青い脅威
バルトス王国とハイローディス帝国の国境付近。バルトス王国へ向けて移動するフレームの一団がいた。フレームの色を青で統一されているその一団は、大きな音や声を立てる事なく、まっすぐバルトス王国を目指していた。だが機体の形はバラバラで、重装甲のものや魔術士タイプのもの、四足タイプもいれば軽量タイプもいる。そんなフレームの機数は全部で十機。一機にて軍の一部隊を押しとどめるフレームの実力からすれば、かなりの戦力である。そんなフレームの一団がゆっくりではあるが、確実な進軍をしていた。
だが、そんなフレームの一団の前に魔石獣が飛び込んできた。
グギャァアアアアアアアアアアアア!
獲物が傍を通ったのを感じて擬態化を解いたのであろう。雄叫びを上げながら地面を這うように、フレームの一団へと突っ込む魔石獣。大きな口と二股に分かれた尻尾が久しぶりの獲物だと言わんばかりに、激しく蠢いている。
だが、自身の数倍の大きさを誇る魔石獣を前にしても青いフレームの一団は小揺るぎもしていなかった。
ゴガッ!!!
魔石獣の正面に立つ二機が魔石獣の突進を止める。ほかの機体は正面に立つ二機が突進を阻む事を信じて疑わないのか、魔石獣を取り囲むように散開している。事実、二機のフレームは魔石獣の突進を受け止め、あまつさえ押し返すと言う芸当を見せつけていた。
グ・・・ガギャァアアアアアア!
自分より小さな獲物に、受け止められ押し返された魔石獣は怒りの咆哮を上げる。自分の肩口の辺りをうまく抑え込む二機のフレームに対して、大きな頭を振ってなんとか噛み付こうとするが、うまく行かない。そのもどかしさに魔石獣は四肢と尻尾を使って脱出しようとして、暴れだした。
その動きは辺りを地響きで震わせ、木々をなぎ倒しさながら災害の呈を成していた。さすがにこれだけの巨体の魔石獣が暴れるとなると、周囲に散開しているフレームも黙って見ているだけでは済まされなかった。
揃って抜剣するフレーム達だが、剣を向けるだけで一向に魔石獣に立ち向かう気配はない。
動かないフレームをいぶかしむ暇もなく、気づけば右側の肩口に取り付いているフレームがいつの間にか抜剣した剣を一気に肩口へと押し込んだ!
ガギャァアアアアア!?
魔石獣が咆哮を上げると同時に、周りのフレームが一斉に突撃する。痛みでのたうち回る魔石獣の動きもまるで見えているかのごとく、かいくぐりさらなる追撃を行う。その動きは綺麗に統率されており、暴れ動く魔石獣を一斉に攻撃するのではなく、隙のある場所にいるフレームが攻撃を行い、その攻撃でできた隙を狙ってまた別のフレームが攻撃を・・・という具合に、狩りなれた様子で魔石獣にゆっくりとだが確実にダメージを残していく。
キュオォオオォォオオォォ!
今までとは違う咆哮を上げた途端、一斉に魔石獣からかなり距離を取って散開するフレーム達。今まで四足だった魔石獣が立ち上がる。体付きも後ろ足が二本足で立つ為に太く大きくなり、前足はすこし細く長くなっていた。二本足で立ち上がった事で高い所から睥睨する姿はその大きさもあいまって威圧感が更に大きくなり、見る者を震え上がらせる力強さがあった。
だが、そんな魔石獣の変態にも臆する事なく対峙する青いフレームの一群。いささかも動じない態度からある種の余裕も感じられた。
ッッガッ!!!
大きく吸い込んだ息を吐き出すかのごとく、口から青白い炎を撒き散らす魔石獣。地面は炙られ木々は焼け落ち、それでも火炎の勢いは止まらない。辺りを全て燃やしつくさんとすべく魔石獣は首をふって被害を拡大していく。
だが、そのブレスも自然を破壊しただけでありフレームには毛ほどのダメージを与えてはいなかった。魔石獣の突進を止めた鈍重にさえ見えるフレームであっても、それは例外ではなかった。攻撃手段と範囲をすでに理解しているようで、見事に被害はなかった。
ズシンズシンズシン!
ブレスが届かないと知るや、大きく足を踏み出し自分を受け止めたフレーム目掛けて突進を開始する魔石獣。その巨体を活かして真っ向から叩き潰すつもりのようだ。その姿をみてのろのろと後方へと撤退を開始する重装甲のフレーム。燃え盛る森の中から、奥へ奥へと少しずつ火の無い方へと誘導するかのごとく逃げ出す。
ゴォオオオオォオオオオオオオ!!!
もう少しで魔石獣に追いつかれるという所で横合いから、吹雪が魔石獣に解き放たれる。勢いのある吹雪ではあったが、魔石獣は大してダメージを受けた様子もなく煩わしげに自分に向かって魔法を放ってきたフレームを睨み付ける。
ゴォオォオオオオオオオオオオ!
ほぼダメージが無いと知っても、吹雪を叩きつける魔術士型フレーム。そして、その背後にもう一機、魔術士型フレームが支援の為か何か詠唱を始めだした。重装甲のフレームも吹雪を迂回して、吹雪を出すフレームを庇うかのように傍へ移動する。
それを見るや、歓喜の雄叫びを上げながら突進する魔石獣。
だが、それはフレームの一群にとって予定事項であった。
リンッ!
二歩、三歩、四歩。あともう少しでフレームに届こうとした魔石獣の巨体であったが、澄んだ音と共にその動きが止まる。見れば足元に大きな魔方陣が輝き、魔石獣を魔法で束縛しているようだ。
ギ・・・ガ・・・
見れば、動きが鈍ると同時に身体の表面をうすく霜が覆っていき魔石獣はうまく体を動かす事ができないようだ。吹雪だけではうまくダメージを与えられなかったようだが、継続して唱え続ける事で周りの気温を下げ、さらに急激に凍らせる魔法でもって魔石獣を完全に凍りつかせたようだ。見ている間も吹雪は止まる事はなく、完全に魔石獣を覆うまでその勢いが弱まる事は無かった。
そして、完全に凍り付いて動きの止まった魔石獣に駆け上る軽量フレーム。手に剣を持ち頭上まで駆け上るとその脳天に勢い良く剣を突き刺す。軽量フレームが勢いよく刺しても深く刺さらなかったようで、かろうじて剣は直立している格好である。だが、軽量フレームは突き立った剣を足場に空中に踊り上がり、自身の自重と落下の勢いを利用してさらに深く剣を突き刺す。
見れば、魔術士型フレームが杖に紫電をまとわりつかせ魔法を撃つ体勢になっていた。
ゴォオオォオオン!!!
軽量フレームが魔石獣から退避したと見るや、雷の魔法を解き放つ。脳天に突き刺さった剣を通って魔石獣の体内を電撃が駆け巡る。一瞬で魔石獣を覆っていた霜は解け、黒こげとなった魔石獣は声ひとつ立てる事なくゆっくりとくず折れていった。
念のためであろうか。フレームの一群は四肢を切断し死体を燃やしつくし、魔石獣の痕跡を消し去った。ついでだろうか、燃え盛る森も綺麗に消火していた。
そして、何事もなかったように進軍を再開する青いフレーム達。目指すはロバス。国境を越え、今一度バルトス王国へ何かを仕掛けるつもりのようであった。