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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
ステップ!
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ネタバレ

昼休み。


学園というだけあって、ちゃんと学食が一階にある。という事は教室が四階にある一年生はとても不利という事だ。たまに、窓から一気に降りるツワモノもいるんだけど、教師に見つかれば昼食どころではない叱責を食らうので、ハルト曰くハイリスクハイリターンだそうだ。


今日は昼休みの時間もトリックスターの皆と話をしたかったので、山ほど弁当を作って持って来てあるので、昼休みになる前に声をかけておいたのだ。でないと、学食にいくハルトやバルトはダッシュで教室から出て行くからね。あ、レイは女の子から日替わりで差し入れ貰っているから、特に何も言わなかった。やっぱり顔か。顔が命なのか。


教室では手狭なので、屋上へ行き、バーベキューで良く使われる折りたたみ式のテーブルと椅子のセットを二つ出してくっつけて、その上にお弁当を広げる。基本はサンドイッチとスパゲティで、おかずとしてから揚げとかの肉やポテトサラダみたいな野菜で手軽に摘めそうな物を作ってもってきた。あとは温かいお茶をそれぞれに配って、準備オッケーだ。


「これはセリナさんが作ってくれたのか?」


ごめんバルト。セリナも作れるんだけど今日は僕が作った。味はそんなに変わらないからがっかりしないで遠慮せずに食べて欲しい。


「なんでコージはこないに料理できるんや? おまえん家って、両親ともおるよな?」

「ん? 居るけど、僕が料理する事が多かったからできるようになっただけで、特にすごい事でもないよ。必要に駆られると人間、なんでもできるようになるもんだよ」

「そないなもんかね。まぁ、美味いもんにありつけるのはありがたいな」


そういって勢いよく食べてくれるハルト。おいしそうに食べて貰えると作った人間としては嬉しいものです。セシリアとエリーは微妙な顔をしてるけど、味付けが合わなかったかな? 


「セシリアとエリーは、口に合わなかった? 少し薄味だから、一応こっちのソースを付けて貰ったら味を変えれるけど、どう?」

「いえ、とてもおいしいわコージ。おほほほほ」

「くやしいけど、おいしい」


おいしいなら良かった。とりあえず、食べながらで良いから昨日の事で気づいた事が無いか聞いて、リベンジで勝てるように作戦を立てたい。


「で、昨日の事なんだけど何か気づいた事ある?」

「気づいた事っちゅーか、あいつは何か実体が無いというか気配っちゅーんか? 今思えば、目の前におるはずやのにちっとも存在感が無かったって事かのぉ」

「殺気が無いって事じゃない? どの攻撃も殺気がまるで無かったし。まぁメカだからそういった物がそもそも無いって事かもしれないけど」


メカだから殺気が無いという可能性は置いても、気配とかそういった類の物は何も感じられなかったというのは間違いないようだ。とりあえずメモっておく。


「うーん、攻撃魔法が全部打ち消された事かな。どれだけ連射してもご丁寧に全部の魔法をワイヤーで打ち消してくれたからね。あとマジックアローで詠唱の邪魔もしてきたかな」

「たしかに。隙をついて無理な体勢な時を狙ったのにワイヤーで消された。マジックアローで詠唱の邪魔をされた」


魔法をよく使う二人組みとしては、魔法を打ち消された事が気になるようだ。そして、どちらもワイヤーで相殺されていて、マジックアローで詠唱の中断を狙われたというのを注目しておこう。


「攻撃を全て回避していたな。全てだ。普通、回避だけでなく防御という手段をとらざるを得ん状況がある筈だが、まったく防御をしていなかった。」


そうだよね、こういってはなんだけど僕達が必死に攻撃をして、かすりもしないというのは有り得ない。それこそ何かトリックがあるはずだ。・・・そう、トリックが。名は体をあらわすというけど、そういう事なんだろうか。


「冷静に考えると、僕達も別にベテランという訳じゃないけど駆け出しの冒険者という訳でもないと思っている。そんな僕達が攻撃を当てられないというのは、何か仕掛けがあると思うんだ。ここまでは、皆も考え付いたと思う」


僕の言葉に一様に頷く皆。そうあまりにも不自然なのだ。多対一の戦闘で圧倒的な速さを持っている訳でも無いのにかすらせもしないと言うのは。


「で、その仕掛けを暴く鍵はハルトにある」

「確かに、中盤以降はハルトを執拗にマークしてはいたけど・・・」

「ヒントは馬鹿力で攻撃・・・かな」


というか、ある意味答えといいますか。あくまで僕の推論なんだけど、少し先輩たちから情報を集めてみれば確実なものになると思う。


「そんなヒントじゃわからん、はっきり答えを言えよコージ」

「答えは放課後って事で。外れてたら恥ずかしいしね~」


ま、放課後までに先輩に話を聞いて推論を確実な物にしておこう。





さぁて、わくわくのリベンジタイムだ。先輩に聞くと思った通りの答えが返ってきたので確信できた。聞いたのはパペットが居ない時の部屋の様子と、パペットを倒した時の部屋の様子だ。それだけ聞けば十分だった。


「ようし、今日は昨日の借りを返すぞぉ!」

「理屈はわかったけど、それがほんまなら俺達かなり間抜けやったんやなぁ」

「でも、それなら攻撃が当たらない理由も説明がつくね。向こうの攻撃をどうやって誤魔化しているかが問題だけど」


仕掛けに魔法は使ってないから分からないんだろうね。魔法を使っていれば、魔力の流れを感じる事ができるから、騙される事は無かったんだろうけどね。魔法が進んでいる世界の弊害と言えるかな。でもフレームもかなり発達してるから魔法一辺倒って訳でもないんだけどね。


「じゃあ、今回のリベンジはエリーとセシリアが鍵になるから、頑張ってね」

「分かった」

「ええ、手筈通りにやるわ」


そんな僕達をじっと見つめる双子の先輩。今日もまたマックスウェル先輩達が一緒に遺跡へ潜ってくれるのだ。今日も念のためキラーマシンを探すが、三十五階層には居ないようだった。


「と、言う訳で今日もトリックパペットと戦いたいんですが、良いですか?」

「昨日の今日だけど、大丈夫かい?」


昨日こっぴどく負けているので、日をおかずにまた挑戦すると言うので心配してくれてるのだろう。だけど、勝算が無いわけじゃないのでにっこりと答える。


「大丈夫です。先輩のおかげでたぶん勝てると思いますので。もし、僕の推察が間違ってればすぐに撤退します」

「そっか、なら頑張れ。俺達の手助けは要らないんだよな?」

「はい、見てるだけでお願いします」

「分かった」


さて、昨日の今日で悪いけどトリックパペットに仕返しさせて貰おう。


「じゃあ、エリーは魔力を練っておいてね。入ったら即ぶっぱなしてね」

「分かった」


僕達が何をするか聞いている先輩は、半信半疑でこっちを見ている。エリーがうなづいているので、これで準備完了だ。


「よし、行くよ!」


バタンと勢い良く扉を開けて、トリックパペットへ突撃する。相変わらず部屋の中央でぼーっと立ったままでいる。僕達が入ってきても、のんびりと動くだけで特に驚いた様子は無い。まぁ、当たり前か。


「“氷よ! 全ての動きを凍てつかせよ! ブリザード!”」


そこへ、エリーが範囲魔法を唱える。ぐおー滅茶寒いぃいいい、痛いっ! だけど、僕がエリーより前に出ておかないと詠唱後を狙われそうだからね。


エリーの魔法は部屋全体を凍りつかせる。だけど、部屋だけでパペットには霜一つ傷一つ付いてない。魔法の効果範囲にいた僕だけが無駄にダメージを負っている。


「“氷よ! 大気を凍らせ壁と成せ! アイスウォール”」


続けて氷の壁の魔法の詠唱。部屋の入り口からこちら側を氷の壁で隙間なく埋め尽くす。ブリザードで部屋の温度を下げているので、氷の壁ができる速度も鬼のように速い。この連続した行動にパペットは混乱しているのか、全く動かない。そして、エリーの魔法が部屋のこちら側とあちら側を一箇所を除いて完全に塞いだ。


「“炎よ! 我が前に踊りて其をしめせ! バーンウォール!」


今度はセシリアの番だ。氷の壁の隙間があいている一箇所に炎の壁を張る。少し弱々しい炎の壁だがその熱気で氷の壁は溶け出し、もうもうと水蒸気が立っている。よし、第二段階まで順調だ。あとは出方を見て、少しずつ奴を削っていくだけだ。


「ハルト! 思い切りやって!」

「おおさ!」


声に呼応するようにぐぅっと力を混めて、溜めて、撃つ!


「“絶刃裂波”」


ハルトの気合の篭った声が部屋に響き渡る。しかし、その技の矛先はパペットではない。そう、パペットの姿に向けては撃たず部屋の壁の装飾に向かって解き放つ!


ズガッ!!!


さすがはハルト、たった一撃で部屋の半分の壁一面をごっそり削ってしまった。しかし、その攻撃が終わった瞬間、氷の壁の向こう側にいた筈のパペットがハルトの眼前に現れワイヤーでハルトを吹き飛ばす。


「ぐっ!」


ワイヤーの攻撃を食らいながらも、満面の笑みを浮かべるハルト。僕も勿論、同じように笑顔になっているだろう。これで決まりだ。僕だけじゃなく、他の皆も決定的瞬間を捕らえる事ができたからだ。


「魔力の流れは検知できず! 入り口の水蒸気も動きはなし!」


魔力の流れがないという事は転移魔法も使った形跡はなく、唯一の出入り口も水蒸気が揺らめいた様子もない。なので高速移動で入り口を通ってきた訳ではない。ならばどうやってパペットはこちらに来たか?


答えは来ていない。


「だいたい、おかしすぎるんだよ! 攻撃が余りにも当たらなさすぎだっ!」


ズガッ!


今までの鬱憤を晴らすように、床、壁、天井の装飾に向かって攻撃を加える。要は最初からパペットなんかは居ないのだ。ただの立体映像なだけで、実際の攻撃はこの部屋に巧妙に隠された武器による攻撃だったのだ。光学迷彩などを多用してワイヤーの出所をかくしたり、マジックアローにしても装飾から出ているのに、さもパペットが撃ちだしたかのように誤魔化していたのだ。ホーミングしていたのは、パペットから発射されていないのを誤魔化す為だったのだ。


で、全力で攻撃をしていたハルト。彼の攻撃は床や壁にまでダメージが及んでいた。あまり破壊されてしまうと、攻撃ができなくなってしまうせいだろう。なので中盤以降はハルトを執拗に狙って攻撃を加えていたのだ。


攻撃対象がわかれば後は簡単だ。


エリーが氷の壁を張って安全圏を作りだし、徹底的に装飾を破壊する。そして、それを徐々に広げていき部屋全体の装飾を破壊する。それだけだ。


トリックパペット。部屋から出れないメカではない。部屋がメカというオチだったのだ。そりゃ部屋から出て来れないよね。


「これで最後っと!」


ズガッ! 


これにてトリックは全て破壊完了ネタバレである。



こんな程度しかトリック考えつきません。すぐに分かった方はごめんなさい。ちょっと強引なネタですが、許してね。

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