プロローグ。
2035年──
“死”が、もはや予定調和ではなくなった時代。
IPS細胞による再生医療は、2025年、小動物の心臓の再生に成功した、そして2035年には、ついに〈クローン人間〉を日常の風景へと押し上げた。
同じ頃、AIとロボティクスの技術革新によってヒューマノイドもコモディティ化。
一家に一体が当たり前となり、誰の家にも“もう一人の家族”がいる時代が訪れた。
彼らは、太陽光はもちろん、室内の明かりでも充電できる。
完全な自律稼働型で、24時間、不眠不休で家事をこなす“完璧な家政婦”だ。
さらにブレインマシンインターフェイスの進化により、脳内情報をすべてダウンロードし、ヒューマノイドに移植することも可能になった。
それは──
「最期の瞬間、記憶を引き継いだ彼・彼女が、姿を変えて、そばに居続けてくれる」
という“永遠の疑似再会”を意味した。
こうして、記憶を継ぐヒューマノイドと、肉体を継ぐクローンが共存する社会──〈不死界〉が始まった。
記憶はバックアップできる。
肉体は複製できる。
それでも、たったひとつだけ“再生できないもの”が残された。
それが、「魂」という、曖昧で不可視な存在。
物語は、そんな〈不死界〉で生きる、ある平凡なカップル、ケンとアオイのもとに訪れる“異物”から始まる。
二人のもとにやってきた一体のヒューマノイド、ミオ──
それがすべての始まりだった。
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