表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
旅立ち
10/293

目指せ高額素材!

「穴場をすぐに教えなさい、エドワード」


朝、食堂で1人で食べてるエドワードを見つけ即、声を掛けた。


「んあ? ようコージ。朝っぱらからご挨拶じゃねーか」

と笑いながら答えるエドワード。


「だって穴場教えてくれる前に、寝ちゃったじゃん? だからこうして聞きに来たって訳ですよ、うん」

「コージ、そちらの方は?」

「???」


セリナもヒロコも不思議そうな顔をしてこっちを見てる。そりゃそうだよね。夢の中で知り合いました! とか普通ないもん。


「俺にかまうな」


僕が紹介しようとした途端、エドワードの空気が変わる。どうしたんだろ?


「コージ、穴場は教えてやる。だから、ちょっとこっち来い」


と、僕には普通に話しかけて来て、ずるずると店の奥のほうへ連れてかれた。


「エド、どうしたの? 朝は機嫌悪い?」

「違ぇよ、馬鹿。ちょっと訳ありでな。おまえだけなら良いんだけど、あんまり人と関わりたく無いんだわ俺」

「ふぅん。了解! 良かったら一緒に狩りに誘おうかと思ったけど駄目・・・だよね?」

「あー・・・すまん」

「いいって、いいって。なんか事情があるんでしょ? でも気が変わったら一緒に来てくれよな?」

「おう、わかった」


と、ちょっとすまなさそうに穴場を教えてくれるエド。友達って良いよね! きっとエドは女の子がちょっと苦手なクールガイ!なんだろうな。


ん、エドがポカーンとしてるな。どうしたんだろうねぇ?


「穴場サンキュー! またね!」

「おう!」


と、エドと別れて自分のテーブルに戻った。


「彼のことは、また後でね」


聞きたくてうずうずしてるだろう二人に先にそう言っておく。


「とりあえず、ご飯食べたら行くよ。しっかり食べてがんばろうね」

「ええ、がんばります」

「うん、頑張って食べるよ、マスター」


・・・ヒロコ、頑張る所ちょっと違う。





朝食後、準備をして町を出て近くの森へと入って行った。


町を出てから、昨日の内に作っておいた小細工アイテムを二人に渡した。


セイフティフィールドといって、ワンタッチで防御結界を張れるアイテムだ。このアイテムも「ノーミス」と同じカートリッジを使用しており、自分の魔力が無くなっても使用できるようにしている。


「これ便利ですねぇ。魔法唱えてる間も邪魔されずにすみそうですね」

「だねだね。ボクは魔法できないけどね!」


「危ないと思ったらすぐに使ってね。カートリッジ一本で1日は保つけど念のため、予備のカートリッジを渡しておくね」


僕の造ったアイテムは、全てカートリッジ式にしておく事にした。カートリッジにする事によって、魔力を使いまわせるかなと思ったからだ。


カートリッジも1日に10本は造れるので、今のところ足りないと言うことはない。


「で、そろそろエドに聞いた穴場に着く頃なんだけども・・・誰か戦ってる?」


なにか遠くで争うような声と悲鳴のようなものも聞こえる。


「あっちです! 急ぎましょう」


セリナは、森で暮らしていただけあってすぐに、方向を見極めて教えてくれた。


「分かった、先に行くね! ヒロコはセリナと一緒に着いて来てね」


万が一はぐれても、ヒロコがセリナと居ればなんとかなる。


「了解マスター、気をつけてね」


その声を背に聞いて、僕は一気に駆けて行った。











 ギルドの依頼は、グレイウルフの群れの討伐だった。最近、森の中を町の近くまで来ている奴らが居るので、討伐して欲しいとの事だった。


グレイウルフはだいたい4~10匹前後の群れで行動しており、俺たち5人パーティで充分に対処できる相手なのだ。


だが、その計算も突然の乱入者によって崩される事となった。


レッドベア。


2本の足で立ち上がり、4本の腕で獲物を殴り殺すこの近辺では最強とも言える魔獣。

この魔獣の嫌な所は、背中側にも熱を感知できる器官があり死角が無い所だ。


加えて、体長2メートルを越す巨体から繰り出される攻撃は、ちょっとした岩などは粉々にしてしまう。人に当たればどうなるかは自明の理であろう。


「リリア、魔力はあとどれぐらい持ちそうだ?」


「もう3割ぐらいしかないです。ケイン」


徹底的に防御に入っても、このざまか。ラサも、アルもリリアを守る為に少なからず痛手を負っている。仲間を逃がすにしても、はたして俺が何分耐えられる事ができるか・・・


「リーダー、逃げるにしてもこいつを弱らせない事には無理だぜ」


最初にレッドベアを見つけてくれたヨハンが、苦々しげにそう言った。


グレイウルフなどはとっくの昔に逃げ去り、後に残された俺たちがレッドベアにとってのご馳走。がっつり食べる気満々な様子で、鼻息もかなり荒い。


と、様子を見ていたら突如突撃してきた!


「ぉおおおおおおおっ!」


正面から当たらず、斜めからぶつかるようにして、レッドベアに進行方向をわずかに逸らす。だが、そのせいで盾がひしゃげ壊れてしまった。


これではもう、レッドベアの攻撃に耐える事ができない・・・


俺が食い止めるから逃げろ! と言おうとしたその瞬間、その声は聞こえた。


「レッドベアみーっけ! 突撃どっかぁーーーーーん!」


ゴミュ! ドカーーーーーーン!


なんとも形容しがたい音が響き、もの凄い勢いで突っ込んできた何かがレッドベアを吹き飛ばした。


「お兄さん達大丈夫? ってうわ!? めっちゃ怪我だらけだ!

満ちるマナよ、彼の人達を癒せ! リフォーガ!」


黒い髪の毛に黒い瞳。幼い顔立ちをした少年がそう呪文を唱えたかと思うと、みるみる内に傷が塞がっていく。傷ついた仲間達も同様だ。


その様子に安心したのか、にっこりと笑う少年。


「後ろだ! 少年!」


レッドベアが息を吹き返し、少年を食うべく突撃してきた。


「おっと、ほいさ!」


慌てた風もなく何かを地面に投げる少年。すると、少年の直前まで来ていたレッドベアは急に反転し、少年から遠ざかって行った。


「よっし! うまく行った! あとはこれで仕上げだね!」


抜く手を見せずに、鉄の塊を取り出した少年はそれをレッドベアに向ける。


「モードは「氷」食らえアイスバレット!」


リリリリリリリリリリリィン!


と澄んだ音がしたと思うと、鉄の塊から出た氷魔法がどんどんレッドベアを撃ち抜く。


「よーし、一丁あがりっと」


そいじゃ、アイテムにしとこーっとと少年が呟くとレッドベアは跡形も無くなり、レッドベアが居た所には素材だけが残っていた。


しかし、こんな少年がたった1人でレッドベアを倒すとは・・・


「あっ!」


そこで、何かに気付いたらしい。恐る恐るこちらを振り返る少年。


「ごめんなさい、レッドベア倒しちゃった・・・」


それはそれは心底申し訳なさそうな表情だった。



コージは突っ走る子。

感想を頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ