トリックパペット
キラーマシンを真っ向から苦も無く倒す。これが二年生の実力なのか。魔法と技の威力はそれほど違うとは思えないが、使うタイミングと速度が違うのは分かった。
たった一年の差。されど一年の差。
さして大きな差ではない筈なのだが、明確な差異を目の前で厳然たる事実として突きつけられた。実力を持って一年と二年では違うものだと実感させられた。
「ハルト、お前ならキラーマシンを切断するだけの技を出すのにどれぐらい掛かる?」
「三秒。いや四秒はかかるやろな」
悔しいけどな、と呟くハルト。こいつも先程の戦いを見て思い出していたのだろう。先輩はわずか二秒ほどの溜めでキラーマシンを切り落とした。同じ威力を出すのにハルトだと四秒の溜め。たった二秒の差とも言えるが、戦闘中にできる事を考えればその時間は恐ろしく長いものとなる。
「大丈夫だって、僕たちならキラーマシンに負ける事はないって」
満面の笑顔でなにも考えてない顔をして励ましてくるコージ。だが、実際に何の不安も抱いていないのであろう。トリックスターとして戦って半年が過ぎた今、それぞれの実力はお互いが把握していると言ってもいい。勿論、一番の成長株はコージだ。こいつの成長具合は半端じゃなく、自分でも力を付けているのが良く分かっているのだろう。
「コージは気楽でええなぁ。そやけどまぁ、キラーマシンに負ける事はないってぇのは同意やな。あとは先輩たちより早くキラーマシンを倒すだけや」
「気が早いわよ、ハルト。まだキラーマシンと戦っても居ないじゃない」
「でも、目標を立てた方が気合が入る」
エリーも同じ氷系統を使う先輩に対して、何か思う所があるのだろう。やけに気合が入っている。だけど、テオ先輩が使った闇系統の魔法は始めて見たな。使い手が非常に少ない事で有名で、そのせいで闇系の呪文はまだまだ発見されていないのが現状だ。先程使っていた呪文の効果も、現象から推測するしかできない。
「で、コージ。キラーマシンはどこにいるんだ?」
さて、俺達も経験を積んで成長せねばなるまい。
「じゃ、次は君たちでやって見る番だね。何かあったら、すぐにサポートするから安心してやってみて」
テオ先輩がそういって僕達を優しい目で見ている。戦闘の時でも、その優しそうな風貌はまったく変わって無かったんだけど、こういう人を怒らせたらどうなるんだろうね? 興味はあるけど当事者にはなりたくないね、うん。そういえば、テオ先輩がさっきの戦闘で使ってた闇魔法。僕以外に闇系統を使える人を始めてみたや。しっかり覚えたから、次の戦闘で早速使って見よう。
「じゃあ、皆ついてきて~」
アイテムを頼りに次のキラーマシンを探す。少し遠い所にいるようで、エンカウントするまで時間がかかりそうだ。三十五階層もしっかり調べていないから慎重に進んでいく。そして見た事のない装飾過多な扉を開けようとした時、ミリア先輩に止められた。
「ちょっと待ってコージ君。そこは結構な確率で危ないのが居るんだけど、そこを通らないと駄目?」
「ほえ?」
この扉を超えた先にキラーマシンが居るんだけど、アイテムを見る限り他に近道も無さそうだ。かなり迂回すれば通れるかもしれないけれど、時間が無くなってしまうだろう。
「危ないのって言うのは、なんなんです?」
「トリックパペットって言うメカよ。大きさは人と同じぐらいなんだけど、多彩な武器を使ってくるわ。防御力もキラーマシンとは比べ物にならないわね」
なんというか、どういう仕組みで動いているか非常に興味がある。是非、手に入れたいなぁ。
「しかも、倒したと思ったらすぐ爆発するし。なんというか、かなり強い癖にそんな事をするから手を出す人は居ないわね。何故か、この部屋にしか居ないようだから簡単に回避できるからありがたいんだけどね」
て事はその先に何か良い物がある可能性がある。他の人には分からなくても僕には分かる可能性が高い。それに、トリックパペットを爆発させずに持って帰れたらそれこそ良い物が山ほどあるかもしれない・・・ぐふっ。
「おいコージ。またフレームの事考えとるやろ。気持ち悪いのが出とるぞぉ」
「はっ」
落ち着こう。こんな時には深呼吸。
すーはー・・・
ふぅ。ちょっと妄想しちゃうと気持ち悪くなっちゃう癖をどうにかしないとね。トリックスターの仲間は理解してくれてるけど、知らない人が見たら即逃げられるぐらいだそうだ。へこむ。
「で、どうする? その先に居ない時もあるけれど、結構な確立で居るわよ。しかも私たち二人でも倒せない相手でもあるわ」
「そんなに強いんでっか」
「そうねぇ。なんというかマトモに戦えないのよ。幻影をうまく使ってくるし、攻撃が当たったかと思ったら、身代わりの人形だったり。そこで油断したら、身代わりの人形の下から本体が出てきて手痛い一撃を食らったり。罠を仕掛けたりもするわね。気づけば一歩も動けない状況になった事もあったわ」
そうとう手酷い経験だったようで、遠い目をしているミリア先輩。
「結局、あいつは部屋から出れば追いかけて来ないから、氷魔法の壁で退路を作って逃げたわ。何をしてもダメージを与えられないし、かといってこっちは徐々に削られていくばかりだったのよね。ほんと、嫌な思い出だわ」
なんか、嫌な思い出しかないのね。聞くだけで相当苦戦したのが分かるなぁ。でも、どんな敵かちょっと見てみたい気持ちもある。
「バルト」
「なんだ、コージ。・・・きらきらした顔をこっちに向けるな」
「トリックパペットって見たくない?」
「ないな。先輩ですら苦戦した相手だぞ?」
僕の言葉に速攻で渋面で答えるバルト。だけど、逆に考えてほしい。先輩が苦戦した敵を僕達がさらっと倒したら、キラーマシンを素早く倒すより凄い事じゃないだろうか。
「コージ君、声に出てるよ。確かにトリックパペットを倒せるたら凄いんだけどね。そう簡単に倒せる相手じゃないって」
苦笑交じりに指摘してくるテオ先輩。僕も簡単に倒せるとは思ってはいないけど、やってみないと分からないじゃないかな。宝くじも買わなきゃ当たらないって言うしね!
「じゃあ、ちょっと見るだけ。見るだけでいいから!」
「コージ、おっさん臭いわよ。あなたは本当にフレームが絡みそうになると、粘り強いわよね。どれだけフレームが好きなのよ」
自分でもそう思うけど、好きなものは仕方ない。しかも今はフレームに永らく乗ってないせいですこし禁断症状が出ている気がしないでもない。週末にでも白夜に乗せて貰おう。
「まぁ、さっきも言ったように部屋から出てしまえば追ってこない敵だから、見るぐらい良いんじゃない?」
「おぉ・・・」
ミリア先輩素敵! 良くぞ言ってくれました!さぁさぁ!とりあえず見るだけでも良いから見ようよ!
「・・・少しだけだぞ」
「やったぁー!」
バルトの言葉に喜ぶ僕。だけど喜んでるのは僕一人だけだった。・・・あれぇ? んーどうでもいっか。早速、どんな奴か見てみよう。
ガッションッ
扉を開く音が響く。静かに開けようとしても、扉は結構な音を立ててしまった。これでは敵に気づかれない方がおかしい。でも部屋から出れば敵も追いかけて来ないとの事なので、少し隙間を開けて覗いて見よう。
この部屋は他の部屋とはまるで様子が違った。壁は言うまでも無く、床や天井まで装飾が描かれ、小さいながらも丸いガラスが多数はめ込まれている。それがどこから洩れてるか分からない光を反射し、綺麗に光を躍らせていた。
「あいつ・・・か」
そして部屋の中央につるんとした頭部の人形がいた。ピエロが首に着けそうな奴をすっぽり嵌めて、ひょろひょろとした手足は、素早く動くのに支障は無さそうだ。僕が部屋の扉を開けた事で、そのどちらを見ているか分からない頭部をこちらに向け僕達を観察している。どうやらしっかり見つかったよう・・・だ?
「!?」
部屋の中央にいたトリックパペットが、一瞬姿が消えたかと思うと次の瞬間にはもう扉の前に立っていた。なんだ? 移動したのが全く見えなかったぞ!?
「こいつは、えらく歯応えがありそうな奴だ」
気づけば僕は部屋の中へと一歩、足を踏み入れていた。
豪獣神。食玩ですけど凄くカッコイイデス。ドリルついててさらにロマンです。あなどれない・・・
すいません、もうしばらく一日一話更新が続きます。