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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
異世界での新生活
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伝えたい事

「転入生、今日こそ模擬戦をするぞ。いいな?」


今日は授業が終わるなり、僕を捕まえそう宣言するヴァイス君。そうだね、生徒会長が邪魔をしにくる前に演習場に行こう。なぜかクラスメイトのほぼ全員が僕とヴァイス君の模擬戦を観戦しに来るようだった。なんでだ?


「コージ、がんばってくださいね。ほどほどに」

「早く終わってぇ、早く帰ろうね、コージ」

「まぁ程ほどにしておけよ、主よ」


あーなるほど。僕が目当てって訳じゃなくセリナ達が目当てなのね。美少女を放課後も眺められるとなれば、付いてくるよね。


「ハルト、審判してくれるかな? 無理?」

「いんや、かまわんよ。・・・いやいやあかんか。班の人間やセリナちゃんたち以外から審判を選んだ方がええことないか?」

「あー・・・」


確かに僕に好意的な人が審判したら、ひいきしたって後から言われそうだよね。でも、誰か審判してくれる人って居るかなぁ。


「ごめん、誰か審判頼めないかな?」


念の為にクラスメイトに聞いて見る。反応はやっぱり芳しくない。うーん、どうしようかなぁ。


「やってもいいぞ。俺でいいなら」


そう応えてくれたのは、えっと・・・ホーン=エヴァンス君だ。僕と同じ黒髪の男子生徒で、前髪を目が隠れるぐらい伸ばしていて髪の毛も結構ぼっさぼさにしてる。背丈も高く百八十位ある人だ。僕に少し分けてほしい・・・


「エヴァンス君、ありがとう。じゃあお願いして良いかな? 他に頼めそうな人が居なくて困ってたんだ」

「・・・わかった」

「コージはほんま、男女問わずやらかすなぁ、天然こえーわぁ」

「そうなんですよ、だから目が離せないんですよね・・・ほんとに」


なんかハルトとセリナが仲良くしゃべってる。意外とあの二人って仲が良いんだよね。


「ヴァイス君もエヴァンス君が審判で良いよね?」

「あぁ、別にかまわん。彼は君とはかかわりが無いからね」


あぁ、一応そこは気になる所なのね。意外と勝つ為にはしっかり準備を怠らない人なのかもしれないね、ヴァイス君は。それじゃ、模擬戦をするとしますか。


演習場には個人対個人の訓練の為に設備がしっかりある。対戦する人をまずスキャンし、個人情報を調査する。個人情報といっても住所や職業とかじゃなく、簡単にいうとHPやMPとステータスを数値化するのだ。あとはHPが無くなりそうな攻撃があればそこで戦闘を中止するシステムだ。簡単に言い過ぎたけど、極論すればそんな物なのである。


「武器や魔法、アイテムの使用の制限は無い。全ての力を使って戦う事をここに誓うか?」


模擬戦前の宣誓だ。これに承諾すればいよいよ模擬戦の開始だ。


「誓います」

「誓う」


「では、はじめっ」


ヴァイス君は魔法メインであり、武器は杖を持ってこちらを睨み付けてくる。属性は風。成績はほとんどがB以上である。魔法実習の前に魔力の測定もあったんだけど、ヴァイス君は魔力に関してはAだったはずだ。勿論僕の数値はC。上級呪文や古代魔法などの魔法をかろうじて撃てるBに近いCだった。ちなみにAだと、上級呪文でも古代魔法でもバンバン撃っても魔力の枯渇を心配しなくて済むレベルといえば、どれぐらいの凄さか分かって貰えるだろう。


「“風よ! その力以て我を疾く走らせよ! クイック!”」


移動速度が速くなる魔法か。魔法を唱える時間を稼ぐ為の布石だろうか。


「のんびりしてて良いのか、転入生。今なら謝れば許してやるぞ」

「いややるよ」

「よし後悔するなよ、転入生!」


そう言って杖をこちらに構え、呪文を唱え始めるヴァイス。


「“風よ! 我が敵を斬れ! カッター!”」


詠唱から発動までの時間がかなり早い。僕にとってカッターは、回避するまでもない魔法なんだけど、相手の油断を誘う為にもオーバーアクションで回避する。


「!?」


回避したんだけど、すでに次のカッターが僕に襲い掛かってきている。ヴァイス君は恐ろしい速さでカッターを連続詠唱してくる。正直、この詠唱速度は厄介だ。ヴァイス君の顔を見れば、いつまで逃げられるかな? と言いたげな表情をしていた。だけど、こっちにはアクセルがある。


「アクセル! “我が身の魔力よ、我が身を巡り我に無敵の力を与えたまえ! オーディス!”」


時間の進み方が緩やかになる。それに合わせて僕の身体もゆっくりとしか動かせないけど、オーディスのお陰でカッターを紙一重で回避しながらヴァイス君に近づくのは簡単な事だった。僕の動きを見て、カッターの軌道を修正してくるんだけど、ゆっくりと動く時間の中それは全くの無駄であった。


魔術師であるなら、近接戦闘は望むところでは無いだろう。このまま接近して取らせて貰う!


「エンド!」


オーディスはそのままに、ヴァイス君の前まで来た僕はアクセルを解除する。そして「ギル」の柄で殴りかかる。


「ふっ、馬鹿め」


殴りかかった僕の腕をいなすように杖で払われ、体勢を崩された所に蹴りが飛んでくる。その蹴りを辛うじてかわしたんだけど


「“風よ! 我が敵を斬れ! カッター!”」


足の先にまとわり付かせるようにカッターを唱えて、一度は止まりかけた蹴り足を強引に僕の方に向けてきた! なんて魔法の使い方をするんだ!? しかも詠唱がまったく分かんなかったよ!?


基本的に蹴りをメインに攻撃をしてくる。そして回避すればカッターを使って軌道を変更。回避すれば更にカッター。もし受けた場合は、杖が唸りを上げて僕に向かってくる。この人純粋な魔術師じゃなかったの!? むしろ格闘家じゃないか!


「魔術師と侮ったのが運の尽きだな、転入生! このまま殴られて沈め!」


さっきから魔法をずっと唱えっぱなしだけど、魔力Aのこの人は初級の魔法をいくら唱えようとその魔力が尽きる事などないだろう。むしろまだまだ余裕のはずで、魔力切れを狙える状況ではない。しかも、一度近接の間合いに入ってからは僕の方が距離を取れない有様で、逃げる事ができない。一番最初に移動速度を上げたのは魔法の詠唱の為じゃなく、僕を逃がさない為だったんだ。


「“風よ! 我が敵を戒めよ! ヘティス!”」


僕が蹴りを受け止めて動きが止まった所に、拘束呪文を杖を僕に押し付けながら放ってくる。このままだと向こうの思い通りに戦闘が進んでしまう。つまりは僕が負けてしまう。それは絶対だめだ!!!


「アースブロック!」


狙いは僕の足の下! 地面から壁をせり上げ、僕をこの間合いから少しでも離す!


ゴッ!


競りあがった壁はうまく僕を吹き飛ばすけど、それなりの衝撃が僕を襲う。ヴァイス君はしっかりと壁を回避して、間合いが広がった。


「“風よ! 全てを薙ぎ払う風よ! 薙ぎ払え! トーネード!”」


そう思ったのも束の間、風の魔法が壁を吹き飛ばしまたもや間合いを詰めてくる。吹き飛ばされた壁の破片が僕を襲い、そこを狙ってヴァイス君が格闘をしかけてくる。


ゴスッ!


さすがに破片で視界を塞がれてしまっては攻撃を回避できずに、クリーンヒットを貰ってしまう。う・・・かなり痛い。一発当てた事で勢いづいたのか、次々に攻撃をヒットさせてくる。ガードして肘や膝が直撃しないようにしてはいるものの、他はガードを掻い潜って襲い掛かってくる。


そのヴァイス君のラッシュに歓声が上がる。


正直見くびっていた。ここまで魔法と格闘技を組み合わせて攻撃ができるなんて思いもしなかった。魔法を学ぶだけでも時間が掛かる筈なのに、格闘技まで訓練している。しかも自分が使える魔法に合わせて技も組み上げているのだろう。普通の格闘技では有り得ない動きをしている。


「身の程を知ったか転入生! 貴様は何も鍛えた様子が無いにもかかわらず、ハルト達と肩を並べるなど笑止千万! 彼らは鍛えに鍛えてあの成績がある! なのに貴様は一体なんだ! 力を持たず! 鍛える事もせず! それで彼らと並びたいと思ってる連中に申し訳ないと思わないのかぁっ!!!」


ガキィッッッ!


ヴァイスの拳が言葉と共に僕に突き刺さった・・・


光司君ピンチ。言葉責めに弱いです。

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