ちょっと本気!
そういえば、新調した武器ってトリックスターの皆にまだ見せて無かったよね。今回が初お披露目って事になるかな。でも、素材が違うだけで結局使ってるのは一緒なんだけどもね。ふひひ。
「なぁコージ、おまえあれで良かったんか?」
納得いかないって風な口調でハルトがそう尋ねてくる。
「うん、別に入れなくても良いし。ハルト達を見てると良い所なんだろうなぁって思うんだけど、やっぱり自分で入りたいなぁって思って入らないと駄目じゃないかなって」
だって今日まで名前すら知らなかった団体だから、他に入りたい人からすればこんな失礼な事は無いよね?
「そない言うたかて、入ってしもうたらそれに見合うぐらいの人間になれば、それでええんちゃうんか?」
「んー、僕の努力したい方向性と違ったら、どうやっても見合う人間になれないし。それにまだまだ努力する事があるから、正直ベルスイートに入ってその活動に割く時間は無いんだよねぇ」
師匠の技をまだまだ盗まないとね。盗んでさらに改良していかないと、本当の意味で弟子になったとは言えないもんね。ようやく魔法の身体能力アップ無しで二本取れるようになってきたんだから、今やめるのは勿体無い!
「コージがそう言うなら、わしがとやかく言うもんやないか。ほな、そういう事で」
「うん。じゃあ行こうか。セシリア達も準備できてるだろうし」
「おう。行くぞ」
遺跡に入る装備を整え学園の入り口に向かう。そうしてしばらく待っているとセシリアとエリーがほどなくやってきた。
「お待たせ。行きましょ」
セシリアのその言葉を合図に遺跡の入り口へと向かった。
遺跡の入り口で腕章を見せると、門番の人は即座に遺跡に通してくれた。夜から朝にかけては魔物の行動も活発化するので、冒険者ギルドに登録しているか、こういったある程度の実力を認められている者でもないとこの時間に入るのは難しいのだ。
「さて、隊長が言うには十五階層までに居るオーガを殲滅せぇっちゅう事やけど・・・」
「僕たちも遭遇した辺りに行ってみる? 闇雲に動いても探しきれないだろうし」
こんな時こそ魔物探しのアイテムの出番だ。一応、こないだ潜った時にオーガの素材も確保しているので、探すのは簡単だ。素材をセットしてっと。
「コージ、なんだそれは? 見た事のないマジックアイテムだが・・・」
「凄い便利グッズだよ。これでオーガを即探せるの」
「そんなマジックアイテムがあるのか?!」
「探したい魔物の素材は要るから、素材が無い魔物は探せないから不便なんだけどね」
「いやいやそんな事ないぞ、充分便利だ。遺跡の中で狙った魔物を探せるんだから、効率がかなり上がる」
「そないな便利なもん、なんで今まで出さへんかったんや?」
「色々事情があるのですよ、事情が」
自分で作れるか否かっていう事情がね。ようやく今まで作って来たアイテムを自作できるようになってきたので、こうやって使えるようになったって訳なのだ。言わないけどね。
「じゃあ使い方を教えてくれる? 交代で使って、戦闘と探索の人間を分けれるようにしましょ。たぶん、そっちの方が効率良さそうですし」
「なるほど。じゃあ使い方を教えるね」
と言っても、使い方は簡単だ。素材を入れてスイッチポン。あとは画面の表示で高低差や距離、数などが分かるようになっているから、その説明だけで簡単に使いこなせるようになるだろう。
「うん分かった。簡単」
エリーが真っ先に理解した。他の面々も少し時間が掛かったけど全員が理解できた。
「じゃあ、早速殲滅しに行くとしますか」
まずは五階層目指してまっしぐらなのです。って、オーガがそんな浅い所に居るのはいかんのです!!!
「じゃあ、こいつは僕がやっちゃうよ?」
「コージ、任せたよ~」
返事をしてくれたのはレイだけで、後はみんな手を振るだけだった。オーガは結局の所、大増殖しているのか三十匹以上紛れ込んでいた。あんなでかい図体して、どっから入り込んだんだろうか不思議だ。まぁこいつで最後だし、さくっと倒しちゃおう。
モードは「光」のままで剣を出す。最初の内はいろいろ試してみたけど、「光」が今回一番楽だったのだ。レーザーブレードを出している僕を見ても、なお組し易い獲物だと勘違いしているオーガは、威圧するかのように一歩一歩、地響きを立てるようにして向かってきている。
どさっ! どさどさっ!
瞬時に間合いを詰め、足を切断。即座に手を返し、飛び上がって縦に真っ二つに斬った後は、再生できないように細切れにする。レーザーブレードは肉を焼き切る程の高温だから返り血の心配をしなくて良い点は凄い便利だ。
「ほい、終了。皆おつかれー! 十五階層までのオーガはこれで全部だよ~」
「・・・おー」
時間にして一時間。レーダーに映る敵影を片っ端から片付けていった。同時に二体三体は当たり前で、一匹を倒す辺りの時間は三十秒を切っていると思う。でもほとんどが移動時間だったのでこの一時間ずっと走りっぱなしだったのだ。エリーなんかは途中から魔法を使って移動していた。
「コージってこんなにタフでした・・・?」
「いや、わしらとそないに変わらんかったはずやけども・・・」
「最近のコージは、ヴァイスと鍛えまくってるみたいだからな。伸び盛りなのかもしれん」
「あの武器も凄いよね。色々な属性の魔法を付与できるのに、詠唱要らずなんて反則だよ」
「その上、不思議な魔法も使える。あれは覚えたい・・・」
なんか、皆こそこそと話し合ってる。僕にだけオーガの処理を任せてサボるとか! まったくもう、最初はみんな乗り気だったのに飽きてきたから、僕に押し付けたんだね。これぐらいで疲れてるみたいに見えたから、おかしいと思ってたんだ。
「こらーーー! さぼってないで、ちゃっちゃと帰るよ! 駆け足!」
そういって、みんなをぐいぐい押して行く。もう充分休んだから平気だよね?
「ちょ、まだしんどいってコージ! やめぃ」
「またまたー、演技はもういいよハルト! 飽きたからって僕に押し付けたのは分かってるんだからね! さぁ帰るよー!」
「あ、コージ待って、まだ膝がガクガクなの・・・」
「聞こえなーい!」
セシリアのちょっと情けない悲鳴が聞こえるけども、そこまで演技しなくても良いのにと思う。どっちにしても今日の日課をこなさないと駄目だから、早く帰らないとね! 討伐証明部位を先輩に渡して、すぐに帰ろうっと!
「意外、だね。一年がここまでやれるとは正直思ってなかったよ。隊長はどう?」
たったの二時間。
実際に遺跡に潜っていたのは、さらに短い時間だろう。それだけで、この大量のオーガを倒してきたと言う。本当ならば恐ろしい実力を持った一年坊だ。“ハルトバルト”という名前で有名であり、半年前にオーガに遭遇した際も誰一人欠ける事なく倒したあの面子はやはり当たりだったようだ。ほぼ全員がへとへとになるまで働いてきたのは、ベルスイートに入って良い所を見せようとはりきったせいだろう。結構な返り血を浴びた後があったので、少し無理をしたのだろうな。
ただ、一人だけ無駄に元気で返り血などもまったく浴びていない一年坊頭がいたが。魔法剣士のようだが、途中から転入して来たらしいので、あのメンバーの中では戦闘力が低いのだろう。見掛けもひょろひょろとしているし、背丈も高くないのであまり戦闘に向くタイプじゃないのだろうと推測する。だが、今回の戦果をあげたメンバーの一員であるのは間違いない。ベルスイートに入る事を辞退した事もそうだが、身の程をわきまえているのであろう。言い方は少々あれだったが。
「いや、俺もここまでするとは流石に思わなかったな。“ハルトバルト”と言われて浮かれてる連中かと少し心配していたが、杞憂に終わったなと思っている所だ」
「それに一人小猿みたいに元気な子が居るのも、良いね。あの子も戦力になるようになったらあの班は、もっと強くなるだろうね」
どうやら、あの一年坊の評価はエイジも同じらしいな。これは期待以上に良い手駒を手に入れられたようだ・・・
コージ君、班のマスコットと認定されました。