という事で魔法教会も一枚噛んでいるそうだ。


「結構人が並んでるけど、次の公演には入れそうだね」

「うん、やっぱり凄い人気なんだねぇ。でも、本当にここで良いのぉ? 嫌なら別の所でも良いんだよ?」

「ううん、僕も興味あるし少し並ぶぐらい慣れてるから大丈夫だよ」


今月の題目は「姫のおなり!」というお転婆なお姫さまがお付の騎士を振り回しながら、悪い領主を成敗したり、村を苦しめているオーガを倒したり、隣国の王子に言い寄られてお付の騎士がハラハラしたりという物語らしい。何も考えずに単純に楽しめそうだった。

ここの劇場は団員の数も多く、広さも充分にあるので三つある劇場を順番に使っているので回転も早い。というか、演劇ってそんなに人気があるもんなんだねぇ。


「劇を見るのって初めて。コージは見た事あるぅ?」

「劇・・・は、初めてかなぁ僕も。似たようなのは見た事あるけどね」


映画はたまに観に行ってたけど劇とかは、気後れして行った事ないんだよね。偏見かもしれないけど、お金持ちが観に行くものだと思ってたし。しかし、こうやって並んでいると僕達と同じようにカップルで来てる人が多い。そして、当然というかやっぱりというか並んでる人はミミにうっとりと見惚れる男性が多いと言う事だ。そして、隣にいる僕を見て不思議そうな顔をしてから、露骨に敵意のある視線を飛ばしてきて、一緒に来てる女性に耳を引っ張られたり、つねられたりして我に返って平謝りしている光景がそちこちで広がっていた。


「ん?」


出る所が出て、ひっこむ所は勿論ひっこんで、足もかなり長くてそんな短いスカートだとパンツ見えるんじゃないの? ってぐらい長い。そんなスタイルも良くて美少女のミミは僕だけしか見ていない。だけど、これだけの視線を集めちゃうミミの服装は少し大人し目の物が良いかもしれない。だって、結構肌を出している服装だしスカートは超短めだし、胸元も恐ろしいほど自己主張が激しいしで、そういった目で見られるのは間違いない。かくいう僕も今はなんとか耐えてるけど、油断していると鼻の下が伸びるしね。


「ミミさ、もう少し大人しい感じの服にしない?」

「これ似合ってないかなぁ? お母さんに見て貰って決めたんだけど。勝負服よ! ってお母さん言ってた。あ、ちなみに下着も勝負下着なんだよぉ?」


母さん・・・ミミになんつー事を教えてるんですか、あなたは。


「いや似合ってるだけに、あまりこう他の人間に見られたくないと言いますか・・・」

「ふぅん・・・じゃあ、家で着てる分には良いよね?」

「まぁ、家でなら・・・」

「わかった、じゃあ家でどんどん着るようにするね。もっと可愛いのがあるんだぁ」


母さんに教え込まれているあなたの可愛いの基準がひたすら気になりますが、家の中なら良いかと考え直す。ミミは腕っ節は強いんだけど、一人で出掛けてる時にナンパされたりすると危ないよね。学園に通い始めてからも男性慣れしてないところがあるから、知らない人に話しかけられたりすると、あわあわしそうだ。まぁ、それでも乱暴されそうになったら、すかさず脱出できるんだろうけどね。


「あ、そろそろ入れるみたいだよぉ」


列がゆっくりと進んで行き、劇の切符を買ったお客さんが劇場の中へと入って行く。どうもパンフレットも売っているようで、それを見ながら嬉しそうに歩いている人達が印象的だった。写真がないから絵で描いてるだろうに、凄い事してるなぁ。


「お席は只今ですと、どちらでも選べますがいかが致しますか?」


受付のお姉さんが僕達を見て、微笑ましい顔をして案内してくれる。一番前のブロックで三百シルバーで中央辺りが百二十シルバー。一番後方でたくさん席があるところが八十シルバーで、高い所から近くで見れる席が五百シルバーだった。一番高い所で五ゴールドなので、そこにする事にした。せっかくだから良い席で見てみたい。


切符を貰い、ついでに三十シルバーでパンフレットを購入して席へと向かう。パンフレットを見せて貰うと綺麗な絵で、劇をする人の紹介と劇の内容が綺麗に描かれていた。劇の内容に至っては色まで塗られていて気合が入っている。これで三十シルバーなんて元を取れるのかなぁ? すごいや。ミミもパンフレットを気に入ってくれたようだ。


「見る前からわくわくしてきた」

「お話もおもしろそうだし、楽しみだね」

「コージも? 良かったぁ、ミミが行きたい所だったからコージはどうかなって心配してたんだぁ」


それでしきりに来る途中も聞いてきたのね。劇の事をどこで知ったか知らないけども、ミミも色んな事に興味を持ってきてくれてるようで嬉しい事だった。僕の事以外であまり自己主張してくれないから、心配していたのだ。強い力を持っていても小さい頃から、悲惨な環境に置かれていたから、何かを自分からしようという事をして来なかったというだけあって、母さんが構い倒すまではじっと僕を見ているだけの事が多かったのだ。


「うわぁ、ここから観るってなんか凄いなぁ」

「凄いよく見えるねぇ、コージありがとう」

「いいえ、どう致しまして」


僕達の席は、仕切りがあるので他の座席からは独立しているので他の人を気にせず劇に集中できる用になっている。結構舞台から遠く感じるんだけど、何か仕掛けがあるのか舞台が手に届くぐらい近くに見えるのだ。


「そろそろ始まるみたいだね」


気づけば劇場の中はお客さんで溢れ返っていて、今か今かと待ちわびる人の期待が劇場内を満たしていた。そうこうしている内に開演の挨拶が始まり、劇が開幕した。






「楽しかったね!」

「うん、また来ようねっコージ」


九十分ぐらいの劇だったんだけど、あっという間に終わってしまった。魔法を演出に使ってると聞いてたけど、本当にちょっとした演出程度だけで大掛かりな物はなく、大事な所は演じる人間が全て表現していた。いや、これなら魔法の演出がなくても充分おもしろいと思う。やっぱり演じる人間が上手だと凄いんだなぁと感じさせられた。


「あら、コージ奇遇ね。ミミさんとデートですか」

「あ、セシリア。セシリアも観てたの?」


どうもセシリアも母親と劇を観に来ていたようだ。貴族の人でもこういうのを観に来るんだねぇ。やっぱりそれだけ人気があるんだね、ここって。


「それじゃあ、お邪魔しちゃ悪いからこれで、またねコージ」


そういって、セシリアはお客さんの中に紛れて見えなくなった。


「セシリアもがんばってるんだねぇ。うふふ」

「ん? どうしたのミミ?」

「ううん、なんでもないよぉ。にへへ」


そういって笑うだけで、教えてくれないミミ。何か気づいた事があったようだ。ミミは可愛い見た目をしているけども、凄い能力を持っているんだよねぇ。天は二物を与えずっていうけどそんなの真っ向から否定しているよね。


「じゃあ、何か食べて帰ろうかミミ」

「うん」


そういって連れ立って歩き出す。劇場をでた所で色々な露天があるのに気づいた。どうも劇を観に来たカップル目当ての商売のようでアクセサリーを売りに来ているようだった。いつもなら特に気にしないんだけど、劇をみた余韻のせいなのか今日はせっかくだから記念にミミに何か買っていこうと思った。


「ミミ、せっかくだからちょっと覗いて行かない?」

「え、ほんと? 良いの?」


まぁミミも目敏く露天を見つけてそわそわしていたから、行きたくなったっていうのが本当の理由なんだけどね。そわそわしているミミは微笑ましくて凄く可愛いのだ。


「お、兄ちゃん可愛い彼女だね! どう、ペアで買うなら安くしとくよ!」


威勢の良いお兄さんの呼び声に、少しミミがびくっとするけどペアという言葉に目をきらきらさせて僕の方をじっと見つめてくる。


「ほら、彼女も選んで選んで。このブレスレットなんかはどう? 二人とも結構細くて良い感じだからこれぐらい派手なのでも似合うよ」


ほわぁと目を輝かせて露天のお兄さんの言葉に聞き入るミミ。自分の腕とブレスレットを見比べてなにやらうんうん頷き、ついでに僕の方もじっと見てなにやらニコニコとし始めた。頬を赤らめているところを見ると何か妄想してるな、あれは。


「お、彼女さんも気に入ったみたいだよ、どうだい二つで三百五十シルバーを三百にしとくからさ買ってかない?」


ミミの様子を見て一気に攻めてくるお兄さん。これだけ、嬉しそうにしているミミを見て買わない手はないよね。今もほわほわとしているミミをちらちらと見ていく野郎共も居るぐらいだしね。見るなこんちくしょう。


「じゃあ、それ頂戴」

「お、ありがとな。そうだブレスレットに名前も彫れるけどどうする? 一個二十シルバーかかるけど、すぐ終わるし」


なかなか商売上手なお兄さんだ。僕は苦笑しつつもついでだからお願いした。


「ほい、毎度ありぃ!」


お金を支払って商品を受け取る。ブレスレットを見るとちゃんと名前が彫られている。というか、僕とミミの名前がハートを挟んで並んでいた。中々に粋な事をしてくれるお兄さんだ。


「ありがとぉ、コージ!」


ミミはよっぽど嬉しかったのか人目もはばからず、飛びついてきてぶちゅーっとされる。ちょっまっ!?


「えへへ。ちょっと恥ずかしいね」

「人が見てる所じゃ駄目だよ、ミミ」

「はぁ~い」


あまり反省をしている様子ではなかったけど、嬉しそうに頬を染めるミミを見て買ってよかったと露天のお兄さんに心の中で感謝した。



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