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おとぎばなし  作者:
3/4

つづきのはなし2

 は、外れない…!


 先程からいくら頑張ってみても、王太子様の腕の力は緩まることなく、わたしは抱きしめられたままの状態です。

 

 どうしましょう…これ夢じゃないですね、完全に…。

 あぁ、困りました….


 少しクセのある綺麗な金色の髪を寝台の上で波打たせ、翡翠の瞳を伏せて眠りに就くそのお姿。こんな至近距離で寝顔を拝見だなんて、わたしどうしたら良いのでしょうか?とてもどきどきしてしまいます。やはり見目の良い方はどんな状況でも素敵なことに変わりありませんね…かと言って、このままの状態ではわたしの心臓が持ちません!!


 それにしても、どうして王太子様がわたしの部屋でお休みになっていらっしゃるのでしょうか?

 昨日の夜会でお酒をいただき過ぎたのでしょうか?弱い方ではないはずでしたよね? 

 

 いずれにせよ、お一人でお休みになった方が良いと思います。人が二人横になってもまだまだ余裕のある寝台ですが、王太子様のお部屋の寝台の方が更に広いので、そちらでお休みになるのが一番だと思います。

 …結婚一年目以来王太子様のお部屋には行っておりませんが、あの頃のままのはずなら、きっと広い寝台のはずですから。



「ん…っ」

 


 お、起こしてしまったのでしょうか?

 声を発してはいなかったと思うのですが、無意識の内に口にしていたのかもしれませんね。



「…まだ起きるには早いだろ、もう少し休め…」



 ひ…っ!!

 寝ぼけてらっしゃいますよね!?どうしましょう?

 起きてください、王太子様!!

 これでは昨日の夜会が何の為に開かれたのか分かりません!

 このままでは誤解されてしまいます!!



 誤解…そこまで考えてふと我に返りました。

 

 …王太子様は、いつになったら新しく妃にお迎えになる方のお話をしてくださるのでしょうか?

 昨日の夜会にお見えになっていた、シュタイン王国第三王女のレイチェル様を新しく妃に迎えられるのではという噂でレイルトールの王宮はもちきりなのですが、王太子様からいまだにそのようなお話が出ることはありません。

 

 シュタイン王国はレイルトール王国の隣に位置しており、レイルトールに劣らず大国です。

 現国王ナバール王の正妃であるナディア様は王太子様の叔母にあたり、王妃様の実子であるレイチェル様は、王太子様より一歳年下の従兄妹でもいらっしゃいます。

  

 昨日の夜会でもお二人は大変仲睦まじく見受けられ、見目麗しいお二人が立ち並ぶそのお姿は誰の目から見てもとてもお似合いで、噂が立っても仕方ありません。

 

 聞けばお二人は小さな頃から大変親しくされており、許婚の間柄だったとか…。

 割り込むように王太子様とわたしの婚姻が決まり、お二人の間に波風を立ててしまったのです。

  

 妃となって六年、世継の誕生を望む声は多く聞かれます。

 いまだ王太子様とそのような関係に至っていないわたしには無理な話です。

 

 わたし以外に妃を迎えることなく日々政務に励む王太子様。


 …全てはレイチェル様の為なのかもしれません。

 だとすれば、いつお話しくださるのでしょうか?

 それとも、わたしには話すほどの価値も無いのでしょうか?

 

 そこまで思考が辿り着き、それと同時に先程まで暖かく感じられた王太子様の腕から急に温もりが失われていくような、そんな気持ちになりました。

 

 









 …そろそろ決断する時なのかもしれません。


 


 

  


 


 

 

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