無問題が問題だ
朝起きたら父ちゃんがまだ家に居た。昨日は碌に話ができなかったから丁度良いや。
「おはよう父さん。こっちには何時まで居れるの?」
「週末までは、ちょいとこっちに居座ってるぞ。何かあったのか?」
あぁ、週末まで居るのかぁ。父ちゃんがこっちに来てからの話とか聞きたいんだけど、仕事があるなら無理かなぁ? 魔法で無理やり元気にして話聞かせて貰おうかなぁ・・・
「なんだなんだ、難しい顔して。父ちゃんに出来る事なら、なんでもするぞ?」
「えっと、父さんがこっちに来てからどんな生活してたのかなぁって思ってさ。前に聞いたときは詳しく聞けなかったし。だから、そんな話聞かせて貰えたり・・・する?」
あれ? なんで父ちゃん目を潤ませてるわけ・・・?
「おまえはなんちゅーか、可愛ええなぁぁあああっ!!!」
ごすっ!
あ、飛びついてきた父ちゃんに思わずカウンター食らわせちゃった・・・ていうか、飛び付くの禁止でしょ。
「父さん、落ち着いてよ。なんというか、父さんが居なくなってからの僕たちの話もしたいしさ。あ、別に責めてる訳じゃないからね。ただ話がしたいなってだけなんだ」
「うーん、そういう事ならいつでもオッケーだぞ。どんとこい!」
「じゃあ、また帰ってきたら話しようね。約束だよ!」
「おう! あ、そうだ光司。お前が作ってくれた魔石シートな、あれ随分便利らしくて大人気だぞ。なんでご褒美って訳じゃないんだけど、お金渡しとく」
「あ、そうなの?」
なんかこずかい貰うみたいで嬉しいなぁ。って考えてたら、えっとプラチナ貨が十枚・・・を十列・・・? 百プラチナを渡された。なんかこずかいって額じゃねぇええええええええええ!?
「と、とととととうちゃん? なんでそんなに渡そうとするん?」
「光司こそ、なんで関西弁みたいになってるんだ? あのシートは一応独占って形にさせて貰うから、それを含めての代金みたいなもんだ。まぁ、いずれは市場にも出回るだろうけどな。遠慮せずとっとけ」
「う、うん、分かった。ありがとう父ちゃん」
このお金はフレームや武器作りの為に大事にとっておこう。だけど、これで夜のお楽しみがまた一つ増えたや。むふー。
さぁ待ちに待った週末。今週は父ちゃんと話もできたし、武器もあれから予備も作れたし装備品も作れたしで、充実していた。父ちゃんが城へ単身赴任に行くのを見送ってから、いざ遺跡へ! 今日はセリナ達と五十階層まで潜ってキラーマシンを拿捕するのだ。普通に倒しても良いんだけどね。武器も作れたし、アクセルも球魔法も作れたし。準備万端、いざ出発だ!
「なんで先輩が居るんです・・・?」
意気揚々と家を出た途端、待ち構えていた先輩に捕まった。想像してみて欲しい。ようやく新しい武器をさぁ使おうと家を出た途端に、天敵に捕まった気分を。先輩は一応、目標でもあるのでその人となりを知っておく事は、やぶさかでは無いのだけども・・・
「そりゃあ、あれだよ。愛の力? うふっ」
うざっ!
くねっと可愛らしいと思われるポーズを取り、僕をメロメロにしようとしているみたいだけど、そんなのは母さんだけで満腹だっ!!!
「これから出掛けるんで、日を改めて貰えません?」
「だぁめ。一緒に遺跡に潜るのは決定事項なのよ?」
「お一人でどうぞ。一緒の遺跡に潜るのは別に構いませんよ」
「の、じゃなくて、に、なの! コージ君は意地悪なんだから!」
うーん、この人ほんとどうしよう。あー、転移魔法使って一旦逃げようかなぁ。でもこの人って、転移先を認識できそうなんだよねぇ・・・無駄に才能があるって聞いたし。
「いや、ほんと辞めてくださいよ。今日は「家族」だけでお出かけなんですから」
「いずれ私も家族になるんだから、良いじゃない。ねっ?」
「それは絶対無いですから、さも決定してるみたいに言わないでください」
「もう、照れちゃってぇ。このこのぉ」
いらっ。
あー毒には毒で対抗しよう。そうしよう。
「お母さん、居る~?」
「なに光ちゃん。あらお客さんねいらっしゃい」
「あ、どうも初めまして、アイシャ=エイジスと言います。失礼ですけど、コージ君のお姉さんですか?」
初見でそう見えるのはあながち間違いではない。だけど、それは死亡フラグだよ先輩。
「え、やっぱり? そう見えるよね? 光司のお姉ちゃんだなんて、もう本当の事言うのね。あなた、アイシャちゃん? ちょっとこっち来なさいよ。見所あるわぁ~♪」
「え、あのっ!? まって、えっと!?」
「まぁまぁまぁまぁ遠慮せずに、どうぞどうぞぉ~」
「あぁああぁぁ、お邪魔しまぁす」
さすがウザイ筆頭。僕の思惑どおり頑張ってくれた。母さん大好き! こう心の中で思っておけば、母さんはご機嫌だから感謝の気持ちを伝えておこう。うん。先輩、母さんの相手頑張ってねっ♪
「さぁ、邪魔者は片付けた! 行こう、皆!」
「「「「はい」」」」
うん良い返事だ。
二十階層を超え、まだまだ下を目指す僕たち。今日はキラーマシンを目指すので五十階層をひたすら目指して降りて行く。なんというか、僕達が殺気だっているのだろうか。二十階層まで、まるで敵と遭遇しなかった。これって、また強敵が出てくるパターンかな? なんというか、ワンパターンというか。一応警戒しておこう。
「みんな。ここまで敵と遭わないのはおかしい。こういう場合はなんか階層に見合わない敵が出てくる確率が今の所、百パーセントなんだ。だから、ちょっと気をつけて置いた方が良いと思う」
「わしより、強い奴が出てくると申すか?」
「うーん、そう言われてみればそれは無いような気がするなぁ・・・ 何かあったのかなぁ?」
僕の思考がひねくれすぎてるのだろうか? 二度ある事は三度あるって言うし、また強い奴が来ると良いなぁって期待している面もあるんだけどもね。今日のヒロコはいつもより静かなのも気になるし。・・・あれ? そういえば最近、ヒロコって目立たないというか動きが悪いというか。調子がわるいのかなぁ? あとで聞いてみよう。しかし、遺跡を降りて行って分かったんだけど、五十階層まで降りるのって大変だ。二十階層が目標なら、ここから探索すれば良いんだけど、まだ半分も来てないんだもんなぁ。エレベーターとか無いんだろうか? いや、エレベータなんかあったら深い所から強い奴が溢れて出て来そうだから、まっさきに壊されてるかもしれないねぇ。だけど、深い所まで潜っていって帰ってくるのって、凄く気力がいるんだねぇ。
「誰か、モンスターハウスでも作ってしまってるのかもしれませんね」
「その可能性もあるかぁ。だけど、それならもう少しぐらい敵が居そうなもんなんだけどなぁ。根こそぎ引っ張るとか逆に難しそうだし」
モンスターハウスとは一箇所に魔物がひしめきあうほど、引っ張ってしまう事だ。トレインって言った方が分かり易いかもしれない。この世界にはトレインが無いから、セリナ達には分からないだろうけども。結構、魔物から逃げ回ってどえらい数の魔物を引っ張りまわしている冒険者は居る。それ専門の冒険者が五階層毎に居たりするらしい。強い人なら低い階層の魔物なんてどうって事ないんだろうね、きっと。
「でも、モンスターが居ないのは進むのに便利で良いじゃないですか。先を急ぎましょ」
「そうだね、どんどん行こうか」
かくして、今日は何も問題がなく進んで行く。問題が無いのが問題っていうか。せっかく作った武器達の活躍の場面がまったくないって言うのは問題だよ・・・とほほ。
せっかく武器作ったのに・・・
なぜか待ち構えている先輩。だけど報われない。南無。