ハウマッチ
次の朝。
換金する予定の素材をぐるぐるっとまとめて鞄に入れる。しっかり入ったのを確認して鞄の中で指輪にまた収納する。
今日はとりあえず少し換金して軍資金を作って、町を見て回ろうと思う。ロバスの都が近いだけあって、この町にはガイアフレームの店もあったし、ちょっと楽しみだ。
「おはようございます、コージ。疲れは取れました?」
「マスターおはよっ! はやく町を見にいこ?」
「おはよう、セリナにヒロコ。今日はまず色々換金してから見て回ろっか」
昨日狩った素材をお店へ直接売りに行って、少しでも高く買って貰うつもりだ。
一応、モンスター図鑑で素材の相場を調べてあるから、ぼったくられる事はない・・・はず。たぶん。
今日は時間が合わなかったのか、エドの姿は食堂に無かった。そんな日もあるかーと、特に気にせず朝食をとり、早速町へと向かった。
町に出た僕達は、セリナからお店の場所を聞き素材を売りに回った。最初は初めて見る僕を胡散臭げに見ていたが、冒険者ギルドに所属しているセリナや愛想よく笑顔を振りまくヒロコにほだされたのか、どこの店でも最後には、また来てくれよなーと大歓迎される結果となった。
そのおかげで手持ちの素材の1割弱を売った結果、120ゴールドの大金となった。
昨日頑張ったかいがあったよ・・・うんうん。だって、今もってる素材を全部売ったとしたら、おおまかに計算しても1000ゴールドに成るって事だし。そう考えると、資金面でだいぶ楽になった。
「じゃ、エリカさん所に行って見る? ヒロコも昨日はずいぶん興味津々だったし」
せっかくお金があるんで、装備や役に立ちそうな小物も買っておこうと思う。
ていうか、ちょっとぐらい無駄遣いしても良いよね?
「わーい、やったぁ! ありがとうマスター!」
「うふふふ、エリカさんも喜んでくれますね、きっと」
とりあえず、みんなに20ゴールドずつ渡しておく。残りの60ゴールドはロバスに向けての旅の資金として、宿に泊まる時や食事をする際に使うお金として残しておく。
売れる素材があるとはいえ、手持ちのお金でやりくりできるようにしておかないと、万が一素材が売れない場合があったら、たちまち困っちゃうからねぇ。
エリカさんのお店は革細工を主に扱っている。ほかにも、昨日は気付かなかったけど、牙や爪を加工した飾り細工や短剣などの武器。髪留めやブローチなど女性が好きそうな物も豊富に揃えていた。
「お、いらっしゃい。今日は買い物かい?」
店へ着くとさっそくエリカさんが、元気にそう言って来た。
「はい、今日は色々見せて貰いますねぇ~」
「ねね、これ! マスター、この髪留めはどうかなぁ?」
ヒロコは早速狙っていた物を、僕に見せてきた。それは不思議な髪留めで、中心に花をあしらった飾りがあり、それを取り囲むように蔓がくるくると伸びている。形は特に珍しいとは思わないんだけど、木彫りみたいに見えるのに花の部分は綺麗なピンクで蔓の部分は少しくすんだ緑色をしているのに、着色した様子が全く無い所には驚いた。どうなってるんだろ、これ?
「お、エルビルクの髪留めだね。それは加工が難しいから、結構値が張るんだけど、買って後悔しないよ。朝晩で色も変わるから、2度楽しめるしね。買うなら820シルバーだけど、750シルバーにまけてやるけど、どうだい?」
確かに髪留め1つの値段にしては凄く高い。1週間ぐらい宿に泊まれるし!?
「綺麗だね、これ。ヒロコちょっと付けて見せて。あ、うん良く似合ってるよそれ!」
花の部分がはっきりとしたピンクなので、黒髪のヒロコには凄く映える。うん、こんだけ似合ってるんなら、買ってもいいんじゃないかなぁ?
「・・・不覚を取りました。わたしも何か探さないと・・・」
僕がヒロコを褒めていると、セリナがぶつぶつと何かを探し始めました。ちょっとショックを受けてたみたいだけど、セリナも髪留め狙ってたのかな?
「じゃあ、これ頂戴! おねーさん!」
僕の一言が決め手となったのか、即決で買うヒロコ。
「まいどあり! どうする? このまま付けて行くかい?」
「うん、付けてく! はい、これお金」
「はいよ。じゃ、おつりの50シルバーだよ。良かったなお嬢ちゃん」
ヒロコは意外と買い物上手だねぇ。うん。まったくもって精霊に見えないね。
その後も色々物色したけど、セリナは中々よさそうな物が見つからなかったらしく、小物入れを2つほど買っただけだった。僕はと言うと、ローブを買った。旅をするのに、雨や寒さを防いだり、夜はそのまま寝れるローブが欲しかったんだ。
嘘です。店員さんのトークに惹かれて、ローブが欲しくなって買っちゃいました!
正直、寝袋を指輪にしまってるんで要らないんだけどね。でも、かっこいいから良いんだ!
「で、僕は行きたい所があります」
「どうしたの、マスター?」
「どこに行きたいんです、コージ?」
「ガイアフレーム置いてる店に行きたいです!」
そう、ガイアフレーム。この世界のロボット。ロバス程では無いにしても、きっとそれなりに良いものがあるに違いない。
「なるほどぉ。じゃ行きましょコージ。こっちです」
と、納得顔で僕の腕を自然と組んで案内してくれるセリナ。何故か勝ち誇った顔をしているのが不思議だけど、でか・・・もとい気持ち良いからいいや。
やっとロボットに辿り着いた。