ミミ大活躍?
今日の授業は、昨日の遺跡実習の戦績発表だった。
「ようし、席につけ。じゃあ一位から発表する」
と、久しぶりに見る担任のセイベール先生が手元の資料をみながら発表していく。
「まずは“シューティングスター”だ。戦績はオーク三十匹にゴブリンが三十五匹と中々のものだ。制限時間内にこれだけの敵を探し出して倒しているのは見事だ」
“シューティングスター”はミミが所属している班だ。オークやゴブリンなら一撃で倒しちゃうだろうなぁミミなら。
「次は“ハイウィザード”だ。オーク十五匹にゴブリンが・・・四十七匹だ。ゴブリンとはいえこれだけの数を殲滅しているのは大したものだ」
“ハイウィザード”はセリナとあのヴァイス君が所属している。ふとヴァイス君を見ると得意気な顔をしている。所謂ドヤ顔だ。セリナの方は・・・じっと見られてる恥ずかしい。
「次は・・・あー“姫と下僕たち”だな。おまえら本当にこんな班名でよく納得したな。この班は・・・ゴブリンのみ六十匹だ。よくもまぁゴブリンだけに当たったものだな」
白夜・・・君だろう、こんな班名にしたのは。きっとゴブリンを一気に六十匹集めて白夜がまとめて倒して、うっとりしてたんだろうなこれは。範囲殲滅とか虐殺が本当に好きだなぁ・・・ あ、遺跡実習中は白夜の不殺の制限は解いてある。人間に関しては絶対だめって言ってるけども、自分が危ない場合であればその制限も外して良いとも言っている。
「四位は“チアーズ”でオーク十匹にゴブリン四十匹。なんでこんなにゴブリンばかり倒せるのか先生不思議だぞー。今回は偏ってたのか・・・?」
ヒロコが応援ばかりするからそんな班名になったのだろうか・・・? というか、ヒロコは戦闘に参加しないから、他の人たちだけの実力だよね。ヒロコに良い所を見せようとして頑張った人達は少なからず居るとは思うけどもね。
「五位は“アッティス班”て班名思いつかなかったのかね。リーダーの名前そのままじゃないか。あー惜しいなぁオーク十匹にゴブリン三十八匹か。四位と五位は接戦だな」
僕達の前にはゴブリンなんかまったく出てこなかったんだけど、他の班は大量に倒してるなぁ。僕たちのほうが先に入った筈なのにちょっと納得いかない。
「六位は“セブンカラー”か。オーク十匹のゴブリン十八匹。もうちょっときばって倒すように頑張れ」
まぁ、僕達が最下位ってのはわかりきってたけど戦績が二桁にも届かないのは僕たちだけだなぁ。オーガを入れても二桁にいかないもんなぁ。
「最下位は“トリックスター”だな。おまえら粒揃いなんだから、次はうまくやれよ」
その言葉に思わずハルト達と顔を見合わせる。僕達の戦績を言わないのはワザとだね。しかし、今回は上手くオーガを倒したっていうのにそれ以上に上手くやれとは、分かってるのに鬼だなこの先生は。ふと、ヴァイス君の方をみれば、憎々しげに僕を睨んでる。“トリックスター”が最下位なのは僕のせいだと言いたげだ。でも、そんな顔されてもなぁ・・・
「まぁ今回初めて遺跡に潜る人間もいる中で、お前達は良くやった。転入生はともかく、みんな今までの授業をしっかりと身につけて貰えてるようで何よりだ。で、実際に潜って疑問に思った事をじゃんじゃん質問してこい。分からなかった事をそのままにしておくと、後で痛い目を見るからな」
と、言ってその後は質問タイムとなった。モンスターの習性や遺跡内部での罠の有無。遺跡内部の疑問(例えば、何故床がどこも綺麗なのかなど変わった質問もあった)や、避難経路など様々な質問が飛び交っていた。
僕達の班は十階層、いや十五階層までの事なら楽に対処できるので、質問するようになるのはもっと潜った後になるだろう。オーガが浅い所に出てきたのは疑問だけど、この場で聞けるものじゃないので、僕達は何も質問せずに黙って聞いていた。
だけどそんな僕の態度が気に入らないのか、しきりにこっちを睨みつけてくるヴァイス君。
「ハルト、なんかありがとね。気使って貰ってたみたいで」
「あー・・・あーあー。根は悪い奴じゃないんやけど、すまんな」
ヴァイス君の攻撃が僕にいかないように、ハルトがずっと対処してくれてたみたいなので御礼を言っておく。ハルトって口は悪いけど、面倒見はすごく良いよね。意外・・・でもないか。
「でも、コージ大丈夫なんか? おまえ手加減せんかったら、あいつ怪我するやろ?」
「まぁ、なんとかするよ。そもそも僕って人を傷つけるのって無理だし」
「・・・そんなんで、勝てるんか?」
「まぁ、なんとかなるんじゃないかな? ほんとハルトって世話好きだよねぇ」
「なっ!? もう知らん勝手にせい!」
ハルトが顔を真っ赤にして照れた。うひひ、いつもからかわれてる仕返しができた。でもまぁ、正直に言っておこう。
「ありがとう、ハルト」
その言葉にびくっとしたハルトは、その姿勢のまま小さな声で
「おう」
とだけ応えてくれた。
むぎゅぅっ
「ぅわっ!? なにっ?!」
「コージィ・・・? ミミも構ってぇ?」
いきなり背後から抱きつかれる僕。ちょっとミミさん目の前に先生いるんですよ? 皆の注目の的ですよ? セリナからなにか黒いモノが感じられますよ? 本気ですかっ!!!
「あ、あとでね。お願いだから離して?」
「あのねぇ、ミミはねぇ今日こそコージとぉ、二人っきりで帰ってぇ・・・」
「話してじゃなくて、“手を”離して下さいミミさん、お願いします」
「ちぇ・・・」
しぶしぶと手を離してくれるミミ。聞き間違えたふりとは、オソロシイコ・・・
今日の放課後はヴァイス君と模擬戦だって言うのに、それまで身がもつか心配だよ。
「ミミさんは積極的なんですね。そんな風にはちっとも見えないのに」
「えぇ? こぉんなに抑えてるのに、積極的に見えるんだぁ・・・そっかぁ・・・」
セシリアの言葉にそう返すミミ。なんだかお互い凄いショックを受けてるようだ。
「あれで抑えてるとか、コージってばどんだけ愛されちゃってる訳? ていうか、そんなに年も変わらないのにあれだけ愛されるってやっぱり、あんな事やこんな事とかしちゃってる訳なのですかっ!? いやっ・・・」
ぼそぼそとなにか小声で言ってるセシリア。断片的に聞こえてくる台詞から考えると、どうも僕は良からぬ事をしてるようにしか聞こえない。そういうの全くないからね! むしろ襲われてるからね!?
「積極的に見られてるならぁ、せっかくだし本気出したほうがぁ、良いよねぇ・・・」
ミミはミミで、なにやら物騒な事を呟いてるし・・・ 本気出すのは実習だよね? そうだよね、ミミ・・・
「地獄に落ちろ、モテモテ野郎」
救いを求めてハルトを見れば、そんな言葉で撃墜された。ちくしょうぉっ!
さて、そんな疲れる事があっても放課後はやってくるのでありまして。ヴァイス君がそわそわというか、うずうずというかそんな感じに動き出しまして、そろそろ模擬戦かと思ってた時にそれが来た。
「ピンポンパンポーン♪ さてさて下校しようとしてる生徒諸君こんにちは! 生徒会長からのお願い放送だよ~!」
なんか能天気な放送が聞こえてきた・・・ 園内放送もちゃんとあったんだ・・・
「お願いって言うのは、昨日の放課後にわたしが見かけた人物の情報を教えて欲しいんだ。特徴はね、髪の色は黒くて、背丈は小柄だね。百六十ぐらいかなっ。青いネクタイしてたから一年生だね、うん。そしてこれ重要。放課後に泣きながら校舎を走ってたんだ。この特徴にばっちし合致する人物の情報を待ってるよぉん♪ 生徒会室に居るから、何か知ってる人は是非是非来てくださいねっ。お礼もしちゃうぞっ☆ ではでは生徒会長からでしたぁ。ピンポンパンポーン」
よくよく聞けばこれ昨日の上級生の声じゃないか・・・生徒会長だと・・・? この馬鹿っぽい放送をしたのが生徒会長とか有り得るの?
「ようし、コージ。正直に言え! いやその前に生徒会室に行こか、な!」
「ちょっと待ってハルト、その破壊力のありそうな手は一体なに!? 僕をどうしようっての!?」
「はっはぁ! それは勿論、俺があの生徒会長と仲良くなる為の礎になって貰う為やないか! なぁに、心配いらん後の事は任せぇ」
はっと気付くと、僕の周りに男子生徒が十重二十重にうごめいていた。バルト・・・君まで動くとか、あの生徒会長って何者なの?! いや、生徒会長か、うん。
「うわっ?」
急に後ろに引っ張られたかと思うと、僕は一気に包囲網を突破していた。
「コージは渡さないもぉん。べーだ!」
「ミミッ! ありがとう!」
「よぉしっ、愛の逃避行だよぉ~♪ レッツゴー!」
「わぁあああああ、それは何か違ううぅううううう!」
僕の叫びなんて聞くミミを持たず。そうだよね、ミミは言う事聞かないよねぇ。最近の成長著しいミミに対してお兄さんぶるなんてできないし。だけど、包囲網を突破してあっという間に、学園の外へ脱出できたのはミミにしかできない芸当だ。
愛の逃避行はともかくとして、二人きりでお茶でも奢るとしましょう。
百話まで来ました。意外と長く続いて良かったです。
なんかアホな子ばかり増えてきてる気がする・・・