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先輩にそのBL小説はまだ早いと思います。  作者: 七賀ごふん
先輩、知ってます。

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49/49

#1



未早と出会い、恋人同士になり。

決して平穏ではない日々を送ってるけど、振る舞い方は変わらない。


俺は本来振り回されるタイプじゃないのだ。漫画や小説に置き換えるなら、言わば常識的な冷静キャラ。


そして、ステータス:イケメン。

成績優秀、品行方正が服を着てるような存在。……服を着て歩いてるような存在。


自分がゲイだと分かったのは未早と出会ってからだし、恋愛経験はないけど、高校に入学してから告白された回数は数知れず。モテるのは事実の為、未早も知らない魅力があるのだろう。


「自分で言うのも何だけど、俺ってかっこいいみたい」

「自分で言わないでほしい」


ある日の朝、教室に向かう途中で未早は大きなため息をついた。

確かに超うぬぼれ発言をしたの認めるけど、俺だってため息をつきたい。


付き合ってるのに罵倒され、ウブだなんだと揶揄され、それでも怒らず貝のようにじっとする。未早は俺の海容さにもう少し気付くべきだ。


俺は彼が思ってるより優しい。そして、それなりに甘いのだと。


「あのな未早。お前は知らないだろうけど、俺結構モテるんだぞ。成績良いし面倒見はいい、リーダーシップがある上に高身長。むしろモテない要素なくない?」

「まぁ……黙ってればそれなりにかっこいいけど」

「黙っ……てか、何だ。お前やっぱり、俺の見た目にも惚れてたのか」


ツンデレの未早曰く、俺は黙ってればそれなりにイケメンらしい。


いやでも……憎まれ口を叩いてしまうのは未早にだけだ。

こいつを前にすると、どうしても売り言葉に買い言葉となってしまうのだ。口論なんてしたくないのに、互いにトゲトゲしてしまう。


そう考えると相性最悪な気もする。水と油……でも、だからといって離れるという選択肢はない。


「気付いてるならいいんだ。その調子で、もっと自分の心に素直になれ。俺もその気持ちに応えるから」

「何この人……怖……」


未早はやはり持ち前の剣山で俺を突き刺していたが、目の前に現れた影にバランスを崩した。

「わっ!」

「未早っ!」

曲がり角から勢いよく飛び出してきた生徒にぶつかり、未早は後ろに倒れかけた。やばいと思い、慌てて彼の背中に手を回す。

そしてもうひとりの飛び出してきた生徒の腕も掴み、二人を支えることに成功した。


「ふう。……ぎりぎりセーフ」


朝から心臓に悪い。

未早はすぐに体勢を立て直し、俺に「ありがとう」と告げた。


「いーや。……君も大丈夫?」

「あ、……はい」


倒れそうだった少年を引き寄せ、笑いかける。上履きの色を見ると未早と同じ一年生だった。藍色の髪をして、まるで少女のように色白の肌をしている。


( 美少年だ )


恐らく、ほとんどの者が彼を見たら一時停止するだろう。そう思わせるほどに綺麗な容姿をしていた。


未早もかなりのイケメンだけど、タイプが全然違うな。

乱暴に扱ったら割れてしまいそう。温室で育てられた花まみたい。

手を離し、改めて彼に向き直った。


「良かった。廊下を走ると危ないよ。気をつけてね」

「ごめんなさい……あの、名前お訊きしてもいいですか? 僕、一年の沙倉といいます」

「沙倉くんね。俺は三年の紅本。こっちは同じ部活の後輩で、七瀬」


とりあえず苗字だけ伝えると、彼は目を輝かせてスマホを取り出した。


「紅本先輩。迷惑だったらいいんですけど、連絡先交換できませんか?」

「連絡先?」


いきなりの提案に、思わず声が上擦る。大人しそうな子なのに、何かグイグイくるな。何だ?

「別にいいけど」

「ありがとうございます! 嬉しいです。僕、三年の先輩の知り合いっていないから」

「へえ。部活とかは入ってないの?」

不思議になって訊いてみると、どうやら彼は体が弱く、夜まで活動するようなことはできないらしい。


それも大変だ。好きなことを長時間やってられるのは、やっぱ恵まれてるんだよな。感謝しないと。


密かに考えていると、沙倉君は本当に嬉しそうに笑った。


「それじゃ、紅本先輩……また」

「うん」


いやー、ちょっと不思議だけど可愛い子だった。

スマホを仕舞ってうしろ姿を見守っていると、不意に背後から冷たい視線を感じた。


はっ、忘れてた。俺はずっと恋人といたんだ。


「悪い未早、教室行こっか」

「どうぞお先に。俺ちょっと用事思い出したんで」


うわ。何この子。


空気のように放置してしまったことが原因だろう。未早はあからさまに機嫌を損ねていた。


ちょっと他の子と喋ったぐらいで、本当に困ったちゃんだ。カスタマーセンターに取扱説明書の送付を願いたい。


「未早くん、どしたの? あ、喉が渇いてプンプンしてんのかな~。大好きなコーラ飲もうか」


自販機に小銭を爆速で入れ、冷えたコーラを手渡す。しかし未早はコーラより冷たい視線で俺を見てきた。


「……皐月、何で連絡先交換したの」

「ん? だ、駄目だった?」

「関わりないし、どういう子かも分からない。なのに簡単に自分の連絡先を渡すのは危険だよ」


未早はとても冷静に、俺の行動を窘めた。

「そもそもわざとぶつかってきたのかもしれないし」

「いや、それはないだろ~。考え過ぎだって。可愛い子だったじゃん」

「可愛いは関係ないっ!」

ひえっ。

珍しく未早が声を荒らげた為、普通にビビってしまった。


何かやたら沙倉くんに敵対意識を燃やしてる気もする。

未早の頬を指でつつき、慎重に言葉を取り出した。


「未早は、沙倉くんのこと知らないのか」

「知らないよ。……でも三組にすごく綺麗なひとがいるって噂されてたから、彼のことかも」

「ほ~。確かに綺麗だもんな。人形みたい」


そう言って笑うと、また未早の目はナイフのように鋭くなった。


「綺麗だけど、自分のことを僕とか言ってんのが薄ら寒い」

「そうか……」


高一が「薄ら寒い」って言うのもちょっとアレだぞ。

という言葉をぐっと堪え、未早の柔らかい頬を優しくつまむ。


「まーまー、よく分かんないけど機嫌直せって。俺は笑ってるお前が好きだぞ。世界で一番可愛いからな」


頬をふにふにすると、未早は少しだけ赤くなった。

……あぁ。やっぱ、俺は彼のこういうところが好きだ。


触れたら触れたぶん、目に見えて可愛い反応をする。


「……とにかく、気をつけてね」

「おう。心配してくれてありがとな」


とりあえず、その日はそれで終わった。

しかし次の日もその次の日も、沙倉君とは必ず朝に顔を合わせるようになった。




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