謎のレアメタル
「んー・・・別に属性の呼びかけが無くてもいけるんだけど、どうしよう?」
「難しい所ですね。でも属性魔法と思わせた方が、興味を持たれなくて良いかなって思います」
「え、なんで?」
「だって基本魔法なのに、全ての属性の攻撃ができるってなったら誰だって覚えたいに決まってます。属性魔法という事にしておけば自分の属性の魔法にしか興味が無いですからね」
「なるほどねぇ。なら一応呼びかけを付けたままにしておこうか?」
「はい、分かりました」
というわけで、球魔法の習得完了なのです。正確には作成完了といいますか。とりあえず全属性の球魔法を作り、シュートとアローシュートまでは考えました。これで後は派生魔法を考えるだけで済みます。って言ってもコージが考えるんですけどね。私はそれのお手伝い。ですが、コージが呪文の語句を辞書も無しにすらすらと、言い出したのには驚きました。その中には私も知らない表現もあって、さらなる威力の増加や利便性も追及できるようになるでしょう。今まで細かく魔法の調整をしてきたつもりでしたが、コージのやってる事を見ると、とてもとても大雑把にしかできていなかったんだなぁと実感しました。なので、凄く楽しくなってきてしまいました。おかげで今まで、語句を探すのに苦労していて実現できなかった案が、コージのおかげで実現できそうな勢いなのですから。
しかも、コージと二人きりで勉強だなんて・・・
勉強に疲れて一緒に崩れるように居眠りしてしまい、気づけば抱きしめあって寝てるとか! 密室に二人きりで居るとコージがムラムラしてきて、押し倒してくるとか?!
「きゃぁ~・・・」
「え、なに? どうしたの?!」
「あ、いえいえ大丈夫ですよぉ。全然平気です、ばっちりオーケーです」
「そ、そう・・・良かったね。じゃあもう遅いし部屋に戻るね」
パタン・・・
でもどうしよう、まさかこんな事になるって思ってなかったから、あんまり色気のある下着じゃないんですよね。今日に限って。でも、暗くしておけばそんなのも分かりませんよね? それに地味な感じも意外とコージの好みなのかもしれませんし。だってあれだけ派手な生徒会長さんに何の興味も示さないぐらいですから、きっとそうに違いありません。あぁ、やっと私にも春が来るんですね。お母さん見てますか、あなたの娘は今日、女になります。
「・・・あらっ?」
さてさて、ちょっと遅いけどせっかくだし「ギル」の作成に取り掛かるとしますか。まずはミスリルに魔力を込めて硬質化させていこうかな。ただでさえ魔力を帯びている金属なんだけども、さらに魔力を込めていく事でミスリルが収縮して密度が高くなっていき、込められる魔力の量も格段に上がるのだ。でも、魔力をこめる作業がこれまた繊細なので少しでも失敗するとミスリルが崩壊してしまう。なので少しずつ集中してやっていこう。
四分の一程、ミスリルを切り取り台の上に置いて魔力を少しずつ込めていく。徐々に魔力を込めていくとミスリルの表面が赤く変色する。
「おっとと」
赤くなるのは魔力を込めすぎだからだ。もう少し抑えていくと徐々に青い色に変わっていった。このまま青い色を維持すると少しずつミスリルが小さくなっていく筈だ。魔力を一定量ずーっと流し込む。寸分の狂いもなく、よどみなく魔力を流すのは中々に大変な作業である。どれぐらい流し込み続けただろうか。少しずつミスリルが小さくなってきている。しかも青い輝きはどんどん増しているのだ。
「焦るなぁ・・・焦るなよぉ・・・」
ミスリルが半分ぐらいまで小さくなれば完成だけど、ここでちょっとでもミスをすると全て水の泡だ。なので先程よりさらに慎重に、慎重に魔力を流し込んでいく。
バタンッ!
「コージ、こっそり戻るなんてひどいです!!!」
「あっ!?」
セリナが急に部屋に入って来たのに驚いてしまい、魔力を大量に流し込んでしまった。そのせいで、急速に青い輝きは失われていき、小さくはなったけど暗い色合いの変な物体になってしまった・・・ 失敗だぁ・・・
「え? え?! わたし何か悪い事しちゃいました・・・か?」
がっくり落ち込む僕を見て、セリナがおろおろとして聞いてくる。悪いといえば悪いんだけども、あんまり責めても仕方ないからねぇ。
「ううん、ちょっと失敗しただけだから平気だよ。今集中してるから、僕が良いっていうまで誰も部屋に入って来れない様に見張っててくれる?」
「は、はい、分かりましたコージ。ごめんなさいです!」
くるりと回れ右をして、部屋から出て行くセリナ。これで誰にも邪魔されずに集中できそうだ。よぉし、今度は最初からさっきの要領でぐいぐいやって行こう。
「ようし、魔力の量はこれぐらいで・・・と」
今度は残り全てに魔力を込めていく。さっきは最初の方に魔力を込めすぎてた時間があるので、今度は最初から最後までしっかり同じ魔力を流し込んでいく。集中、集中。今度は誰かが入ってきたとしても、集中が途切れないようにミスリルだけを見つめてひたすら魔力を流し込んでいく。ミスリルが次第に青色に輝きはじめ、さらに青色が澄んだ青色の光を放つようになって、少しずつ縮んでいく。綺麗な輝きを放つがそれに心を奪われてはいけない。僕は何事にも捕らわれずに、魔力を流し込む事だけに集中する。
「・・・できた! と思うんだけども・・・」
青銀色に輝く合金ができる予定だったんだけど、青ガラスって言っても良い位透き通った物体が出来上がった。透かしてみるとやっぱり向こう側が見える・・・なんだこれ? とりあえず、「ギル」のパーツに使えるように加工しようかな。作り方が間違ってないからきっとこれで充分使用に耐えうる物ができるはずだ。
「うおっ!?」
気づけば回りには、ミミに白夜にセリナが勢ぞろいしてた。ヒロコはすでに眠っている。
「真剣な表情の主もそそるもんじゃのぉ・・・」
「だねぇ。かっこいいよねぇ・・・」
「えぇ。ずっと見ていたいです」
人間、集中すればこんな事になってても気づかない物なんだね。さっきの失敗と違って、今回はもの凄く集中できていたから、あんな青くて綺麗なのができたって事なんだろう。そして、あの青く輝く素材は尋常じゃない物のようで「ギル」のパーツを設計図を見ながら加工しようとしたら、勝手に設計図通りの形に変わってくれたのだ!
このおかげで後はオーブを一緒に組み込んで「ギル」が完成できた。
「できた・・・」
一から自分の手で作り上げた「ギル」だ。やっぱり自分の手で作ると感動もひとしおだなぁ。性能は分かりきってるから、テストをしなくても大丈夫だけど動作チェックだけは必要だよね。
「凄く綺麗な武器だね、コージ。これってまだ作れる?」
「あ、わたしの杖もこれで作って欲しいです」
ミミとセリナがおねだりしてきた。確かにこれはずっと見ていたくなるぐらい、澄んだ青色をしていて触ると少しひんやりしていて、ずっと使ってきた武器みたいに手にしっくりと馴染み、離したくなくなる程なのだ。
さっき残り全部をこの合金に変えていたので、セリナとミミの武器を作ってもまだまだ余裕がある。だけど、壊れてしまったら流石にもう一つ同じものを作れるだけの在庫は無くなるだろうなぁ。どうしよっか。またミスリルを買ってきて加工すれば、できるかな?
「わかった、今度二人にもこの金属で作るよ。でも今日は遅いからまた明日ね」
「うん、わかった。ありがとうコージ。ちゅっ」
「ありがとです、ちゅっ」
お礼にちゅっとされちゃいました。どこにされたかは想像にお任せすると致します。
お気に入り登録や評価ありがとうございます! おかげ様でアクセス数がすごい事になりました。ひゃっほぉーいです!
ここから光司君の強さがどうなるのでしょうか。それは後のお楽しみです!