語呂合わせ
ヒューイックのちょっと町外れに、そのお店はあった。
2足歩行のものや、多脚型。お店の目立つ所にはぴかぴかの西洋鎧風のガイアフレームが置いてあり、2脚型が人気があるのを伺わせた。
僕はといえば、ロボットがごく自然に動いていて試乗してる人なんかも居てるこの光景に凄く感動していた。この世界ではロボットが自動車みたいな感覚で使われているのが実感できたからだ。
「うわぁ・・・」
「そんなに目を輝かせて、コージはガイアフレームが好きなんですねぇ」
「うん、なんかずっとガイアフレームを見たい見たいって、騒いでたぐらいだし」
「お、若いのにフレームに乗るのかい? 兄ちゃん」
僕が凄く真剣にガイアフレームを見ていたせいか、お店の人がそう声をかけてきた。なんか、頑固でこだわりのある整備士って感じのおじさんだ。
「あ、ガイアフレームって初めて見るんで乗った事無いんです」
「ほぉ、そうかい。じゃあまったくの素人ってわけかい?」
「はい、ずぶの素人です!」
元気良くそう答えた。
「おーおー、そうかそうか、ずぶの素人か。あっはっは。自分で言う奴なんて初めて見たぜ」
その後、おじさんもとい、ハーベイさんは僕を気に入ってくれたらしく色々教えてくれた。
動力源となるのはパイロットの魔力と魔石獣から取れる7色の鉱石で、パイロットの魔力もそうだけど、鉱石の配置によっても出力が変わるので色々研究されているそうだ。
そして、今お店に出ているのは第二期のガイアフレームで、ロバスに行くとさらに進化した第三期のガイアフレームが出回っているらしい。いずれはガイアフレームを造りたいと思っているので、仕組みを教えて貰えるのは非常に楽しかった。
あと、ガイアフレームの操縦方法は2種類あり、その内のトレースモードだと自分の体を動かす感覚で操縦できるらしい。もう1つの方法は、自分で術式を考えて組み込み、動かす時に術式を選択して実行するらしい。術式を組み込むとかって聞くとなんだか難しそうだけど、要はゲームのコントローラーで操縦する感覚なのかな? と思った。
普通はトレースモードで操縦するらしいんだけど、僕は術式で操縦する方が楽しいかもしれないと思った。
だって、そっちのほうがロボットを操縦してるって感じがするし!
「コージにちょっと面白い物を見せてやろう」
とハーベイさんが、こっちこっちとお店の奥に案内してくれた。
「ガイアフレームには元になる機体があってな、それをルーツといってるんだ。古代遺跡からたまに見つかるらしいんだが、今はほとんど見つかる事が無いんだ」
「んー? ルーツって機体を真似てガイアフレームができたって事?」
「そうだ。まぁ、ただ真似てるだけじゃなくて、改良に改良を加えルーツの性能に勝るものも、最近は作られるようになってきたけどな。それでも、ルーツは特殊で貴重って事には変わりないんだ」
「へぇ~。で、面白い物ってひょっとして・・・?」
「そう、ナンバー持ちのルーツがここにあるんだ」
「ナンバー持ち?」
「あぁ。特別なルーツには機体にシリアルナンバーがあるんだ。ナンバーが小さければ小さい程、強力な機体でな。2桁ナンバーなぞ、俺でも見たことがない」
「ふうん、そうなんだ」
「最近で有名なのは「777」スリーセブンだな。恐ろしく強いらしい」
パチンコを思い出したのは、仕方ないよね?
「で、見せたい物ってのはこれなんだが・・・」
と、案内して見せてくれたのは一機のガイアフレーム。もといルーツ。
白がベースで、所々緑色のラインが入っている。物凄く細身のラインで、全体的に華奢で表にあった鎧型のガイアフレームと比べると、可哀想になるくらいだ。
だけど、頭の部分。フェイスパーツだけは猛々しく、どんな敵でも倒さずにはいられないという風格が感じられた。ある意味禍々しいかも。
「こいつもシリアルナンバーがあるんだが・・・」
「シリアルナンバーあるんだ。凄いなぁ~・・・」
「桁がなんと5桁あるんだ」
「へ?」
桁が小さい程強いって事は、めちゃめちゃ弱い・・・?
「凄く強そうに見えるんですけども、このルーツ」
頭だけ、なんだけども。ひょっとしてこのルーツってパーツ足りてないんじゃないの?
「顔はな。あと、ハッチが開かなくてな。誰もこいつに乗れないんだ」
なんと。これは、ルーツを造った誰かが洒落で作った機体なんだろうか? エクスカリバー的な、英雄しか扱えないとかそういう感じの。
「ふーん。で、この機体って何番なんですか?」
7が5つ並んでるとかだと、逆に凄く強そうなんだけどな。
「確か・・・そうそう、37564番だ。中途半端な数字だろ?」
3万7千5百6十4・・・
えーっと・・・み、な、ご、ろ、し・・・?
え、ルーツ造ったのって日本人? 語呂合わせ的に「みなごろし」って思っちゃうんだけど・・・名前がデストロイヤーとかジェノサイダーとかだったら完璧。
「で、名前は「デストロイヤー」とか付いてるんだけど、顔以外は名前負けしてるよなこいつ」
おーーーーーい。本当にデストロイヤーとかだよ。どうなってるんだろ?
「いや、ナンバーも「みなごろし」なんで、顔とナンバー以外ですね」
と、バンバンとルーツの足を叩いた。
ギィン!
キュゥウウウウウウウウン・・・
う、動き出した?!
「おいおいおいおい、急にどうしやがった!? 今まで何をしても動かなかったこいつが」
あー、まさかシリアルナンバーの解読が起動の鍵になってるとか・・・?
だとすると、僕やばい?
ガシュゥゥウウウン。
そして、ハッチが開きルーツの手が僕に向かって伸びてきた。
まだ乗れない。