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深呼吸は平和の証  作者: Siebzehn17
異世界
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飛んじゃった


それは、一枚のメッセージから始まった。

紙ではないそれに書かれている文字は


「もうすぐ会える」


そんな短いメッセージだった。



などと、そんな回想を悠長にしている暇はなく。


「これどうなってんの!?」

周りの風景がモノクロの世界になったかと思ったら、黒い渦が目の前に現れ

違う世界へ誘うように、僕達を吸い込んで行く。


「漫画みたいだねぇ、これ」

「なんで、そんなに冷静なの母さん?!」

こんな状況でも冷静な母さんに驚く。それとも僕が慌てすぎなの?


「大事なもの(光司)はちゃあんと持ってるもんね」

意味がわからない。分かるかもしれないけれど分からない!


「とりあえず母さんだけでも、逃げて!」

「えい」

と年に似合わず可愛らしい掛け声とともに、母さんが飛んでた。


「っ!?」


ちょっ、なんでこんな時に茶目っ気出しちゃってるの?!

僕をひっぱりながら、渦にとびこむとか正気?!

あっけに取られた僕は、胸にかすかな痛みを覚えながら意識を手放していた。






気がつくと木にくっついてた。

いや、ほんとはひっかかってたんだけど、なんとなくそんな風にぼんやりと考える。


「あー、どゆことこれ?」


直前の状況を思い出すに、何か得体の知れない事に巻き込まれたのは分かる。


「って、母さんは?!」


慌てて辺りを見回すが、人の気配はまったく無い。だけど、何かの気配を感じる。

まったく見覚えのない森の中。なのにどこか安心できる雰囲気をかもしだしている不思議な空間。


とりあえず、落ち着く為に木から飛び降り深呼吸してみた。

すーはー。

落ち着くんだけど、現状は何も変わっていない。自分がどうしてここにいるのか?

母さんはどこにいるのか? それにここがどこなのか?

さっぱりもって分からない。


「・・・夢、じゃないよなぁ」

夢にしては現実感がありすぎるし、どっきりにしては有り得ないと思うし。

それに・・・


「あの黒い渦が原因ってのはなんとなく分かる」

声に出しながら、現状を把握する事に努めるのは、やはり不安なんだろうなぁと思う。

ここがどこかは、とりあえず高いところから見渡せば分かりやすいんだろうけども。


「じゃあ飛ぼっか」


と、声がしたかと思うとふわっと自分の体が持ち上がっていた。

「って、なんで?!」

「いや、高いところから見渡そーって言ったじゃない?!」

「言ったかもしれないけれど、なんで飛んでるの僕?! てか君だれ?」

と、自分の体を持ち上げてると思われる女の子に話しかける。


「ん、誰だろうねボク、あはは分かんないや!」

と、元気良く答える女の子。


綺麗な黒髪を肩の辺りで揃えていて、好奇心旺盛なぱっちりとした目、口は常ににっこりとしていて元気が溢れている活発そうな娘。

ふわふわとした造りの黄緑色のワンピースを着て僕と一緒に飛んでいる。そしてボクっ娘。

でも、この娘ちょっと頭わるいよね?


「ちょっとちょっと。頭わるいとかひどいよね? 名前付けてくれてないんだから名乗れないのは当たり前じゃない!」

「しゃべってないのに、何故か会話が成立しているのは気のせい?」

気のせいじゃないよね、この娘なんか僕の心読んでるよねこれ。


「そだよー、心の声がきこえてるよー、ダダモレー」

えーとこれってどうすれば良い訳?

唐突に突きつけられた非現実に、思考停止しちゃう僕。


「まぁいいからさ、お名前つけてつけてマスター」

マスター・・・なった覚えはないけど話の流れ的に僕の事だろうなぁ。

「ヒロコ」

無意識のうちに、幼馴染の名前をつぶやいてしまう。


「ヒロコヒロコヒロコ、はい、わかった!今日からボクはヒロコです!

ありがとうマスター!」

心底うれしそうに微笑む知らない娘。もといヒロコ。


「あー、うん。喜んでくれて何より。でさ、ちょっと聞きたいんだけど良い?」

「なになに?なんでも聞いて!」

「ここって、どこなのかな?」

「答えられるけど、答えにくい質問だね」

と一呼吸をおくヒロコ。


「ここはマスターの住んでた世界とは異なる世界。精霊も魔法も当たり前の世界なの。

世界の名前とかは無いよ。まさか別の世界が本当にあるとか誰も思ってないから。世界って言えばここの世界って事だからね。あ、マスターの好きなロボット?もあるよっ!」

「ほんと!?ロボットあるの?!てか魔法とか精霊も当たり前って言ったよね?!ちょっとどうしよう? どうしようこれっ?!」

今の状況を忘れて、つい舞い上がっちゃう僕。だって仕方ないよね!!!

変形とか合体とか、モデルチェンジとか巨大兵器特攻とか!


「ええっと、ちょっと落ち着いて? ね、マスター」

若干ひきぎみに、ヒロコがなだめる。


うん、こんな時こそ深呼吸だ。すーはー。

「そういえば自己紹介がまだだったね、ヒロコ。僕の名前は廣世光司ひろせこうじ

16歳の男子高校生です、光司って呼んでくれると嬉しい」

男子高校生は不要だったかもしれないけど、ここは勢いだ。


「りょうーかいだよ、マスター! で、マスターはどうしたいわけ?ロボットに乗りに行くの?」

了解してないよね。光司って呼んでないよね。


「一緒にこっちの世界に来たはずの母さんを探そうと思う」

ていうか、母さんがこの世界に突っ込んだんだけどね。


「でも、その前に教えてほしい。君は・・・ヒロコは何者なの?」

「ボクはヒロコ。マスターから生まれて、マスターの世界とこの世界を知る精霊の一柱だよ」


僕から生まれた?

何をどうやれば、男の僕から精霊が生まれるんだろうか?

これはあれだろうか、異世界に来た事によりそういう能力が芽生えたって事なんだろうか?

「詳しい事は分からないけど、マスターから生まれたってのは間違いないよー」

笑顔だね、ヒロコは。でもとりあえず僕の心を読むのはやめようね。


「うん、わかったー」


あら素直。もっとだだ捏ねるかと思った。微妙にあほっぽい娘に見えるし。


「て、あれ?」

「ん、なに~?」

あほっぽいって思ったのにつっこみが入らない。本当にやめたみたいだ。


「ヒロコって素直でいいなって思っただけ」

無難にそう答えておく。口は災いの元って言うしね。


「ん~? ちょっと小悪魔っぽくなったほうが良い?」

ニコニコからニマニマって感じの笑顔になり、急に胸元を強調しながら上目遣いでたずねてくるヒロコ。


「いやいや。素直で元気なのが一番・・・だと思う」

ある一点に釘付けになりそうな目線をそらしながら、無難に答える。

鼻の下がすげー伸びてそうだ僕・・・


「そっか、にひひ」

若干顔を赤らめるヒロコ。そんなに恥ずかしいなら胸元を強調しなけりゃいいのにね?


「とりあえず、僕のしたい事は

一つ目に母さんを探すこと。

二つ目は元の世界に帰ること。

三つ目は、なんていうか活動するためのお金を貯める事だね。なにをするにもまずお金が無いと話しにならないからね」

「んー、わかったよ。とりあえずお金を貯める事から始めるっていう事でいいのかな?」


「だね。僕になにができるかまだ分からないけど、とりあえず町というか人のいる所へ行こうかなと思う。ヒロコ、町への行き方わかる?」


「もちろん。ここからだとタタ村かな? 一番近いのは」

目をくりくりしながら答えるヒロコ。ちょっと可愛いなぁ・・・


「うん、じゃあタタ村まで案内お願い」

「オッケー、マスター!」


返事するや否や、僕を抱きしめながら飛ぶヒロコ。あ、ちょっと柔らかい!あ、良い香りが・・・


「すぐ着くからね~」

「わ、わかった」

こうして、大人しくタタ村へ連行される僕なのであった。

きっとトマトぐらい赤くなってたとオモイマス。


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